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紙入力をデジタル・トランスフォーメーションをするには:(日本を強靭化するDX #5)

コロナに教わる、FAXの寿命の長さ

 今年の夏は、確かにいつもと異なる夏だ。そして、私たちは、「コロナ」により、多くのことに驚き、多くのことを学ぶ、この初夏に学んだことは、コロナの感染者の情報を、保健所と役所で、ファックスによってやり取りされていたという驚きだ。まだ、ファックスが生きていたという驚きと、なんて無駄が多いのかと思ったはずだ。

 そして、このファックスのやり取りから、HER-SYS(ハーシス)という新しい、感染者情報の管理システムが稼働した。

ファックスの問題を、こんなに簡単に解消できた。これは、学びであり、成長である。

FAXををコンピューター入力にしたら、DX完了か?

 ところで、この取り組みは、一定の成果があるが、まだまだ成長の余地があるだろう。つまり、デジタル・トランスフォーメーションできる。「感染再拡大、3つの懸念 情報把握・陽性率・入院数」の記事に、以下のように整理されているが、ここに課題が潜んでいる。

 データ入力に関するシステムであるが、従来のシステムは「医療機関がファックス・電話などで報告。保健所がデータ入力」とある。そして、HEY-SYSでは、「患者、医療機関、保健所、都道府県がクラウド上に入力」となっている。これは、単純にデータ入力を保健所に集中させないようになっているだけではないだろうか?

 もっとデジタル・トランスフォーメーションできる入力方法、活用方法があるのではないだろうか?

例えば、入力だけでも、

・患者の健康保険所を写真にとることで、自動的に患者のデータが文字化される。
・その入力された文字情報から、所管の保健所・都道府県にリアルタイムにPush通知が届き、必要な他の情報と紐づけを行う

入力をコンピューターで行うことにより、入力を簡単に、そして入力後のデータ活用がスムーズにすることが可能だ。

紙への記入とコンピューターへの入力の大きな違い

 このようなことを、なぜ説明しているかというと、「紙に記入・提出」する情報のやり取りと、「コンピューターに記入・提出」するのには、大きな違いがあるからである。しかし、多くの場合、提出書類をそのままコンピューターの入力画面に変更しただけの事例が多い。

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 上記の表は、紙の利用と、コンピューターを利用した時に情報の記入・提出の違いを整理したものだ。

 「紙は、記入書類の作成は容易であるが、入力データの利用は手間がかかる」のに対してい、「コンピューターは、記入画面の作成は大変だが、入力データの利用は容易」ということにお気づきになるだろう。

 紙のように先に楽するか。コンピュータのように先に苦労するか。これは、大きな違いだ。このようなことを、HER-SYSの設計時に議論されていたのだろうか?

ファックスの通販と、ECで学んでいたはず

 紙をコンピューターの入力画面に変更するときに留意することを、一部のシステム設計者や私のようなコンサルタントにしか洗い出せないのだろうか。いや、この整理は誰にでも可能だ。理由は、生活者として、全員が「紙からコンピューターへの入力変更について」経験しているからだ。

 過去、旅行や商品を買う時に、通信販売があった。このころの通信販売は、ファックスや郵便を利用するものであった。私も、音楽雑誌に入っていたアーティストのTシャツの通信販売を、雑誌についていた葉書を使って行ったことがある。そして、葉書を送った後、販売会社から、このような葉書が来るのである、「大変多くの注文を頂きました。発送まで少々時間がかかります」というような内容である。これが、まさに紙の流れである。

 しかし、コンピューターを使ったECでは、在庫がリアルタイムにわかる。そして、お届け日まで画面に出る。それを見て、私たちは注文するか考える。

 このECの経験は、多くの人が現在経験していることだろう。例えば、住所記入欄に、郵便番号を入れたら、住所の入力が簡単になる。決済用のクレジットカードを入力しようとしたら、過去のカードから、どれにするかとコンピューターが助けてくれる。そして、最後の決済が終わると、おとどけ日の目安を伝えてくれる。このように、私たちはECの入力画面を行うことで、紙の提出書類に書く経験と全く異なる経験を体験している。

 通信販売の事例では、、ファックス・葉書時代と、コンピューターでは、入力流れも、私たちの受け取る情報も異なるのである。これは、通信販売を紙からデジタル化したのではなく、全く異なる流れである、デジタル・トランスフォーメーションした結果である。

企業の入力システム見直してみては

 なぜ、この話を今持ち出しているかと言えば、コロナのHER-SYSの出来・不出来について議論したいのではなく、同じことが企業のデータ入力のシステムでも起きているからである。

 勤怠管理、旅費精算、予算承認。様々な「紙帳票」入力を、コンピューター化したはずだ。ところで、そのコンピューター化した入力システムは、紙の時代よりも、入力時間短くなっていますか?そして、入力後の処理、例えば、旅費の振り込みまでの期間などは短くなっているだろうか?

 コンピューターに入力ということは、人の入力をコンピューターが支援するのだろうから、入力時間も短くなるはずだ。そして、入力データは、すぐに使えるデータになっているのだろうから、入力後の後処理も早くなるはずだ。

 コロナで、私たちは紙帳票のデジタル・トランスフォーメーションを学んでいるのだ。ぜひ、学びを生かしたい。

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