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「足して、引く」仕事の流儀

 なるほどなるほど!これはすごい目鱗だし、目鱗と言いながら、確かにね!と思うところがある。うんうんうん。

 これが現代人かどうかはさておき、確かに、何か「改善」「変革」する時に、足し算をするか、引き算をするか、と考えると、つい「足し算」をしてしまうと。そんな気がする。少なくとも、「足し算」をすることから考える。

 僕のケースで言えば、
 本の執筆をしている時、いったんラフに全体ができあがり、さてこれをもう少し改善しよう!と考えた時、まずは「これだけだと説明不足だな」と表現を重ねていこうとするし、「これだとターゲットに漏れがありそうだ」と、ケースを追加して、いろんな人に合う形にしておいた方がよいかもと考えたりする。

 講演スライドも、あれも言いたい、これも言いたい、と考え、思考歯止めをかけずそのまま追加すると、50分の講演で100枚超のスライドができあがったりする。グロービス 経営大学院で、同じ科目を5年以上担当しているが、毎回毎回、デリバリーして振り返ると、あれも必要だ、これも必要だ、と考え、本編やAppendixを「足し算」していこうとする。

 昔、サービス開発や新規事業開発をやっている時もそうだった。今、大学の新学部をスタートさせているが、そういう「モノづくり、コトづくり」の際も、油断するとどんどん、スペックを「足し算」していこうとする。

 でも、振り返ってみると、ひょっとしてひょっとしてひょっとすると、僕は最終的にアウトプットを出すときには、その「足し算症候群」に陥らないで済んでいるかな、と気づいた。この「最終的にアウトプットを出す時には」が肝と考えている。

  僕の著作の代表作は「1分で話せ」だ。そしてその続編として「1分で話せ2」を書いた。1でも2でも、編集者の方と僕でやったことは、まずは材料をたくさん集め、たくさん書き、凄まじい量になった原稿を、「削り込んだ」ことだった。もちろん、そのまま出すにはページ数が多くなりすぎる、という問題もあったのだが、とにかく、削って削って削った。結果として、2などは、最初にできたラフの段階から、体感で6割くらいに削られた感じだ。

 そして講演スライドも、「足し算したい」気持ちに囚われるのを、振り切る。まあこれも、講演時間で話しきれない、という物理的な事情があるから、そこに対応すると、あれやこれやなんでも足してしまうことは無理なのだが。たくさんの材料を集め、まずはスライドは無茶苦茶増えるのだが、その後スイッチを入れて「削り」を行っていく。

 経験の少ないプレゼンターの中には、あれも入れておかねば、これも入れたい、そして話しているうちに言葉が詰まったらいやだから、これも足しておこう、という思考に陥る方がいる。準備段階はそれでいいのだが、問題は、その状態で本番を迎えることだ。要するに自信がないから、あれこれごちゃごちゃ言って、煙に巻こう、としてしまうところがあるわけだ。その状態で本番を迎えて、うまくいくはずがない。結局それは逆効果になる。

 だから、僕は材料集めの中でたくさんの情報を集めながら、削っていく。削るプロセスで、プレゼンが締まってくる。

  これは例えば、パネルディスカッションのモデレーターをやる時も同じだ。ある議題について話をする時、最初はなるべく多くの情報をその場に出す。足し算だ。そして場に出てきたたくさんの材料をもとに、ある時から、「でね、」と言いながら論点を絞り、結論を絞っていく。もちろん、発散させ、オーディエンスをもやもやさせることがその場の目的であれば、そんなことを考える必要はない。だが、多くのパネルディスカッションは、「その時間を通しての結論はこうだ」ということが望まれている。だとしたら、「削って」いかざるをえない。

 つまり、何かを生み出す時には、僕は拡散(=足し算)→収束(=引き算)のプロセスを常に行っているし、それがとても大事なことなんではないか、と考える次第だ。

 これは実は、リーダーの所作としても重要なプロセスだ。この古いインタビューで僕は、リーダーの仕事は意思決定すること、そして
「意思決定というのは、決める一方で何かを捨てること。そしてその決定に自分で責任を持つことなんだ」
と話している。

 要するに、AもBもCも、とできない時、Aをとる、ということは、BもCも捨てる、ということ。もちろん、BもCも後からできればいいのだが、できない時は捨てざるをえない。そこで「削る」「捨てる」ことができなければ、意思決定にならない。だから「捨てる」ことが必ず必要なのだ。それをするのがリーダーなのだ、と僕は考える。 

 最初の記事の通り、人間は「足し算」をまずしようとする。それはそれでよい。「足りないもの」を埋めることは大事だ。ただ一方で、それだけで課題は解決しない。必ず「引き算」、削って、捨てる。それはセットなのだ。きっと。当然のことのように感じられると思うが、これを意識できるかできないか、でパフォーマンスは変わってくるように思う。

 「足し算」をし、その後、必ず「引き算」をする。拡散させ、収束させる。そのプロセスを常に意識してみてはいかがだろうか。
(写真 アフロ)

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