新型コロナ・感染症法5類移行の前に思うこと
新型コロナ(COVID-19)の感染症法の位置づけが5月8日から5類に移行されますが、このタイミングに合わせるかのようにWHOはCOVID-19に関する緊急事態宣言を解除することを表明しました。
2020年3月に宣言されて以来3年3か月もの期間が妥当であったかどうかは何とも言えませんが、多くの国々が規制緩和の動きがある中でも深刻な感染拡大やその原因となるべく変異株の出現が大きな問題となっていないことからの結論だったと考えますし、日本での5類移行がほぼ同時期となったのも概ね同様の見解があったからではないかと推測します。今後も適宜注意喚起は必要であるとは思いますが、同じことばかりを繰り返しているだけでは進歩はありません。
「冬に流行する傾向」とありますが、2021年1月は英国からの輸入株(アルファ株)による第3波、2022年1月は南アフリカからの輸入株(オミクロン株)による第6波であり、2021年7月の流行はインドからの輸入株(デルタ株)による第5波でした。多くは輸入変異株による流行の波であり冬だけではありません。実際に現場で最も大変だった2022年7月の第7波は真夏に起きています。流行の予測は緊急事態でなくても、日本の法律の5類感染症であっても無視される訳ではなく、それは同じ5類感染症のインフルエンザであっても世界での流行状況や変異状況などのサーベイランスは常時行われています。2020年の発生当初は多くの未知な事象が多く、対策を緩めることが感染拡大につながったことは事実です。しかしそれから月日が過ぎ、多くの人たちが公衆衛生知識を習得する傍ら、ワクチン接種や罹患歴などで免疫を獲得し、ウィズコロナとして日常生活を取り戻すべく流れの中で「緊急事態宣言解除=気が緩む」「5類移行=感染者の急増」などとブレーキをかける発言には賛同できませんし、そのような意見を述べる同じような識者ばかりに取材するメディア(引用記事です)にも賛同できません。
ただ誤解しないでいただきたいのは「COVID-19は終息した」という訳ではなく「発生前の生活に戻っても現段階では大きな懸念はないだろうから特別視するのを終わりにしよう」ということです。ウイルスは常に変異する可能性があり、コロナウイルスに限らずインフルエンザウイルスでも新型インフルエンザが発生する可能性は常にある訳です。すなわち注意をすることは必要であると思いますが、発生当初の頃とトーンが変わっていないことに疑義を感じるのです。
COVID-19に対する治療薬も一般流通が始まり、必要な患者さんは医療機関での処方箋があれば入手することが可能となりました。ただ問題なのは高額な薬価であり、暫定的に9月までは薬剤費は公費助成されることが決まりましたが、その後どうなるかは不透明です。もはや99%以上の方が軽症である感染症の急性期に高額な薬剤が必要なのか、議論の余地は残されていますが、ウイルス量を減らす効果に関しては拡がりやすい環境での感染制御や遷延する症状(Post COVID-19 condition)などへの有用性等について期待がもてるかもしれません。(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸によるウイルス力価の 早期陰性化ならびに罹患後症状(Long COVID)の発現リスクに対する低減効果について ―国際学会CROI 2023において新規データを発表―|塩野義製薬 (shionogi.com))
これまでの経緯からすればCOVID-19流行の波は大なり小なり発生はするでしょう。これはCOVID-19だけの問題ではなくインフルエンザをはじめとする呼吸器感染症は常に流行の波を繰り返しているわけであり、新型コロナウイルスも3年かけてようやく宿主に順応して流行性呼吸器感染症としての位置づけになりつつあるような印象です。インフルエンザの毎年の流行は「気が緩んだから感染者が急増した」訳ではないでしょう?
5月8日以降、医療現場の変化があるのかどうか、流行状況の変化があるのかどうか、患者さんの意識変化がみられるのかどうか、来週以降でまとめてみたいと思っています。
#日経COMEMO #NIKKEI #新型コロナとの付き合い方
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