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モバイルからリビングに移る配信視聴-Netflixが狙う次のビジネス-

9月6日、都内で「NETFLIX HOUSE:TOKYO」というイベントが開催されました。世界最大級の映像プラットフォームNetflixが、最新のサービスやテクノロジーを広く紹介するものです。
米国本社からプロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏も参加して、Netflixの今の方向性を新ためて語りました。

なかでも注目されたのは、世界1億5100万人(2019年7月)の契約数の中で日本の占める数が約300万人になったことです。
全体に較べると小さな数ですが、有料放送の契約自体が少ない日本では大きな成果です。何よりも、前年比77%増加(2019年8月)の伸び率が際立っています。昨今の『全裸監督』やオリジナルアニメといった人気コンテンツが牽引したのかもしれません。
また今後12か月で、日本発のオリジナル作品16タイトルを公開するとしました。番組制作でも日本の存在が増しています。

もうひとつ興味深かったのは、Netflixが「日本は、アジアで最もTVスクリーンでNetflixを視聴している」と、わざわざ言及したことです。
これについては面白いデータも公開されました。Netflixと契約する視聴者の登録時のデバイスはモバイル経由が圧倒的に多いのですが、その後実際に番組を観るのはテレビが最も多いのだそうです。モバイル利用大国の日本でも同様で、登録の60%はモバイル経由ですが、6ヶ月後の視聴はテレビが42%、モバイルは36%です。

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ひと昔前は、動画配信番組はPCで観るものでした。しかし現在の配信視聴の主流はモバイルです。これは映像配信がインターネット回線と切り離すことが出来ないためです。
当初は有線で回線につながったPCが、現在はスマホとWiFiの普及でモバイルに移ったわけです。

Netflixのデータは新たな可能性を示しています。
動画視聴の「PC」→「モバイル」→「テレビ」の潮流です。
これもインターネット回線と関係があります。ホームネットワーク化の流れで、リビングのテレビにネットが直接つながる時代が到来しつつあるからです。
どうやらNetflixはここに大きなビジネスチャンスを見出しているようです。

モバイル視聴時代に求められた動画コンテンツの条件は、こんなものでないでしょうか?

・いつでも、どこでも簡単に観れる
・小さな画面で見やすい映像
・データ容量は少なめ

移動中や空いた時間にすぐ見れること、短い作品が好まれ、一方でスクリーンが小さいので映像のクオリティはあまり重視されません。データは軽くサクサク動くほうがよいでしょう。
アニメでもモバイル時代はショートアニメに積極的に目を向けます。制作技術はフラッシュなどを用いて、「安く」「短く」「早く」です。
モバイルに最も適したコンテンツは、YouTuberの自作番組です。制作コストは決して高くなく、短い時間でアイディア勝負の目を惹く映像や言葉で勝負します。

しかし配信番組の視聴がテレビに移れば、こうした前提もひっくり返ります。リビングのテレビのスクリーンは大きく、映像も音響もとてつもない水準まであがりつつあります。
ここで求められるコンテンツは、様変わりするはずです。

リビングでのテレビ視聴の鍵になるのは何でしょうか?
おそらく次のようなものです。

・他で観ることのできない
・見応えのあるもの
・ハイクオリティの映像と音響

「NETFLIX HOUSE:TOKYO」が実施したセッションは全部で5つありました。その中に「⾼い映像・⾳響クオリティで作品を配信」、「4K HDR⼿描きアニメが拓く新たなテクノロジーの開発」が含まれていました。
必要とされているのは、ハイクオリティな映像と音。この水準を引き上げることで、他の映像配信との差別化をするわけです。

これらはこれまで映画館が得意としてきたものです。Netflixではわざわざ出かけなくても、映画館並みの映像体験を家庭に提供します。しかもラインナップは数え切れないほど。いつでも観ることができます。
Netflixの最大のライバルは映画館なのかもしれません。

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Netflixが映像配信の次の主戦場をテレビと定めていることで、日本の役割が浮上します。冒頭の「アジアでNetflixを一番テレビで見ているのは日本」です。今後Netflixが目指すべきビジネスモデルのひとつが日本にあるわけです。
日本は世界でも、テレビ視聴の映像と音響のクオリティに特にこだわるのでないでしょうか。4Kテレビもいち早く普及に向かっています。
すでに米国でその兆しが見える様に、Netflixの契約数には上限があります。そうなると今後は顧客一人当たりの単価を上げることが必要です。しかしライバルも多い中で、単純な値上げが難しいでしょう。その時にHD、4Kといった高品質のサービス提供は、契約料金を引き上げる手段となります。

2020年代、「テレビ」はネットとつながることで映像文化のなかで復権しそうです。ただしテレビで観られるのはテレビ局の放送番組でなく、配信会社のオリジナルコンテンツになっている可能性が高いです。
Netflixはここを獲りに来ています。執拗な映像と音響のクオリティの追及は、今後登場するディズニーやワーナーといったライバル達との差別化にもなるはずです。

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ジャーナリスト。アニメーションを中心にエンタテイメント産業について、見て、聴いて、そして伝えています!
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