副業、複業の浸透に向けて

厚労省、思い切ったことやるな、本気だな、というのが正直な感想だ。

まあそもそも、国に言われないと進まない、というこの空気が日本の問題ではあると思うが、ただいずれにせよ、副業の解禁加速に向かうのはよいことだし、そもそも、なんで副業禁止なのか、とそもそもを問いたいニュースではある。

副業を禁止する側の理屈はこういうことだそうだ。

企業には副業を認めると自社の業務がおろそかになったり、ノウハウや信用が副業に使われたりすることへの懸念がある。

(日本経済新聞上記記事より)

言っていることは理解はできる。理解できなくはない、という感じか。

まず「自社の業務がおろそかになること」への懸念がある。自社の業務をおろそかにされたら確かにいやだろうな。それは当然かもしれない。
それはそうなのだが、そもそも「懸念があるから副業を禁止する」、、、というのがおかしくはないだろうか。

パフォーマンスが上がらないなら、評価を下げればいい。
副業をやろうが何しようが、パフォーマンスが上がれば評価(→報酬)が上がるし、パフォーマンスが下がれば評価(→報酬)が下がる。
それだけですよねと。なんで業務外のことが問題になるのですか?と。

副業を禁止する会社は、自社の業務がおろそかになることへの懸念があることを全部禁止するのだろうか。業務時間外のことであっても。

僕の場合、かなりの時間をYouTubeを見ることに費やすが、それは考えようによっては仕事の妨げになり、YouTubeがなければ僕の仕事効率は上がるのに!と思うことがある。

そうすると、業務時間外に、YouTube見ることは禁止!なぜなら本業がおろそかになるから、、、としたいのだろうかこういう会社は。子どものしつけか!と。馬鹿馬鹿しいよね。

次に「ノウハウや信用が副業に使われたりすること」への懸念。
業務上知り得た秘密とか顧客情報を、副業に使う。これは明確にいかんですわな。契約で縛って、それを破ったら罰するだけであって、あらかじめ禁止する、という理屈がわからない。

自社に困ることは、その人が副業していようがしていなかろうがやっちゃいかんよね、ということなのだと思うが違うのだろうか。ノウハウや信用が使われたら困るから、会社外の人と飲みに行くの禁止!としたいのだろうか。よくわからない。

社外の人に会社の秘密を明かすのは禁止!これは当たり前として、飲みに行ってはいけません、という話ではないはずだろう。

一方で、副業を行うことのメリットは大きい。
挙げればたくさんあるが、ひとつあげるとすれば、
「社会の今」を知ることができること。
これは大きい。

自社の仕事を通しても「社会の今」は知れる、と思うかもしれない。
でもそれは違うのだ。自社のハコ、というフィルターを通してしか見ていないのだ。

「社会の今」を知るには、自身が所属している会社の枠の中、というコンフォートゾーンを外れて、「○○社の誰々」ではなく、あくまで「誰々」という自分自身として社会に飛び込んでみることが必要となる。

もちろん、それはボランティアやプライベートの場でも感じとることはできるわけだが、「お金をいただく」仕事の真剣勝負の場に出て行ってみるとよりビビッドに感じとることができるのだ。

そういう環境に身をおいてみて、感じ、学び、動き、成果を得た経験をもって、自社に返ってくる。社員教育をしなくても、勝手に成長してくる。

そして「社会の今」を知れば知るほど、ぬるま湯にいた自分に気づき、
「力をつけねば!」
と思う社員は増えるし、より外に出ていき、そこで培った経験をまた自社に持ち帰って力を発揮し、活躍する。

そういうサイクルが生まれてくると、間違いなく自社のパフォーマンスがあがってくる。

そして、これが進むと、他の会社に転職していく社員が増える。
一義的には、転職者が殺到すると会社にとってはマイナスになることもあるかもしれないが、退職者に何が不満だったのか、丁寧に聞いていけば、他社と比べて劣っている点を知り、改善することができる。

自分たちがどう会社をよくしていければいいのかというヒントが、しかもかなりリアリティあるヒントがもらえるのだ。

どんどん外に出て行ってもらい、力をつけていってもらう。そして転職したいと思うならどんどん転職してもらう。新しい血を入れて、会社が活性化する。

最高じゃないか。

少なくとも、社員を思考停止させて、「それなりのパフォーマンス」を出してもらって、外の世界をなるべく見せずに、「不満はあるけど外に出て行くのもちょっとなぁ」などという状態、つまり言い方は悪いが”飼い殺し”的な状況にしておくより、はるかに健全ではないかと思うのだがどうだろう。

僕は複業で、Zホールディングスに属しながら、自分の会社もあり、グロービス経営大学院の講師もやり、そして何より、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長として、新しい学部をつくっている。

複業でこれらの仕事をやることで、それぞれのパフォーマンスが圧倒的に上がる。全てがつながっているからだ。

長時間労働はケアしなければならないが、現状、総労働時間は、通常の会社員と同程度しか働いていないはずだ(風呂に入っている時でも移動している時でも寝る前でも仕事のことを考えているが、デスクに向かったり打ち合わせをしている時間は、他の方と同程度、という意味)。

まあそろそろ、労働時間での管理という軸だけで見るのはやめた方がよいように思う。散歩している時だっていいアイディアを思いつき、仕事にすることはできるわけだし。

フルオープンにして、しっかりパフォーマンスで評価する。
結果として、会社の力が上がってくる。
副業、複業、しっかりと前に進め、日本が再び活力に満ちた国になるといいな、と。そう思って、このコラムを書いた。



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