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知ってほしい!クラフトビール業界の現状を!


うちの看板ビールである「よなよなエール」がセブン-イレブンの中部・近畿地方で販売開始したことが記事になった。10月に関東地方で先行して販売を開始し、この時も大きな記事で取り上げていただいた。ありがたいことに両方とも大きな反響があったのはクラフトビール普及への期待の表れだと感じている。

ただ、色々な反響があった中で私が気になったコメントがいくつかあったのだが、それは以下のようなものである。

「コロナ禍で大手ビールは苦戦しているようですが、クラフトビールは好調なのですね!」

確かに「よなよなエール」を中心に幸いなことにうちのビールは販売好調ではあるが、それがイコール「クラフトビール業界が好調」という訳ではないのである。今回はそのクラフトビール業界の現状をきちんと伝えたいと思う。

現在日本にはクラフトビールメーカーは500社近くあり、近年その数は急激に増えている。その内訳は小規模なビール製造設備にレストランを併設した「ブルーパブ」業態がほとんどであり、作り立てのビールをレストランで食事と共に提供するスタイルだ。東京都内を中心に数名の従業員で経営しているところが多いように思う。

一方で、1994年に酒税法改正による規制緩和に伴い各地で「地ビール」と呼ばれる観光商材としてブームとなった時に開業したメーカーも多い。「地ビール」ブーム後、長く苦しい低迷時代を乗り越え、現在も活躍しているメーカー達だ。昔の「地ビール」と呼ばれた観光商材という位置づけから、現在は多様で個性的な味わいをもつ「クラフトビール」としてイメージも変わり、実力も遥かに向上したメーカー達は仲間であり尊敬に値する存在である。ただ、これらのメーカーも観光地に拠点を有することが多く、現在も観光消費は大きな売り上げの柱であることは変わりない。

ここで言いたいのは、クラフトビール業界の多くはこの「ブルーパブ=レストラン需要」と「観光地拠点=観光需要」に依存しているメーカーが多いということだ。つまりはコロナ禍で経営に大きな打撃を受けている事業を主としている構造なのだ。コロナの打撃を受けて、テイクアウトや通信販売での販売を始めているところは多いが、設備や品質等がそれらのサービスに最適化できていない製造上の問題や、販売ノウハウがないなどの営業上の問題などもあり苦戦は今も続いているようだ。

このままでは、折角ここ数年で増えてきたクラフトビールメーカーの事業継続が困難になり、事業撤退、又は倒産の危機的状況が迫ってくる。何とかクラフトビール業界が力を合わせてこの深刻な状況を脱せられないものかと考えている。実は私達も日本有数の観光地である「軽井沢」を拠点にしているし、東京都内には公式ビアレストラン「よなよなビアワークス」を8店舗抱えているが、この2業態の売上は大きく前年割れしている。一方で業界他社よりは早期に「スーパー・コンビニ」の店頭販売、及び「通信販売」市場に進出できていたため、この市場の巣ごもり消費需要を取り込むことができ結果的に今年も大幅増収を達成できている。ただ、この様な事業ポートフォリオはクラフトビール業界では非常に稀である。こういう時だからこそ業界のリーダーとして、私達のノウハウを業界の仲間に共有し、少しでも力になりたいと考えているのだが、私達1社では出来ることに限りがあるため、現在複数のクラフトビール業界団体に声をかけ一緒にできる取り組みを模索しているところである。

意外に感じるかもしれないが、実はこのようにクラフトビール業界の多くのメーカーが厳しい経営状況となっているのである。折角日本のビール市場に根ざしてきた「クラフトビール」文化の灯を絶やさないようにしないといけない。この記事を読んでいただいている皆さんへのお願いがある。是非この年末年始の機会に、皆さんの地域のクラフトビールを飲んで、そして購入していただけないかということである。コロナ禍で外食や旅行、帰省を控えている方も多いはずで、そんな方は是非自宅で美味しいクラフトビールを飲んで素晴らしい年末年始を過ごしてほしいと思う。そして、それをきっかけに地域のクラフトビールを飲む機会が増えることになれば、こんな素晴らしいことはない。もちろん、私も年末年始はほとんど自宅に籠っているので、自社だけでなく各地のクラフトビールを取り寄せて飲む予定だ。

来年はコロナも落ち着き、クラフトビール業界にとって飛躍の年になる様に祈っている。