Femtech Fes! 2021:自分には無関係と思えてしまうこと
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Femtech Fes! 2021:自分には無関係と思えてしまうこと

新城健一(ホオバル取締役、Holoeyes取締役兼CSO)

fermata主催のFemtech Fes! 2021のアートワークショップ(詳細は下記の記事をご参照ください)を通して対話をする中で、改めて気づいたことがあります。何かを話題にして対話する際に重要なことは、その話題となる対象そのものよりも、対話する人のモードである、ということです。

対話のモード

ここでいうモードは、マインドセットというか、どういう立ち位置で話すか、どのような文脈で話すのか、というような意味です。

例えば、エロティックなモードで語るとき、手や目という対象ですら性的に語ることができます。一方、医療モードでは、性器であっても、客観的に語り合うことができます。このように、対象物そのものよりも、どのような文脈で、どのようなモードで語り合うのかが、その場の空気感を大きく左右します。

そういえば、東京工業大学 科学技術創成研究院 未来の人類研究センター長でリベラルアーツ研究教育院の伊藤亜紗さんの著書『手の倫理』の中に、次のような内容があったことを思い出しました。仕事の中で日常的に脱衣を行っている介護の方の経験談として、プライベートな時間の中での脱衣という行為の最中に、仕事モードの意識が入り込んでくることの違和感についての記述がありました。

主体モード

男女の身体の差異について語り合うとき、人の生理現象について語り合うとき、医療やヘルスケアのモードには意義があると思います。Famtech Fes! 2021の企画会議の中でも、次のような会話がありました。「女性生理について腫れ物でも触るかのように気を使いすぎる姿勢と、やたらと素晴らしい神秘的なものとして崇める姿勢とは、大きく距離をとるという意味では同じかもしれない」と。これなどは、女性生理について、男性が、他人事モードというか、無関係モードであるときによくみられる姿勢だと思います。

女性生理のみならず男性生理についても、男女が一緒になって、ただの身体の機能と反応として語り合うことができるようになること。それは、さまざまな関係性を見直す、ひとつのきっかけになるかもしれません。お互いの身体を踏まえた社会的関係性の構築に主体性を持って共視し、主体モードで対話することが大切なのではないでしょうか。

社会実装のための対話

新たな動きの社会実装を進める上で、そうした対話が広がっていくことは欠かせないものです。社会実装は、使う人がいてこそ、実現します。生理用品の変遷について、一般社団法人日本衛生材料工業連合会の生理関連製品ナプキンについて、では次のようにまとめられています。

脱脂綿や布を活用した戦前までの生理処理用品時代。物資が不足した戦中ではチリ紙(京花紙)や紙綿(特殊なしわ加工をした紙)が用いられた時期。1948年に統制解除となり、脱脂綿が再び生理処理用品として復活。1961年に薬事法が改正され、紙綿の文字が初めて薬事法に登場。同年、ナプキンが発売。生理用品利用率の変化は劇的で、1962年には「脱脂綿67%、ナプキン26%」だったものが、1969年には「脱脂綿5%、ナプキン89%」に。1978年には、高分子吸収剤を用いたナプキンが発売され、吸収力が大幅に向上し、使用感が劇的に改善されたといいます。

このように、実際に使ってくれる人がいて、はじめて新たな製品は社会実装が完了します。

社会変革を後押しするもの

記事にもあるように、普及には規制への対応、または規制自体の対応も大切です。

日本では生理用品を製造販売する事業者は、改正医薬品医療機器法(薬機法)や厚生労働省が定める「生理処理用品製造販売承認基準」に基づき、都道府県か厚労省から承認を得る必要がある。ところが基準をみると、生理用品は「白色」「においがほとんどなく、異物を含まない」との記載がある。吸水ショーツには当てはまらない。フェムテック商品のオンラインストアを運営するフェルマータ(東京・品川)の杉本亜美奈最高経営責任者(CEO)は「基準で言う生理用品とは、要するに紙ナプキンを意味している」と説明する。そのため吸水ショーツのような新たな商品は承認を受けられず「生理用品であるということを明確に言えない点が、普及の壁になっている」。
現時点では吸水ショーツは、特定の品質基準が設定されていない「雑品」に分類される。そのため「経血を吸収」など直接的な広告表現はできない。最終的な判断は都道府県に委ねられているが「ナプキンを使わず着用可能」などの説明も薬機法に抵触する可能性がある。広告表現が曖昧になる原因はここにある。

フェムテック新興議員連盟の立ち上げや、産官ワーキンググループなどの動きもあるようです。使う側が、きちんと理解し、実際に使うことで、未来を描くイノベーティブな活動が現実の社会活動として根付きます。そのためには、使うことができるような法制度の整備が大切です。とくに、医療・ヘルスケア関連は、この法制度が大きな枷になる場合があります。

自分には関係のない話と思えてしまうこと

こうした動きを見るとき、どうしても「自分と関係のない人たちが、自分と関係のないところで、自分と関係のないことをしている」と感じてしまい、「その結果として社会が変わることをぼんやり期待する」という気持ちを抱いてしまうことがあります。僕自身、そう思ってしまうこともあります。

しかし、こういう活動に対して興味をもち、イベントなどに参加をしたり、情報を集めたり、情報を発信したりすること自体が、大きなうねりを生み出すことを後押しするのだと信じています。こうした情報に触れた際にも、主体モードであることが大切なのだと思うのです。

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新城健一(ホオバル取締役、Holoeyes取締役兼CSO)
サービス多様性爆発カンブリアナイト_主宰。(株)ホオバル取締役_新規事業創出支援、ホロアイズ(株)取締役兼CSO_医療VR、ミスルトウ_コンテクストデザイン、(社)ライフロングウォーキング推進機構_理事、(社)医療リテラシー研究所_理事、学芸大こども未来研究所_教育支援フェロー