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欧州アニメビジネスの最前線はどこにある?

ドイツ、フランクフルトの家電量販店ではアニメ『スパイファミリー』のアーニャのぬいぐるみが販売されていました。
アニメやマンガが世界を席巻していると言われています。業界各社の攻勢も連日、日経新聞などでも報じられています。

一方、海外事例というと、取り上げられるのは米国やフランス、中東などまだまだ限られているようにも思えます。今回はドイツ在住の筆者が欧州ビジネスの中心はどこにあるのか探ってみようという試みです。

アーニャの場合

タイトル画像に使用したこのアーニャのぬいぐるみですが、商品に取り付けられたタグを見てみると、「クランチロール」と「SAKAMI」という企業名が確認できます。前者は日本でも存在感を増しつつあるソニー傘下の日本国外アニメ配信の大手です。ベルリンを拠点とするドイツ法人のようです。後者は、ドイツ東部ザクセン州のグッズ企画制作会社です。つまり、日本から輸入されたグッズではなく、どうやらドイツで企画販売されているオリジナルグッズのようです。

アーニャのぬいぐるみに付けられたタグ

「アニメジャパン」での商談会

日本では今年3月末にアニメ業界の見本市「アニメジャパン」が開催されましたが、ジェトロ(日本貿易振興機構)は海外バイヤーとのオンライン商談会を実施しました。ジェトロが公開している資料によると、欧州からはドイツとフランスから6社が参加、国別では最も多くなっています。ただし、カテゴリー別で見ると、ドイツでは「ライセンスビジネス・マーチャンダイジング等」がメインなのに対し、フランスは「映画館・配給会社・映画祭等」が多く、国によってアニメビジネスの重点が異なるようです。

「AnimeJapan 2024 × JETRO アニメコンテンツ・オンライン商談会 バイヤー一覧」から抜粋

欧州におけるクランチロールのキャンペーン事情

クランチロールからメディア関係者にメール配信されたニュースレター(2024.05.20号)によると、5月は「アニメファンはアニメを身にまとうのが好き」という(ちょっと謎な)モットーのもと、現地企業とのコラボによる販促キャンペーンを展開しているようです。欧州でのコラボ先を抜粋してみます。

● HMV:イギリス、アイルランド、ベルギー(DVD/Blu-rayなど)
● Games Academy/Funside:イタリア
● Cultura:フランス(マンガなど)
● El Corte Ingles:スペイン
● Thalia:ドイツ、オーストリア(マンガなど)
● Gamestop:ドイツ
● MediaSaturn:ドイツ(マンガなど)
● Mueller:ドイツ、オーストリア(マンガなど)
● Hugendubel:ドイツ
● XS Toys:エストニア、リトアニア、ラトビア(ぬいぐるみやフィギュアなど)

クランチロール・ニュースレター(2024.05.20号)

フランスには1社しかコラボ先はありませんが、ドイツは5社あります。ざっくりどういう企業かというと、Thaliaはドイツ語圏の大型書店チェーン最大手(約500店)、Gamestopは町のゲーム屋さん的存在(約70店)、Mediamarkt/Saturnは家電量販店大手(約400店)、Muellerは日用品店大手(約900店)、Hugendubelは専門書も扱う大型書店(150店)と、いずれも大手となります。

仏独比較、マンガ市場の場合

フランスは欧州におけるマンガの1大消費地として紹介されることが多いですがドイツと比較できそうな情報を探してみました。2023年に日本で公開されたこちらの記事によると、フランスのマンガ市場は3億8100万ユーロ(2022年)とあります。一方のドイツはというと、ベルリンの日刊紙『ターゲスシュピーゲル』の記事(ドイツ語)によると、1億600万ユーロ(2022年)だったそうです。2022年なので両国ともにいわゆる「コロナ特需」による増加分は差し引いて見る必要があるのと、統計の中にアメコミや現地コミックなどが入っている可能性もあるので断定はできませんが、総じて、マンガ市場はドイツよりもフランスのほうが大きいと考えられます。

欧州で今一番活発なのは。。。

断片的な情報をかき集めただけですが、アニメやマンガに関連するビジネスは欧州内ではドイツが今最もアクティブなのかもしれません。マンガ市場はフランスの方が大きいですが、そもそもドイツはEU最大の経済大国であることを考慮すれば、もしかしたら「伸び代」があるのかもしれません。ドイツ企業のオンライン商談会への積極的な参加やクランチロールのキャンペンの実施先がドイツに多いのは、開拓の余地があるという判断があるとも推測できそうです。
アーニャのぬいぐるみに限らず、アニメグッズの新商品はドイツから出てくるようになるのかもしれません。みなさんはどう思われますか?


タイトル画像:フランクフルトのショッピングモール内に出店する家電量販店で販売される「アーニャ」のグッズ。筆者撮影。


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