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中堅・中小企業のDXは、事業成果に真正面から取り組むべき

米企業のDX投資が急加速しています。昨年、2020年10~12月期の情報機器投資は前年同期比で、18%増えています。これは約10年ぶりの伸び率となりました。

その結果、生産性が高まり、人件費を半減させた業界も出てきています。

例えば、宿泊産業では感染防止目的でDXによる省人化が急加速しています。ラスベガスに拠点を持つカジノホテルチェーン「MGMリゾーツ・インターナショナル」は、スマートフォン用アプリを開発し、チェックインから電子キーの発行、精算まで全面自動化しました。

米調査会社によると、全米のホテルの1部屋あたり人件費は44ドルまで下がり、前年の85ドルから1年間で、ほぼ半減したそうです。さらに、21年も自動化の流れは止まっていません。

大手企業であれば、豊富な資源を投下して、このような華々しい取り組みが可能です。しかし、資本力の限られる中堅・中小企業であれば、どのようにDXに取り組み、成果を上げていくべきなのでしょうか。

DXは手段に過ぎない

大前提として、データや情報機器などへの投資は、特定の目的を達成するための手段に過ぎません。何を実現するための手段なのか、真正面から捉えて評価することが大切です。

これは当前の観点ですが、多くの企業がここでつまずきます。バズワード、例えば「ERP、ビッグデータ、AI」などに取り組み、明確に成果を上げている企業は多くはありません。

この難しさを実証的に教えてくれる良著があるので、ぜひご一読ください。

「DXは長期利益のための競争優位を構築する手段の一つに過ぎない。稼ぐための戦略ストーリーをはっきりさせることが先決で、戦略の中に位置づけてはじめてDXは意味を持つ。DX抜きに儲かる商売であれば、DXを推進する必要はない」と書かれています。

経営陣から「DX推進」が特定部門に命じられ、目的が曖昧なまま「DX推進」が必達の目標となり、推進すること自体が目的になってしまうことが原因です。

AIもDXも、確かに手段として有用ですが、あくまで手段に過ぎません。「目的→手段」の筋を通すていくことに経営の役割と責任があり、目的が出発点になるべきです。

資源が限られる中でのフォーカス

コロナ禍やデジタル化の進展により事業環境が大きく変化する中、あらゆる企業にDX投資を考察する必然性が発生しています。

しかし、投入できる資源が限られる中で、曖昧に大きな範囲でDXを推進することはできません。事業成果を創出するために「売上向上または費用削減」のどちらに取り組むのかを明確にしなければなりません。

大企業との良い違いは機敏さです。一気呵成に目的遂行を実現を目指します。速度を上げるためには、さらにフォーカスを効かせる必要があります。

次に考えるのは顧客の選択です。顧客の多様化が進む中で、売上や利益向上の余白、費用圧縮の可能性、デジタル技術との親和性の観点から、集中的に取り組む顧客を決定します。

ここでデータ解析を行っても良いのですが、大手が取り組むような、あらゆるデータを新たに収集し、多角的な分析を目指すのではなく、既に入手している既存のデータを、四則演算や中央値といった基礎的な情報処理によって状況を把握していきます。

それだけでも、意思決定を支援することは可能ですし、あらゆるデータを無目的に集めることによる混乱とは無縁でいられます。

最後に、選択した顧客への「提供価値そのもの(製品やサービス)」、「販売方法」、「サポートや関係性の在り方」の3領域の中から、注力すべき領域を選んでDX投資を実行します。そして、自社開発にこだわらず、既成のソリューションを活用しながら、小さな予算で活動を開始していきたいところです。

限られた資源を分散させず、成果創出可能性の高い領域に集中的に取り組んでいくことで、ステップを踏んで事業成果を明確に創出していければ、たとえ小さな企業であっても、DX投資を成功させることはできるはずです。

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