くらしの未来をつくろう
私たちのくらしは、これからどうなっていくのだろうか?温暖化が進むと、外で遊べなくなるのだろうか。いつも日傘をさして暮らすのだろうか。
単なる技術の確認の未来実装
行政や大企業が構想する未来のくらしは、どんなものだろうか。次の記事に、先端技術で地域課題を解決する「スーパーシティ型国家戦略特別区域」という、とても大げさな名前のついた官民連携のプロジェクトが紹介されている。しかし、そこに示されている未来像は、「楽天の荷物を自動運転が運ぶ」という極めて現実的で便利な世界だ。
このような「新しい価値提案のない社会実装」は、日本中のあちこちで行われている。「ただ自動になるだけ」といった、技術の確認に留まり、「新しいライフスタイル」を何も見せてはくれない。
パナソニックは「新たなくらし」を見せてくれるか
パナソニックが持株会社化され、「パナソニックホールディングス株式会社」の下に、「パナソニック株式会社」という名前の事業子会社が生まれた。新生「パナソニック株式会社」の品田社長は、「新体制では事業会社で稼いだ分は自分達の範囲で活用できる。適切な投資を適切なタイミングでできるようになったことが一番の変化だ」と言う。
つまり、今までのパナソニックグループは「家電で儲けて自動車などに投資する」ことをしていたが、分社化することで、「家電で稼いで家電に投資する」ことがパナソニック株式会社で可能になったのだ。そして、パナソニック株式会社は「未来の定番」となるような「くらしのプラットフォーム」をつくると宣言する。
パナソニックが力を入れる領域が、エアコンと空気清浄の領域、加えて売り切りからサブスクリプションモデルへの転換だ。欧州ではヒートポンプ暖房の需要が高まっており、メンテナンスサービスとセットでサブスクリプションモデルでも提供を始めている。
国内では最先端の調理家電のレンタルに加え、調理家電と相性の良い食べ物もお届けするサブスクリプションモデルも開始している。「買わない家電」は、需要側にとっての便利さに加え、供給側にとっても循環経済への移行のチャンスを開くことになるので注目したい。
サステナブル社会にどんな「新たなくらし」をつくるか
しかし、国内の社会実験からも、メーカーの新提案からも、正直なところ「便利」は感じても「新たなくらし」を感じることはできない。
20世紀型の工業社会は、需要側も供給側も「モノの豊かな生活」を追求してきた。そして21世紀に入り、サステナビリティ社会へと突入したにも関わらず、需要側も供給側も、どうやって「ウェルビーイング」を追求すればいいのか分からないでいる。
ロート製薬は、いち早く副業を解禁したほか、2020年春からは社員の起業を会社全体で応援する取り組みを始めている。
先のパナソニック株式会社の品田社長も、社員の自主性を高める表彰制度に力を入れている。つまり、「生産性はマジメにやると高まる」が、「新たなくらし」は「ユニークな生き方からしか生まれない」のである。だからこそ、社員一人ひとりに「自分の生き方」を楽しんでもらい、それを会社に提案してほしいのだ。
「くらしの未来」は行政も大企業も、ほうっておいたら何も提案してくれない。それどころか、ますます「便利の競争」をしている。私たちが生活者としても、もっと自由に自分の「新たなくらし」を生きる必要があるし、働く場面においても、その価値観を供給側の視点から発揮していくしかない。
さあ、「くらしの未来」をつくろう!!