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宅配から始まる日本のOMO

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

最近話題のビジネス用語に「OMO」というものがあります。これは「Online Merges with Offline、Online-Merge-Offline」の略で、オンラインとオフラインを融合したひとつのものと捉え、オンライン側の論理でビジネスを考えるというものです。以前にも「O2O(Online to Offline)」という言葉がありましたが、なんとなく携帯にクーポン撒いて終わってしまった感があります。このときオンライン側はオフライン側を単なるプロモーション接点としか捉えておらず、またオフライン側もチラシと同様の集客手段としか見ていなかったからだと思います。

OMOの前提となるのが「アフターデジタル」という概念です。

まず、来るべき未来を考えたとき、「すべてがオンラインになる」と捉えています。
考えて見れば、モバイル決済などが主流となれば、すべての購買行動はオンライン化され、個人を特定するIDにひも付きます。
IoTやカメラをはじめとする様々なセンサーが実世界に置かれると、人のあらゆる行動がオンラインデータ化します。
つまり、オフラインはもう存在しなくなるとさえ言えるのです。

そう考えると、「オフラインを軸にオンラインをアドオンするというアプローチは間違っている」とさえ言えるでしょう。
筆者らはオフラインがなくなる世界を「アフターデジタル」と呼んでいます。

日本のEC市場規模は17兆9,845億円で、EC化率はいまだに6.22%(経済産業省:『平成 30 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)』)。このような状況なので、デジタルテクノロジーの活用においてもオフライン起点でビジネスを考えながら「オンラインを活用する」に留まっているのだと思います。

一方で、デジタル企業は顧客の要求に応えるべく、オンラインの原理でビジネスを拡大しています。その代表例が、アマゾンでしょう。

配車サービス「ウーバー」の物流版といえる個人配送が本格的に広がり始めた。スマートフォンのアプリを用い、空き時間に荷物を配る。大量の荷物を扱うアマゾンジャパン(東京・目黒)はこうした個人を活用した配送網の構築に乗り出した。国内の宅配便数は急増し、運転手不足も深刻ななか、自由度の高い働き方が注目されつつある。長引く物流危機の解決策になる可能性もある。
(略)
「軽バンドライバー募集 アマゾンとの直接契約」。ポスターがいくつも並ぶ配送センターの駐車場に男性が着いたのは午前7時。45個の荷物を受け取り、軽バンで午後3時までに配る。ルートはアプリ上に示され、荷物には配達する順番のシールが貼られていて初心者でも迷わない。正午すぎには配達先をすべて回り、車には再配達となった大小10個の段ボールが残った。

しかしこれで業務は終了。残りは次の時間帯の運転手に荷物を引き継ぐ。「ノルマもなく、自分のペースでそこそこ稼げる。だから人が集まる」

購入者も配送者もすべてクラウド側で一元管理がされ「このエリアで、この時間帯でどれくらい配送可能か」かをリアルタイムできめ細かく管理できているからです。もしキャパシティを超えれば、「当日配送可能」という文字はオンラインから消えるでしょう。このような需給マッチングや最適化というのは、まさにコンピューターが得意とするところです。スマホ、センサー(スマホに入っているものも含む)、AIの普及により、OMOの動きはより加速していくことでしょう。

つまり、圧倒的に「顧客目線」での一貫したサービス提供がキーとなります。「顧客がいまなにを求めているか」に対して、オンライン&オフラインを問わず最適なソリューションを提供する。この視点で考えれば、コンビニでジュースを買うのも、アマゾンでジュースを1ダース買うもの大した違いはありません。「いますぐ冷たいものが飲みたい」ならば目の前の店舗でしょうし、「自宅用にまとめ買いしたい」ならばECです。でも、もしこのときに「5分後にすごく美味しいタピオカティーをそこに届けますよ」というアプリがあったらどうでしょうか? これが、OMO先進国である中国で起きていることです。

最近都心部にはスタンド型のお店が増えています。スタンド型というのはイートイン座席がない、カウンターとキッチンだけの狭いお店を指しています。

ここまでデジタルサービスが浸透すると、イートインスペースを持つことに大した意味はなくなります。回転率という制限から解放され、周りにある家やオフィス全てに、絶えず門が開かれている形になります。むしろ重要なのはオペレーション、つまり「注文が来てからどれだけ早く商品を出せるか」です。何故なら、デリバリーを頼むユーザは、家から遠いかどうかよりも、「何分で届けてくれるか」を重視するからです。

今後日本でもキャッシュレスが加速していくと見られています。そうなると、すべてのビジネスがOMOの影響を受けるでしょう。いち消費者としては、より良い顧客体験が得られることは楽しみでなりません!

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タイトル画像提供:つむぎ / PIXTA(ピクスタ)

#COMEMO #NIKKEI

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