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複業に立ちはだかる「5つの壁」 #複業の壁

複業研究家の西村創一朗です。

今回の日経COMEMOのテーマはズバリ #複業の壁 ということで、2015年からの5年間で1200人以上の個人の複業、50社以上の副業解禁などを支援してきた中で見えてきた「複業の壁」についてお話したいと思います。

「ん?副業じゃなくて複業?」
「副業と複業ってどう違うの?」

という方はこちらをご覧ください👇

複業は本当に広がっているのか?

「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」のビジョンを掲げ、複業という働き方を広げるべく株式会社HARESを創業した2015年当時は「副業禁止の会社が9割」という状態でした。

その後、2016年にロート製薬が副業解禁したことが大きな話題を呼び、一気に副業解禁の議論が進み、2018年には副業を認める企業が約3割に。

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その後、2018年1月に「モデル就業規則」が改定され、原則副業禁止から原則副業容認になり、あわせて兼業副業のガイドラインが公表され、それまで様子見だった大手企業でも一気に副業解禁の議論が進みました。

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その結果、2019年から2020年にかけてみずほ銀行や三菱地所といった、これまでは副業解禁とはおよそ無縁だった超大手企業でも副業解禁が進んでいきました。

そして、2020年。コロナ禍によってリモートワークが進んだこと、特定の業界の業績が悪化したことでより一層副業解禁が進みました。

その結果、直近の調査ではなんと約5割もの会社が副業を容認していることがわかりました。

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わずか5年で、副業を認める企業が3倍に。これはものすごい変化だと思います。

では、実際に副業/複業に取り組んでいる人は増えているのか?

こちら👆の調査を含め、各種調査によると概ね8割ほどの人が副業に関心を持っていることがわかります。

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他方、「現在副業をしている」人に関しては1割程度。他の調査でもだいたい1~2割程度の方しか副業をやっていません。

8割もの人が関心を持っているのに、実際にやっている人はわずか1割程度。

これは、あきらかに #複業の壁 がある、と言わざるを得ません。

では実際問題、どんな壁があるのかについて、本コラムで解説したいと思います。

複業に立ちはだかる5つの壁

8割もの人が関心を持っているのに、実際にやっている人はわずか1割程度なのは、一体なぜか。

理由はシンプルで、複業をはじめる/つづける上で「5つの壁」が立ちはだかっていて、多くの方がそれを越えられず、複業をはじめられない/つづけられないのです。

一つずつ、簡単に解説していきます。

複業の5つ壁

第一の壁:組織の壁

まず最初に立ちはだかるのは「組織の壁」です。

「わずか5年で、副業を認める企業が3倍に」と書きましたが、裏を返せば「まだ5割もの企業で副業が禁止されている」ということになります。

副業禁止の会社でもお構いなく「伏業」している人もいますが、副業禁止の会社で副業をやる、というのはなかなかハードルが高いのも事実です。

また、会社が副業解禁を発表するなど、ハード面(制度面)で副業がOKになったとしても、会社のカルチャーや価値観はそう簡単には変わりません。会社のトップや人事がOK、と言っていたとしても直属の上司や管掌役員が「副業なんて本業に支障をきたすので辞めるべき」など、副業に対して否定的な価値観を持っている場合、なかなか「複業(副業)をやりたいです」と言うのは難しいですよね。

第二の壁:意識の壁

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次に立ちはだかるのは「意識の壁」です。

いわゆる「マインドセット」ってやつですね。個人的に、最も重要(というか根深い)のがこの「マインドセット」だと思ってます。

「複業」って、本質的には「商売そのもの」なんです。

「商売」(Business)たるもの、以下の①から③までやりきって、はじめてお金を頂けるものなんですよね。

①価値のある商品(サービス)をつくる/仕入れる
②商品(サービス)を買っていただく
③商品(サービス)をお届けして、対価を得る

ところが、ほとんどの人は「商売」をしたことがなく、「雇用されて給料をもらう」という稼ぎ方しか経験していません。

月給制/年俸制の会社員にせよ、時給制のアルバイトにせよ、「雇われる働き方」の場合は、月給〇〇万円/時給〇〇円など、定められた賃金の範囲で、労働の対価がほぼ確実かつスピーディー(遅くとも労働した月の翌月)に支払われます。

