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日本の生産性が低いのは、雇用が不安定で給料が低いからです

新型コロナウイルスの影響で、多くの人の生活が危機に晒されています。とりわけ、派遣労働など非正規雇用で働く方々やフリーランスはどんどん仕事を失っている状況です。

いわゆる「コロナ切り」です。


社会が不安定になると真っ先に被害を受けるのは、決まって社会的に弱い立場にある人々です。本来なら労働組合に力を発揮してもらいたいところですが、日本の企業労働者の加入率は17%と決して高い数字ではありません。(※)

※ : でも、労働組合に加入すると加入しない場合よりも賃金が高くなる傾向があるようです。2000~03年のデータを較すると、その差はなんと17%! 詳細はこちらの記事をご覧ください。


となると、やはりここは国家にサポートしてもらいたいところです。だって、困っている人を助けるのが政治の仕事でしょ!

ところが、この国の政府はフリーランスや非正規雇用で働く人に冷たい。とことん冷たい。

子どもの休校で仕事を休んだ人への補償金だって、企業の労働者が日額上限8,330円だったのにフリーランスは一律4,100円だったし、企業にまっとうな待遇改善を相談しても無視されている人たちは知らんぷり。


そしてこの政府の対応を後押しするのは、あろうことか世論です。例によって「だって自己責任でしょ」的なコメントがネット上で炸裂しまくり。

意識が斜め上に高い系の方々が対岸の火事として高みの見物をしているのかもしれません。でも、同時にこんなことを言ったりもします。

「日本が貧しくなっている!それは日本の生産性が低いからだ!イノベーションだ!スタートアップだ!GAFAみたいな企業を日本でつくるのだ」


ちょ、まてよと。

実はこのコメントには壮大な矛盾があります。っていうか、この発想が日本が貧しくなっている原因のひとつなんですよね。



😖 日本人はどんどん貧しくなっている


まず前提を確認しましょう。

日本は現在貧しくなっているのか?これはYESです。

ここ20年で実質賃金は下がり続けています。下のグラフでは、一番下のひとつだけ地を這っているのが日本です。国際的にみても異常なほどお給料が増えていない、むしろ、減っています。

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なので、私たちの収入も減ってます。

経済協力開発機構(OECD)は残業代を含めた民間部門の総収入について、働き手1人の1時間あたりの金額をだしました。

国際比較が可能な1997年と2017年を比べると、20年間で日本は9%下落。ちなみに、先進国で唯一のマイナスです。英国は87%、米国は76%、フランスは66%、ドイツは55%も増えた。韓国にいたっては2.5倍です。

残念ながら、私たちが日々貧しくなっているのは確実っぽい。


では、その原因は日本人の、というか、私たちの生産性が低いからなのでしょうか?

下図の生産性の国際比較をみてみると、確かに、高くはないですね。下から数えた方が早いもん。こんなに毎日頑張って働いているのに…😢

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参照元:「人間使い捨て国家」著:明石順平


でも、なんか最初にみた実質賃金の図と比べるとギャップを感じませんか?

例えば、オーストラリアなんてひとつ目の図ではぶっちぎりだったけど、こっちだと日本とそんな大差ない。13ドルくらいの差です。なんだか生産性高そうなニュージーランドよりいいし。

そして、お隣の韓国よりも生産性が高いじゃないですか❗️ やったね❗️


… あれ?

でも、韓国ってここ20年で収入は2倍に増えてるんですよね?でも生産性は日本より低い?なんだかすごい違和感があるのですが…?



😇 労働者を徹底的に冷遇してきた日本政府


日本が韓国よりは生産性が高いのに、お給料がむしろ下がっている(韓国は2.5倍)理由なんて、ひとつしかありません。

会社がまっとうなお給料を労働者に払わないからです。そして、政府がそんな会社を全力でサポートしてるんですよね。


日本政府は、というより、はっきり言っちゃうと自民党が政権にあるとき、徹底的に労働者の雇用を不安定にしてお給料を押し下げてきました。国際競争力を高めるため、とかいう大義のもとに。

例えば、残業代を払わない企業に対する罰則がないに等しかったり、いわば「定額働かせ放題」といえる裁量労働制の適用範囲を拡大させようとしてみたり、「高度プロフェッショナル制度」という働き手には1mmのメリットもない制度をつくってみたり…等々、具体的なことをあげればキリがありません。

低賃金・長時間労働を促進する法律を次々に成立させています。


そして、もっともわかりやすいのは派遣労働者を激増させたことでしょう。

実はもともと法律で労働者派遣事業は禁止されていました。なぜ禁止されていたのかといえば、労働者にとってあまりに不利益が大きかったからです。

派遣先企業は雇用に関する面倒ごとは回避できるし、都合が悪くなったらすぐ切れます(実際にそうなっています)。そして、本当なら働いた人がもらえるはずのお給料は派遣元がピンハネする仕組み。そんなバカな。


この派遣事業が経営者たちの強い要望で解禁されてしまったのが1986年です。ただ、この時はまだソフトウェア開発など専門的な13の業務に限定されており、それ以外は禁止されていました。

