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アニメ聖地巡礼のモヤモヤ、「海外」の存在

アニメの舞台になった町や建物を実際に訪問する「アニメ聖地巡礼」は、2018年以降『訪れてみたい日本のアニメ聖地88』(アニメツーリズム協会)の選定が行われるなど、注目度が高まっているようです。一方で、海外の「巡礼地」は今もニッチな界隈にとどまっているように見受けられます。

先日も2022年度版が発表されました。

こういったアニメ聖地巡礼を後押しする取り組みは非常に大事だと筆者も感じるわけですが、同時に腑に落ちない、モヤモヤする感情もあるわけです。

というのも、そもそもアニメの舞台となった町や建物は日本だけでなく世界中に存在するからです。

今回はこのモヤモヤの正体を探って見たいと思います。

筆者もひとりのアニメファンとして「アニメ聖地巡礼」に興味があり、イギリスのロンドンを訪問した際には、『小公女セーラ』に登場する町並みに感動したり、スペイン南部のアルハンブラ宮殿では『明日のナージャ』の印象的なシーンを思い出したり、地元でもあるフランクフルトでは『ハイジ』に登場するクララの家のモデルとされる家があり、アニメのシーンに思いを馳せたりもします。また、少し前の作品だと『モンスター』はドイツ各地を舞台にしていましたし、最近ではやはり『進撃の巨人』でしょうか。フランス東部、ドイツとの国境に近い町コルマールは『ハウルの動く城』や『ご注文はうさぎですか?』に登場する町として今でもファンが訪れる「アニメ聖地」となっています。また、『きんいろモザイク』や『けいおん!』の劇場版『映画けいおん!』のファンがイギリスを訪れることもあると聞きます。

そこで冒頭で取り上げた「アニメ聖地巡礼」の訪問地の選定に関しても、もっと国外も取り上げて欲しいなと思うわけです。

ただし、これには構造的な難しい問題もあるようです。というのも、アニメツーリズム協会のホームページを見ると、協会の理念として以下のように書かれています。

私たちは、アニメに携わる全ての人に寄り添い、
アニメ業界と地域の発展を願いつつ、“世界から選ばれる地元と日本”に貢献します。

つまり、この取り組みは日本国内に限定しているのです。海外にも積極的に情報発信するとありますが、基本的にいわゆるインバウンド政策と呼ばれるような訪日外国人を増やす効果を狙っています。そもそも、日本人が海外の「アニメ聖地」を訪問することは考えられていないわけです。

これが筆者のモヤモヤするところなのです。今は諸般の情勢により、海外旅行を気軽にできませんが、海外の「アニメ聖地巡礼」ももっと取り上げられてもいいのではと思うのです。

「アニメ聖地巡礼」は地域おこし等々との関連で語られることも多いわけで、そうなると海外の町、例えば先に挙げたコルマールに商店街があったとして、その商店は日本人の経営ではないから支援する理由はないと切り捨ててしまってよいものでしょうか。

むしろ、日本国内で培った、地元のひとたちとアニメ権利者が協力できる枠組みを積極的に海外にも応用してみてはと思うのです。経済の枠組みで考えれば、日本の旅行会社が積極的に関与する余地もあるでしょう。

それ以上に興味深いのは国際交流の進展に活用できるかもしれないという可能性です。アニメ聖地巡礼は、日本から外国を訪問するきっかけにもなり得るわけです。そして訪問した先で現地の人たちと交流すればアニメ文化を通じた国際交流につながります。

2022年はこういった国際交流も再開し、ハッピーな世の中になればと願うばかりです。

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