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やがて問題になる、ユーチューバーのデジタル資産管理と遺産相続

 日本国内では毎年130万人以上が亡くなっているが、故人から家族や身内に相続される資産額は年間46兆円の規模があると推計されている。その内訳は、およそ5割が現預金(死亡保険金を含む)、3割が不動産、1.5割が有価証券となっている。しかし、これからは、故人が保有していたPCやスマートフォンのパスワード、ネット上のアカウントなども、デジタル資産としての価値を高めている。

たとえば、仮想通貨の秘密鍵を誰にも知らせずに亡くなってしまった資産家のアカウントが、半永久的に凍結されたままになっている実例は、海外で幾つも出てきている。そうしたデジタル資産の保管や相続について詳しい専門家は、これからの需要が高まってくるとみられている。

もう少しわかりやすい話として、収益化に成功していた人気ユーチューバーが、ある日突然に亡くなってしまったとしよう。この収益アカウントは、デジタル資産として相続人が引き継ぐことができる。

Google上の広告プラットフォーム「AdSense」は、個人アカウントの所有権を他人に譲渡することは認めていないが、本人が亡くなった場合に限っては、相続人が名義変更をしてサイトの収益を引き継ぐことは認められている。そのため、ユーチューバーが亡くなった場合には、Googleの規約に則った手続きすることで、その後の広告収入は相続人の銀行口座に振り込まれるようになる。

インテルが行ったアンケート調査によると、現代のネットユーザーは、個人用と仕事用として平均で27個の異なパスワードを保有しており、37%の回答者は、毎週少なくとも1つのパスワードを忘れている。そこで、すべてのパスワードを安全に管理して、本人が亡くなった後には、相続人に対してパスワードの承継ができる仕組みを作ることは、Fintechが手掛けるテーマになっている。

《デジタル資産となる主なアカウント》

●SNSのアカウント
●仮想通貨、電子マネーの保有残高
●オンライン金融口座
●故人の電子メール、Webサイト
●故人の医療情報
●オンラインで交わした契約書
●故人が作成。所有する文書、画像、動画など
●PCやスマートフォンのパスワード
●マイレージや各種のポイント特典
●オンラインゲームで獲得したアイテム

自分が保有しているアカウントのパスワードを一元管理して、数ヶ月間の利用がない場合(期間は自由に設定可能)には、自分が亡くなったものとして、家族に通知されるようなクラウドサービスは開発されてきている。しかし、実際の遺産相続では、他の金融資産と同じようにデジタル資産を扱い、すべての相続権利者に対して適正に分配譲渡しなくてはいけない。そこで、弁護士や司法書士などとも連携したデジタル資産相続の専門家は必要になってくる。

米国では、金融資産・保険・不動産などの資産管理全般を担当するファイナンシャルプランナーが、デジタル資産の管理も行いはじめているが、日本でその役目を担えるスペシャリストは空席のままである。

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JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。詳細は公式サイトをご覧ください。デジタル資産管理の最前線については「JNEWS LETTER 2019.3.14号」で詳しく特集しています。


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