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Clubhouseの「立ち話」で生まれるオンライン・セレンディピティ

ここ1、2週間で大変話題となっているClubhouse。これについては先日私も最初の印象をCOMEMOに書いた。

要約すれば、Clubhouseはマスメディアに近い一方通行型のコミュニケーションのツールではないのか、ということであるが、その後もしばらく使ってみて、必ずしもそうではない使い方、そして個人的には私が欲しいと思う機能を実現する使い方に気づいたので、今回はその点について書いてみたいと思う。

昨年来のコロナの影響を受けて、オフィスに出向いたり会議室に集まるなど、対面でリアルなコミュニケーションからオンラインが中心となり、例えばzoomやTeamsなどによるミーティングに移ってきている。この中で難しくなっていると実感してきたのが、いわゆるセレンディピティ、偶然の機会を生むことだ。

この記事の中でも、コロナ禍で失われがちなセレンディピティを街の中に見つけに行くというテーマになっていて、裏返せばオンラインでセレンディピティを見つける難しさを反映している。

確かに、zoomやTeamsなどの会議ツールであれば、時間や参加者、テーマ・目的を決めて話をするということがどうしても中心になってしまい、偶然は生まれにくい。電話や各種メッセンジャーなどでの通話も、目的がある時に目指す人と会話をするということが中心になってしまうので、やはり偶然を生むことは難しかった。

その意味では、Clubhouseも特定のルームに入ってお目当てのスピーカーの話を聞くことが目的になってしまうと、セレンディピティは生まれにくい。

しかし、Clubhouseには自分がフォローしている人が今どんなステータスであるかということを表示する機能が付いている。これを活用してセレンディピティを生む方法に気が付いた。

フォローしている人のステータス(下の画面キャプチャ)を見ると、ルームで話を聞いているのか、オンラインだがルームに入ってないか、オフラインなのかが分かる。下記の赤丸でOnlineとなっているのが、ルームには入っていない人だ。

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このような状況の知り合いに声をかけて、つまり、右にある+Roomボタンを押してルームに誘うことで、相手が応じれば2人が会話を始められる。この時にはルームの公開ステータスが2人だけの非公開のものとなっている状態がデフォルト(初期設定)だ。右上にロック(錠)マークがついているので、それがわかる。

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これを、ルームを作った後でフォローしている人限定公開またはあるいは全体に公開することによって、思いがけないセレンディピティが生まれることに気がついた。上の画像にある赤丸内のOpen It Upをおし、下の画像の赤枠内のどちらかを選べば、自分(を含むこのルームのモデレーター)がフォローしている人限定公開か、または誰にでも公開するかが選べる。

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2人で喋っていても、そこに自分たちがフォローする人が通りかかってルームを覗いてくれれば、その人も発言者にすることで3人(以上)で会話をすることが可能になる。そうすると、元々話し始めていた2人は知り合いだとしても、もう1人の通りがかりの人はどちらか一方の人とは知り合いではないということが起きる。そうすれば偶然の会話のチャンスを自分以外の2人に作ることができる。自分が通りがかりで誰かが喋っている所に入れば、同様に自分が初めての人と知り合う機会になる。

少人数のルームであればこれに近いことはできるが、ルームを作るとなるとやはり少し準備が必要になり少々ハードルが上がってしまう。教科書的な手順でいえば、ルームの開始時刻を設定し誰と何をテーマに話すかを決めてそれを登録することが必要になるからだ。

一方で、この方法であれば、テーマを設定することもなく、Online表示の相手を見つけたその時に、気軽に声をかけて2人で話し始めるというただそれだけなので、ハードルはかなり下がるのではないだろうか。もちろん、相手が話せる状況にあるとは限らず、ルームに入ってきてくれないことも少なくないから、ダメでもともと、という気持ちでいることは重要だ。また、ルームに入ってきてくれた人を、すぐに発言者にすることもポイント。ゆっくりしていると、立ち去られてしまう可能性も高い。

実際に、こうして自分の知り合いと喋っている時に別な知り合いが入ってきてくれて自分の知り合い同士を紹介したり、また自分が知らない人と話をする機会が生まれたり、という体験をしたのだが、これが非常に実りのあるものだった。

現実のイベントになぞらえると、これはどこかのホールで有名な人の講演会があるという状況で、会場として設定されているルームがこのホールの中での講演会に相当する一方で、講演の休憩時間や終了後などにホールの外のホワイエ、いわゆるロビーに出て、そこで知り合いと偶然会って久しぶりに立ち話をするのと似ている。こうしたホワイエでの会話はよくある状況だったと思うし、そこにどちらかの知り合いが通りがかって3人で話をし始める、といったことも、人と人が知り合うセレンディピティとして、一つ典型的なシチュエーションではないかと思う。これが、Clubhouseでは可能なのだ。

Clubhouseでは、有名な人が話をしてそれに対して多くの人が集まるということが実際に起き始めている。例えば、イーロンマスクが登場した時には、ルームの収容人数が上限に達し、つまりは「ホール」がいっぱいになるということがあった。

こうした時に、例えば入りたくても入れないでいる人同士がOnlineでいることを見つけられたら、その人と話をしてみるといったことが可能だ。

セレンディピティは、オンラインでは実現せずリアルでなければ得られないものと考えられてきたと思う。しかしClubhouseはこのような利用法によって、ある種のセレンディピティを生み出しうる、ということがわかった。セレンディピティ・偶然性のなさが、豊かな発想を生み出す障害になるとして、リモートワークを導入しないことの口実になっているのであれば、オンラインでもこうしたことが実現するのだということを示す一つの重要な反証になるのではないだろうか。

Clubhouseを使ったものではないが、オンライン・リモートでもセレンディピティを生むことが出来る手法をカヤック社は見出しているという。

Clubhouseの機能として、お目当ての人やテーマの話を聞きに行くことは、おそらく今後とも主流の使われ方であり、冒頭に紹介した前回の投稿に書いたメディアとしての基本的な構造は変わらないのではないかと思う。そして、Clubhouseがビジネスとして存続していくためには、こうした大勢のオーディエンスを集められる有名なスピーカーによるroomが、マネタイズの重要な柱の一つになるということはあるだろう。

一方でそうした利用方法の周辺で、いわば「ホワイエでの立ち話」に相当する、短い時間で少人数の会話と、そこに生まれてくるセレンディピティにはまた別な面で価値があり、ある意味では有名人が大人数を集めるルーム以上の価値が、一個人ユーザーとしてはあるのではないかと思い始めている。

この使い方が多くの人に知られ、活用されるようになれば、フォロワー数の多少であるとか、あるいは人気のルームに入れないといったことでClubhouseの価値を過小評価せずに済む人もいるのではないだろうか。

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