ところが、これがドンドン拡大していきます。

1999年には「特定の業務以外は全部OK」。そしてついに2004年には最後の砦だった製造業への派遣も合法化されてしまいました。

この間、派遣労働者数はすごい勢いで伸びています。

2008年をピークに数が落ち込んでいるのはリーマンショックがあったからです。一気に派遣労働者が切られていった様子がよくわかります。

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参照元:「人間使い捨て国家」著:明石順平


低賃金・長時間労働を助長させ、しかも、雇用まで不安定化させてしまったことが、日本の賃金が伸び悩んでしまった理由だと考えられます。(※)

※ : それだけではなく、政府が実施してきた経済政策も賃金に悪影響を及ぼしていると考えられています。それはまた別の機会に。


でも、こういう話をすると必ずこういう反応がきます。

「企業が潰れたら元も子もないだろ!生産性をあげる為には仕方ないのだ!国際競争力を上げねばならんのだ!」うんぬん…



😤 「生産性」について冷静に考えてみる


では、ここで改めて生産性について考えてみます。本当はけっこう複雑な式があるのですが、シンプルにするとこんな感じ。


生産性 = 粗利 / 労働時間

Twitterでご指摘をいただいたので追記。ここで言及している「生産性」とは付加価値労働生産性です。ひとくちに「生産性」といっても色々な種類があります


つまり、より少ない時間で大きな粗利(≒利益)をあげれば生産性があがるのです。手段は2つあることがわかります。

ひとつは、分母の労働時間を短縮することです。これはよく知られています。だから働き方改革がもりあがってます。(じゃあ裁量労働制の拡大とか高度プロフェッショナル制度とかやめーやって感じですが)

なお、韓国の生産性が低い原因のひとつはココ。日本人の長時間労働は有名ですが、実は韓国の方が酷い。日本の年平均労働時間は1,765時間ですが、韓国は2,090時間…!


もうひとつは、分子の粗利をあげることです。では、どうやって?

よく出る意見は2つです。ひとつは給料を削ること。でもこれは完全に誤解。経理上は粗利はあがりません。(経営者は得をするがな!)

もうひとつは、この記事の冒頭でご紹介した「イノベーションだ!」っていうタイプ。もちろん大切なことではありますが、とても大事なことを見逃しています。


それは、イノベーションを起こしてどんなに利益率の高いイカした商品をつくったって、買う人がいないと生産性は上がりようがないということです。

つまり、消費が上がらないと生産性は上がりません。

もっというと、その消費はお給料から出てくるわけですから、お給料が上がらないと生産性は上がらないのです。


大事なことなのでもういっかい。

お給料が上がらないと生産性は上がらないのです❗️❗️


記事冒頭にご紹介したような、企業にお給料をあげるように交渉するも無視されて困っている人たちを指して「自己責任じゃんw」といいながら一方で「生産性をあげないと!」というのが如何に意味不明なことかわかります。


もちろん僕だって「生産性を上げろ!」には大賛成です。

でもね、だったら「労働者をちゃんと保護して、お給料を上げろ!」というのが当然の論理です。



😌 当事者目線を大切にしよう


私、日本人って本当にすごいと思うんですよ。社会を語る時の視座がやけに高い。

経営者が安月給で長時間労働を押し付けてきても「私たちが権利を主張しすぎて経営が行き詰まったら困るしね 😌」

政治が労働者の権利を侵害しまくる法律を次々つくっても「きっとこれが新しい時代の働き方なんだよ 😌」

大企業の経営者にだけ美味しい経済政策で私たちの生活が苦しくなっても「でも、株価は上がったしさ 😌」


もう涙が出てきます。

でも、この視座の高さは角度が間違っていると思うんです。だってこれって「労働者を搾取する経営者の視座」だし「国民生活を蔑ろにする政治家の視座」でしょ。


今私たちの社会に必要なのは、もっと自分たちの当事者目線を大事にすることだと思うんです。


「残業してるのに残業代が出ない😢」

「正社員と同じ仕事してるのにお給料が少ない😢」

「派遣で何年も働いてるなに正社員になれない😢」


勇気を出して当事者の声をあげていくことが、政治家や経営者に対する一番の圧力になります。

そしてそれが私たちの生活を具体的に改善し、お給料を上げ、消費が増え、日本の生産性があがって、社会全体を豊かにすることに繋がるのではないでしょうか。

社会を豊かにするには、まず私たちひとりひとりの生活を豊かにしなければいけないんです。



📕 おまけ。参考図書


今回の記事の労働問題に関する知見の多くは本書に基づいています。この国の深刻な労働問題に関心がある方はぜひご一読ください。唖然とします。僕は娘が社会に出るまでに絶対に読んでもらおうと思っています。


経済って僕らの生活に欠かせないものだけど、仕組みが複雑でよくわからん…!ってことありますよね。本書はそれを面白おかしくマンガで解説してくれています。普通に毎回笑えちゃったりして、読み物としても最高です。月さんとバオバオかわいい。
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ソーシャルマーケター / 認定NPO法人フローレンス。たまに日経新聞に寄稿。前職はリクルートで営業と事業開発。市長選挙に出馬するもボコボコにされたのが社会人の原点。慶応義塾大学総合政策学部中退。妻と娘と三人暮らし。#保育教育現場の性犯罪をゼロに

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