ところが複業=商売はそうはいきません。

たまたま即売れる商品・サービス(メルカリで売れるモノや、ニーズの高いスキルなど)が手元にあって、すぐにお客さんが見つかりさえすれば、早ければ即日・翌日に売上を上げることができますが、多くの人は①価値のある商品(サービス)をつくる/仕入れるところからスタートする必要があり、③の対価を得るフェーズに行くまで、一定期間を必要とするケースが多いです。

僕も複業はじめた当初は「50時間働いて62円の売り上げ」でしたからね(笑)

「労働は、確実かつスピーディーに対価を得られるが、その分大きな成果を上げたときのリターンは小さい」
「複業(=商売)は、対価を得られるかどうかは不確実かつ時間がかかる可能性があるが、その分大きな成果を上げたときのリターンは大きい」

という、「労働」と「複業(=商売)」の違いを理解せずに、「複業(=商売)」で、確実かつスピーディーに対価を得ることを求めてしまうと、「あれ、これ無理ゲーじゃない?」と思考停止に陥ってしまい、平日の早朝/夜間/土日祝日でもできるアルバイト型の副業を探し始め、時給の金額を見て「これじゃ割に合わない!」と絶望してしまうのです。

「対価を得られるかどうかは不確実かつ時間がかかる可能性があるが、その分大きな成果を上げたときのリターンは大きい」という商売の原理原則を理解していれば、仮にすぐにお金になるようなスキルがなくとも、収益が上がるまでの期間を耐え忍ぶことができるのですが、「労働型」のマインドセットのままではなかなか複業に踏み出せないし、踏み出せても続かないのです。

「ラクして痩せたい」という願望を持っている人は一生ダイエットに成功できず、世に溢れるダイエット商材の養分になり続けてしまうのと同じように、「ラクしてスグに稼ぎたい」という意識(マインドセット)では、なかなか難しいでしょう。

この「意識の壁」を超えることができない人が非常に多いのです。

第三の壁:スキルの壁

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続いてはこちら。スキルの壁。

「意識の壁」でもお伝えしたとおり、複業(=商売)をカタチにする上には、何らかのスキルが必要になってきます。

プログラミング/デザイン/ライティング/動画編集/写真撮影etcといった「わかりやすいスキル」はもちろんのこと、占い/キャリア相談/お料理/キャンプ/サウナetcといった趣味の延長線上にあるようなものでも、「人の役に立つ知識やノウハウ」があれば、それは立派なスキルなのです。

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とは言うものの、明確にニーズがあり、市場価値が高いのは、本業で培った経験・スキル・専門性を活かして行う「プロ型」の複業です。

ところが、みなさんご存知の通り日本企業の多くは「ジョブ型雇用」ではなく「メンバーシップ型雇用」をとっていて、数年ごとにジョブローテーションを行うなどして、スペシャリストではなくゼネラリストを育成する方針を取る企業がほとんどです。

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その結果、複業ができるレベルの専門性を持っている方はごくごく一部の専門職の方で、「その他大勢」の総合職・一般職の方は、胸を張って「私は〇〇のプロフェッショナルです!」と言い切れるような「わかりやすい専門性」がなく、「一体どんなスキルを武器に複業をすれば良いのか?」がわからず「複業迷子」になってしまうのです。

この「スキルの壁」を乗り越えるためには、

①ニッチだがニーズのある分野のスキルを磨いてニッチトップを目指す
②異なるスキルをかけ合わせてオリジナルなポジションを築く

などといった方策があるのですが、詳しい話はまた別の機会に。

第四の壁:有料化の壁

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4つ目に立ちはだかるのはこちら。有料化の壁。

本業などですでに十分な成果を上げており、実績・信頼ともに十分!というケースであれば、すぐにしっかりお金をいただいて複業ができるケースもありますが、「スキルの壁」でも書いたとおり、そういうケースは稀です。

実績・信頼がまだ十分でない場合は、まずは無料(またはワンコインなど格安)でサービスを提供して、まずは「貯信」(信頼や実績を貯める)に徹するのもオススメです。

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もちろん、「永久無料」ということではなく、👇のツイートの通り、アマチュア(無料)→セミプロ(格安有料)→プロ(有料)というステップを経て、徐々に有料化していく、というのがセオリーです。

