遺品を適正価格で換金するエステートセールとヴィンテージアパレル発掘業
亡くなった人の遺品をどのように処分するのかは、高齢化社会の中で大きな課題となっている。日本では、リサイクルショップが「遺品整理」の看板を掲げるようになっているが、故人の持ち物は大半が値が付かず、タダ同然で引き取られていく。
しかし、リユース市場で流通する中古商品の中では、既に遺品の占める割合は高くなっている。それらは「亡くなった人の所持品」であったことは隠され、中古品としてオークションやリサイクル店舗で販売される他、途上国へ輸出されるものもある。「遺品整理」の看板を掲げる業者数は、ここ数年で急速に増え、日本国内で7千社以上とみられている。この業界の監督官庁は存在せず、見積価格の算定方法や、引き取った物品の処分・換金ルートについても不明瞭な点が多い。
一方、米国では故人の遺品を適正価格で売却する「Estate sale(エステートセール)」という方法が普及している。これは、相続人が遺品を公開して、個人や業者に対して入札方式で売却、換金する仕組みである。
エステートセールは、相続人から委託された遺品整理会社が主催して、リアルな場で行われている。処分したい家財道具の点数は多岐にわたるため、故人の家をそのまま会場として公開し、参加者に欲しい物の値を付けてもらうのだ。
「Estatesales.net」は、各地で開催されるエステートセールの情報を集約しているサイトで、全米で 約9,000社あると言われる遺品整理業者が、セールの日時を有料で告知できるようにしている。
エステートセールは米国各地で開催されており、中古品やアンティーク品を扱う業者は遠方のセールにも出向いて、掘り出し物を探している。特に、事業の成功者や資産家が亡くなった時には、高級な家具、美術品やコレクター向けのグッズなどに巡り会えるチャンスも大きい。ヴィンテージ・アパレルを扱う業者は、こうしたエステートセールの中から、高級服の古着を発掘している。
昔のファッションには個性や主張があり、服の素材や品質も良いことから、現代でも“古着”としての価値が見直されている。米国では、様々なルートから、状態の良い古着を仕入れてネットで販売することが、スモールビジネスとして成り立っている。
オレゴン州ポートランドにある「Adored Vintage」は、ヴィンテージドレスを専門に扱っているサイトで、1920~90年代に作られたドレスを独自のルートから仕入れてオンライン販売している。古いドレスはどれも一点物であり、アンティーク風のファッションを好む女性からの人気がある。
ヴィンテージアパレルは、サイトのデザインや写真の撮り方によっても印象が変わってくるため、販売者のセンスや工夫によっても、商品の付加価値を高めていくことができる。 そのままでは流通価値の無い古着でも、痛んでいる箇所の補修やリメイクにより、魅力的なヴィンテージ商品に再生することも可能だ。
日本でも、昭和の時代に作られた製品の中には、アンティーク品としての価値が見直されている物は沢山ある。その仕入先として、故人の所持品は魅力であり、現状のように二束三文で処分されてしまうのではもったいない。故人の思い出を大事にしたい家族のためにも、遺品を適正な価値で再流通させられるマーケットの整備が求められている。
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