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朝ご飯がゆとりを生み、多様性を育む。

学生の頃から長らく朝食というものをしっかり食べる習慣は無かった。出張で泊まったホテルに朝食がついていれば、勿体無いから食べる。朝食とはそのくらいのものだった。ところが京都に来て、その感覚が徐々に変わりつつあるように思える。少し前から、朝食に関する情報が気になっていた。京都には朝食の専門店があり、行列ができるほどの大人気だというのだ。清々しい朝、京都の和食を食べたら、これまでとは違う食の体験ができるのではないか。そんな期待が生まれてきた。コロナ禍で夜の食事とお酒が上手く楽しめなくなっているので、なおさら興味が湧いていたのかもしれない。

それに拍車をかけたのが、朝、オフィスへの道すがら見つけたお店だった。きづきアーキテクトのオフィスは平安神宮の参道に面しているが、その側には白川が流れている。そして、そのほとりに「丹」という小さな台所がある。最初は、和やかに談笑しながら朝食を楽しむグループを横目に、足早にお店の前を通りすぎるだけだった。でも通勤の度、何度となく、通り過ぎるうちに、その空間にどんどん引き込まれていく自分がいるのに気づいた。「肩の力を抜いて暖かい食卓を囲む」というコンセプトは後で知ったが、まさにそんな雰囲気で満たされている空間だと思う。

そんなことを思っていた時、「コロナ禍で変わる朝のひととき」という記事を見つけた。朝食の文化は、京都だけでは無かった。鎌倉駅から10分も離れたところに朝食の人気店があるというのだ。「喜心 kamakura」である。常連客は、「のれんをくぐった時からわくわくできる。味覚はもちろん、目や耳や鼻、五感全部が朝から刺激された」と話す。なんとも贅沢な体験だ。気持ちにゆとりが生まれる。そして、さらに読み進むと、驚いたことに京都にも「喜心」の朝食専門店があるというのだ。なんという偶然。これは時間を作って必ず行かなければと、心に決めた。

日々の生活の中で、ゆとりを持つために、最近では、週末のどちらかを1日中、仕事をしない日にしようとしてきた。でも、なかなか上手く行かないことも多い。さらに、疲れていると、家の中でダラダラとしてしまう自分がいるのにも気づいていた。それでは身体は休まるものの、気持ちのリフレッシュにはならない。欲していた「ゆとり」とも違う気がしていた。一方で、週末を利用しての丹波篠山でのタイニーハウスづくりや木工はとても良い。自然と触れ合う中で、気持ちのリフレッシュにつながる。でも、往復3時間。そうそう何度も行けない。もう少し日常にしやすい「新しい習慣」を求めていたのだ。

そうだ、ゆとりのある贅沢な朝ご飯を習慣の1つにすればいいのだ。地場の新鮮な野菜やお米で丁寧に作り上げた食事は最高だ。ゆったりとくつろげるようにしつらえた空間が気分をさらに高める。何より料理が染み入り、身体にもいい。これなら心身共に安らげる。改めて、日本の文化、京都の文化にも触れられそうだ。記事の冒頭には「食文化は社会を映す鏡といわれる」とある。ゆとり溢れる優しい社会にすべく、周囲を巻き込みながら素敵な朝ご飯の習慣化に挑戦してみたいと思った。

最後に、朝食に纏わるもう1つの話題に触れておきたい。「ワールド・ブレックファスト・オールデイ」というお店の話だ。店名からわかる通り、各国の食文化に触れて欲しいとの願いの下、世界の朝食を提供している。約10年前にオープンした店だ。すでに50カ国の朝食を提供してきたようだが、どの朝食も日本向けのアレンジはなし、現地に近い味の体験にこだわっている。これ以外にも朝食を大事にする店はある。五反田駅の側には台湾の定番朝食を扱う店、東京駅にはタイ料理の朝食の店がある。探すともっと出てくるだろう。ほぼ毎週、東京にも立ち寄っているので、ぜひ京都のゆとりの朝食に加えて、東京では多様性の朝食の体験もしてみたいと思う。ゆとりと多様性は、とてもいい組み合わせだ。これからの日本を考える上で重要だと思う。朝食という日々の習慣の中でしっかりと向き合っていきたいと思った。

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