・・・って、セオリー(正論)を言うのは誰にでもできるのですが、無料(または格安)で提供していたものを有料化する、というのはやはり抵抗があったり、ハードルが高かったりするものです。

このハードルを乗り越えるためには、「無料(または格安)でサービスを提供するのは期間限定(◯ヶ月限定/初回◯人限定)」としたり、「価値に自信を持って提供できると確信できるまでの試作品(β版)に限り無料とする」といった形で、ここまでは無料/ここからは有料という境界線を自分なりに設定する、という方法がオススメです。

第五の壁:時間の壁

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最後に待ち受けるのはこちら。「時間の壁」です。

スキルの壁・有料化の壁を越えて活躍中の「売れっ子複業家」の方も、なかなか越えられないのが「時間の壁」。

✔時間に余裕のある時に複業をはじめてみたものの、本業が忙しくなってしまったり、子どもが生まれて家事・育児で忙しくなってしまったことによって、複業に割ける時間がなくなってしまった。
✔複業が軌道に乗った結果、たくさんのオファーや依頼をもらえ、全部引き受けた結果、多忙を極めてパンクしてしまった。

みたいなケースは枚挙にいとまがありません。

この「時間の壁」を乗り越えるための方法は、「時間は1日24時間しかない」という制約がある以上、「セルフ働き方改革」をするしかありません(笑)。

こちらについては『複業の教科書』の中でも一部触れていますが、ECRSフレームワークや辞書登録機能をフル活用したり、ショートカットキーをマスターすることで乗り越えていくしかありません。

もちろん、人生においては「集中と選択」が必要な局面はあります。「全集中の呼吸」で本業に120%フルコミットしたり、家事・育児などプライベートなミッションに専念すべき、というタイミングですね。

かく言う僕も、念願かなって新規事業部門に異動でき、新規事業が佳境を迎えたタイミングでは、半年ほど複業を完全ストップしていた時期もありました。

複業の場合、クライアントに迷惑さえかけなければ、自分の裁量次第でいつでもストップ/再開できるからこそ、「時間の壁」にぶち当たった段階で、人生の「最優先事項」を見つめ直して、複業の優先度が低ければ一旦ストップしてしまう、というのも一つの手ですよね。

逆に、人生の優先順位の中で、複業で取り組んでいることの優先度が高ければ、本業を週5日勤務から週3~4日勤務に減らし、複業に割ける時間を増やす、という手段もあり、実際にそうした働き方にシフトする方は、まだごく一部ではあるものの、じわじわ増えていると感じています。

まとめ:あなたはいまどの「壁」にぶつかっていますか?

以上、「5つの壁」について、それぞれ簡単にまとめてみました!簡単に、と言いつつ5000文字近くなってしまいましたが、もしこれを読んでくださった方が「なかなか複業の第一歩を踏み出せない」「複業に行き詰まりを感じている」と感じているとしたら、「自分がいまどこの壁にぶつかっているのか?それをどう乗り越えて行けばよいのか?」を考えるヒントになっていたら嬉しいなと思います。

一つ一つの壁は手強いですし、壁を乗り越えたらまた次の手ごわい壁があらわれるので「ハードモードなゲーム」をプレイしている感覚に陥るかもしれませんが、壁を乗り越えた後に得られる達成感や、得られる報酬(金銭的な報酬はもちろん、経験報酬やつながり報酬など非金銭的報酬も含め)はひとしおなので、ぜひめげずに向き合って、乗り切っていただきたいなぁ・・・!と思ってます。そのための支援は惜しまないので!(いつでもTwitterのDMやLINEで連絡ください!)

以上、「複業に立ちはだかる5つの壁」でした!

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お知らせ:12/22(火)19:30〜 複業について、YOUTRUST岩崎由夏さんと日経編集委員さんとトークライブ@Zoomウェビナー!

株式会社YOUTRUST代表取締役の岩崎由夏さんと僕をゲストにお招きいただき、日本経済新聞社の石塚由紀夫編集委員がファシリテーターを務めるオンラインイベントが12/22(火)19:30〜@Zoomにて開催されます!投稿募集で寄せられたものと、当日のZoomチャットを起点にトークを展開します!

このイベントは日経本紙「働き方innovation」面で毎回展開しているテーマについて、視聴者参加型のインタラクティブなライブにより、さまざまな視点に触れ、理解を深めるのが狙いです。

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お楽しみに!

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