電子サインで変わるスモールビジネスの契約ルール
コロナ感染防止のリモートワークが普及する中で、支障が生じる従来業務として「押印」の各種手続きある。日本では、取引先との契約や社内の承認手続きで印鑑が古くから使われてきた。
しかし、ビジネスの環境がアナログからデジタルと変化する中で、いつまでも紙の契約書を重要視することは、顧客を獲得する上での足かせになってくる。たとえば、遠方の顧客と取引を開始する際に、契約書のやり取りを郵送で行うと、1週間以上のタイムラグが生じてしまう。その間に、契約への意思が変わってしまうことはよくある。そこで、電子メールで送信したデジタル文書(PDFなど)に、デジタル署名をしてもらう「電子契約」が、新たなビジネス慣習として使われはじめている。
日本では、重要書類には必ず印鑑を押す文化があるが、押印が無いサインのみの契約でも法的に有効であることは、裁判の判例としても出ており、最近は偽造対策の面でも紙よりセキュリティが強化されている電子契約のほうが信頼性は高くなっている。 また、ペーパーレスの電子契約では印紙税が必要無いという法解釈がされていることも、年間を通して大量の契約書面を発行している、不動産や保険業界にとってはメリットが大きい。
《電子契約のメリット》
・遠方の取引相手とも迅速な契約ができる。
・契約書の管理や検索がしやすい。
・印紙税がかからない(紙の文書ではないため)
・タイムスタンプによる契約日時が記録できる。
・偽造防止の信頼性が高い。
【スモール事業者が活用する電子契約ツール】
中小業者やフリーランスの取引では、口頭や電話による仕事の受発注が主体になっていることは多い。それが原因で、取引を開始した後に、一方的なキャンセルを言い渡されたり、最終的な請求金額でトラブルになったりすることもある。 そうしたリスクを解消する目的で、取引前には、電子署名フォーム欄のあるPDF形式の注文書や発注書を作成することは有効だ。
クラウドで利用できる電子契約のプラットフォームは多数あり、個人事業者向けには無料で使えるコースも用意されている。PDFの契約書に電子的なサインをする技術は、2001年に施行された電子署名法に準拠したものだが、各プラットフォームによって、サインの方法が若干異なるため、契約の内容や形態によって、使いやすいサービスを選ぶことがポイントになる。
《電子契約のプラットフォーム例(国内)》
■クラウドサイン
■GMO電子契約Agree
■DocuSign(ドキュサイン)
■Adobe Sign
電子契約の活用例として、企業とフリーランス、フリーランス同士で行う仕事の受発注では「業務委託(請負)契約」を電子的に交わしておけば、後々のトラブル対策になる。また、共同でビジネスをする上では、必ず守秘義務は発生するものだが、その適用範囲は曖昧になっていることが多い。そこで、ビジネスに参加する者全員と「守秘義務契約」や「秘密保持契約」を交わすことも、電子契約であれば実行しやすい。
在宅勤務の仕事中でも、働き方がオープンになる分だけ、思わぬトラブルが生じるリスクも高くなっている。業務を行う上での義務や禁止事項、顧客情報の扱いなどは事前に決めて、契約書にしておくのが良いだろう。
電子契約の普及は、紙よりも契約手続きのハードルを下げられるため、これまで曖昧だったビジネス上のルールを明文化して合意の意志を記録できるメリットがある。その一方で、契約による縛りも増えてくるため、自由と責任、権利と義務が表裏一体となったワークスタイルが築かれていくことになる。
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