4つの資本(Capital)を知る
今週は、韓国で、Pan Pacific Business Conferenceという経営学の学会でスペシャルセッションで登壇した。
テーマは「スターウォーズの世界がやってくる:ウエアラブルで計測する心理資本」。米国の経営学会の会長も務めたFred Luthans教授(ネブラスカ大)が20年前に提唱し、大きく発展した分野である。日本ではなぜか話題になることは少ないが、世界では、最も研究や引用が活発に行われている分野の一つになっている。今回、Luthans教授と徹底的に議論する機会を得た。
ビジネスで「資本」といえば、財務/金融的な資本(Financial Capital)を普通指す。これは、資本主義社会における投資という前向きなチャレンジ行動を数値化したものである。
しかし、資本を生み出すには、人が的確に判断し、行動を起こす必要がある。即ち人の知識や知恵、広い意味での能力が必要である。これを人的資本(Human Capital)と呼ぶ。金融資本は、人的資本によって生み出される。
しかし、知恵をもった能力の高い人は、一人ではうまれない。そのような人は、社会の関係性のなかで、学習し、支援されて生まれる。これを社会資本(Social Capital)という。すなわち人的資本は、社会資本によって生み出される。
しかし、社会の関係性の中に人をおけば、自然に能力のある人や投資が生まれるものでもない。人生も経済も、常に環境は変化し、浮き沈みがある。この中で、常に希望を持ち、前向きに挑戦と学習を繰り返す必要がある。これが可能にするものを心理資本(Psychological Capital)という。即ち、上記の財務資本、人的資本、社会資本は、すべてこの心理資本によって生み出される。
我々は、毎日、問われ続けている存在である。その問いは「人生をいかに生きるべきか」。この問いから逃れられる人はいない。この問いは、人それぞれ固有の答がある。そして、この生きがいはあらゆる人に本来備わっている。我々は、この「生きがいを見出す旅」から逃れられない(『生きがいについて』神谷美恵子を参照)。
この問いに、その人なりの答を見出し、前向きに前進しているかを示すのが心理資本である。そして、これは計測可能で、生産性と結びついている。
心理資本は、今後ビジネスで重要な役割を果たす概念である。Luthans教授は、既に78歳だが、毎日1時間運動を欠かさず、精力的で、大きな影響力を持っている。4つの資本の意味を問い直す時期が来ている。
https://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev-orgpsych-032516-113324