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不景気なのに"old money aesthetic"?

いわゆる「良いとこの家の人っぽい」プレッピースタイルが今、この経済状況で再復活している背景を分析する記事が多く書かれている。カーダシアン家等インフルエンサーのnew moneyらしいマキシマリズムの反動なのではあいかとも言われており、その美的世界観は「old money aesthetic」と呼ばれる。実際は、「高見えするもの」を代替品で賄うことで、なんとなく「それっぽさ」は作れていても、どんどんコスプレ化・形骸化している感じも強い。

miu miuの例のセットアップをはじめに、ゴシップガールのスタイリングがもはや「一昔前のスタイル」として参考にされていたり、Athleisureがトレンドの中心を獲得し続けていることなどを加味して、プレッピースタイルが挑発的なものに変わりつつある、と分析する記事も。

"old money aesthetic"たるものも、結局は「金持ちっぽく見える格好」というイメージベースの話なので、白人中心的だし、美化された世界観なので、本当のガチ良家の人はグッチベルトを使っていなくても、例えば「グッチベルトはなんとなくold moneyっぽい」と思っている人も多数いる。かつてはプレッピースタイルと呼ばれていたものが、その「学歴」「家柄」の本質が抜かれ、ファッションスタイルや「羨望するような世界観」だけが抽出されているのだ。

Z世代、ミレニアル世代に人気のブランドAritziaはこのold money aestheticを積極的に取り入れている。例えばEmma Chamberlainをキャンペーンに起用し、ブランドの「顔」に起用することで、親近感やリアルさはあるものの"clean girl"さを全面的に打ち出すことで成功を収めている。服のデザイン自体はユニクロに近いところもあるものの、「今風」のスタイリングが特徴的だ。

「「オールドマネー」という言葉、そしてそれに付随するライフスタイルやステータスは、何十年もの間、人々を魅了してきた。莫大な富を持つ人々の秘密の生活や暗黙の了解は、無数の映画やテレビ番組の背景となり、多くの小説に影響を与え、本質的には、資本主義の下で人が達成できることの金字塔となった。そして、そのライフスタイルは、「努力すれば、自分もこんな生活ができる」という夢のようなものだった。そして今、オールドマネーの理想は、ソーシャルメディアによって若い世代の目に触れることになった。

オックスフォードの定義では、「オールドマネー」は 「自身が稼いだものではなく受け継がれた富」とされている。つまり、オールドマネーのようなライフスタイルを実現するには、それなりの環境、それなりの家柄(そしてそれなりの遺産)を持って生まれてこなければならない。そのためか、少なくとも若い世代の目には、old money aestheticはライフスタイルではなく、「ファッションスタイル」が中心になっているように映るのだ。

今年、TikTokで広まった主なファッショントレンドといえば、テニス・コア、乗馬スタイル、”海岸沿いで暮らすおばあちゃんスタイル (coastal grandmother aesthetic)”、これらはすべてオールドマネーの世界観から派生したものだ。このような憧れの生活の多くの側面が実現不可能であったとしても(ヨーロッパの南海岸をクルージングするスーパーヨットで過ごす週末を夢見ることはできるが)、ルックなら真似できる。

「オールドマネー・ルック」の定番はリネン、ポロシャツ、「静かに主張する高級」デザイナーアイテムに加え、アーガイルベスト、白いスニーカー、カプリ、キルティングコート、テーラードアイテムなど。

Z世代は成人しつつある。しかし、20代前半という、通常であれば購買力や可処分所得が高まる時期に、多くの人がコロナ後のインフレと生活費の上昇に打ちのめされている。少なくともオーストラリアでは、多くの若者にとってマイホームを購入することさえも、どこか実現不可能に感じられる時代だ。

オールドマネーに憧れる多くの若者にとって、ハイブランドの服を購入することは問題外である。TikTokmで#oldmoneyが盛り上がって以来、Depopでは「襟付きシャツ」の検索数が70%、「トレンチコート」の検索数が76%増加している)。代わりに、彼らは中古品販売業者に目を向けている。」



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竹田ダニエル
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