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「複業ブリッジ」をかけて理想のキャリアを実現しよう #複業の教科書

今月からスタートしている『複業の教科書』#全文連載

好評発売中!の『複業の教科書』を毎日連載するカタチで全文公開中です。

前回、第11回はコチラからどうぞ。

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「誰にでもできるけれど、誰もやらないこと」を見つける

 このとき、僕がやっていたことは決して難しいことではありません。

 むしろ、世の中にすでにある情報を拾って編集するだけという、誰でもできることだったと思います。

 でも、誰もやっていなかった。

 きっと、ちょっとの手間と時間がかかることだったからでしょう。

 でも、ほんの少し自分にハッパをかけて、その小さなハードルさえ越えてしまえば、新人の僕でも「誰もやっていない価値を生み出せる人間」になれる。

 これは僕にとって、大きな成功体験となりました。

 もう一つ、僕が配属初日に実行したことがあります。

 それは、インターネット業界に関する本を10冊ほど読み、そのエッセンスをまとめて、「ネット業界を知る7つのキーワード」というパワーポイント資料を作って上司に渡したのです。

 そして、こう付け加えました。「この資料をもとに、部内で勉強会を開催させてください」。

「日刊創一朗」が日替わりの〝フロー型情報発信〟だとすると、これは定型の資料をベースにした〝ストック型情報発信〟です。

 以降、多いときで週に1回のペースで部内で勉強会を主催して人前で話しながら学ぶ場を踏み続けて数カ月、だんだんと「西村の勉強会はわかりやすいし役に立つ」と評判になりました。

 すると、他部署からもオファーをもらい……と、僕自身が「アウトプット⇄インプット・サイクル」を回す絶好の機会がつくられていきました。

複業のコツ4:自分の強みを活かして「キャリアタグ®」をつくる

 そのうち、他部署のメンバーから「個別に聞きたいことがあるから、今度ランチさせてよ」と誘われたり、「はじめまして。インターネット業界について質問なのですが……」と面識のない人からメールをもらったりと、ありがたいことに、1年目の新人の僕の社内認知度は急速に上がっていきました。

 メルマガと勉強会によって「インターネット業界といえば西村」という存在として認知されたことで、一気に社内ネットワークが広がっていったのです。

 プロノバ代表の岡島悦子さんは、個人の成長戦略において「○○といえば西村」といった〝キャリアタグ®〟を備えていくことの重要性を説き続けています。

 このとき、まさにこのタグ付け効果が、僕が立っていたステージを押し上げてくれた実感がありました。

 ここで強調したいのは、「日刊創一朗」も勉強会資料も、僕が無理なくできることだから始められたという点です。

 第3章でも紹介した「ストレングスファインダー」を、あなたは受けたことはあるでしょうか? 実は、僕はこれを学生時代に受けていて、一番の強みとして弾き出されたのが「収集心」でした。

 つまり、情報を集めるのがオタク的に好きで得意なのです。さらに集めた情報を独自の視点で編集し、それに対して何を思うのか、自分なりのコメントをするという力も意識的に鍛えてきました。

 話をグルッと、ブログを始めた時点にまで戻すと、これらの情報発信の成功体験があったので、僕にとって「本業以外でできる事業開発トレーニング」としてブログを始めることは、「今日からでも始められる」と思えるくらいのことだったのです。

「そう言えば、先輩からも『西村が送ってくれるやつ、面白いから社内だけじゃもったいないよ。社外向けにも何かやれば』と言われたしな」

 それくらい自然な流れで、スタートできることでした。僕にとっては。

 逆に言えば、ブログは「誰にでもおすすめできること」ではありません。

 人それぞれ、無理なく始められることは違う、と心得てください。

 ということで、入社3年目の5月に西村創一朗のブログメディア「NOW OR NEVER」はスタートしました。

 僕にとって、入社して以来初めての社外に向けた情報発信活動です。

 目的は事業開発のトレーニングだったので、やるからにはきちんとやりました。コンセプトに合ったブログタイトルを決め、ロゴデザインもプロに発注しました。

 個人が全世界に向けて発信できるマイクロメディアとして、どういうターゲットに、どういうコンテンツを、どういう記事タイトルで配信すれば読んでもらえるのか。

 例えば商品紹介をした時には、どういう文脈でどういう位置づけで紹介した時により売れるのかなどなど。

 ひたすらPDCAサイクルを回しながら、本業では得られない学びの場を自分で開拓していきました。

 実践から得られる学び、それも、ずっとやりたかった事業開発についての学びが得られることが面白くて、毎日の通勤時間を濃密に過ごしていました。

 当時の記事には例えば「毎日定時に帰りたかったら、辞書登録機能を使い倒しなさい。」「日経新聞電子版を解約して、NewsPicksで定期購読をはじめてみた結果。」といったものがありました。

複業でやりたい部署に移るチャンスが得られる

 ブログを続けて数カ月経つ頃には、「営業部門にいる入社3年目の西村っていうヤツがブログをやっていて、結構面白いらしい」と社内でも知られるように。

 そんなある日、新規事業開発部門の担当役員とランチに行く機会を頂きました。役員としても情報収集のつもりだったのだと思いますが、話の終盤、ついに僕が待っていた問いが降ってきたのです。

「創ちゃんさ、これからどんなことをやってみたいの?」
 僕は、すかさず答えました。
「新規事業開発をぜひやりたいです。例えばこんなアイデアを考えています」

 僕の意見を面白そうに聞いてくれた役員は、僕のことを覚えてくれていて、その後新規事業開発に特化した部署をつくる際、僕を社内ヘッドハンティングしてくれたのです。

 念願かなって入社4年目の4月、複業を始めてから11カ月後に、僕は新規事業開発部門へと異動することができました。

 絶対に飛び移れないと思っていたハシゴへ、……飛び移れた!

 そのことに誰よりも僕が驚いていました。

 気づけば、「営業部門で3年鍛えてもらった後に事業開発部門に異動したい」という当初の願い通りのキャリアコースに進んでいたのですから。

 交わることのないハシゴとハシゴをつなぐブリッジになってくれたもの。それがまさにブログという社外活動=〝複業〟だったのです。

 僕が複業の素晴らしさを全身全霊で訴え続ける背景には、複業によって僕自身のキャリアが大きく方向転換されたという体験があるのです。

複業のコツ5:半径5メートルのニーズを聞く

 このように話すと、僕の体験は、たまたまうまくいった成功談のように聞こえるかもしれません。

 でも、最初の最初まで遡れば、僕がやったことは「誰にでもできるけれど、誰もやっていないこと」でした。

 そして、そのアクションの範囲も社内の自分が所属する部署の中で始めるという、非常に狭い世界でのスタートです。

 実は、これこそが〝複業こと始めの極意〟。複業を始めるコツを聞かれたら、僕はとにかく「半径5メートル以内のニーズを聞け」と伝えています。

 その円を描く場所は、本業の社内であるのがベターです。

 なぜなら「同僚」という立場はほどよい距離感で、的確なフィードバックをくれます。お互いに仕事で成果を出したい関係性なので、本当にいいものは「役立ったよ」と評価しますが、足りない点については「もっとこうしたほうがいい」とアドバイスをくれます。

 社内で評価された後に、「それは社外でやっても喜ばれるんじゃないの?」と言われるようになったら、チャレンジの幅を広げるときです。

 つまり、とても着実なステップで、複業の準備ができるのが〝社内複業〟のメリットです。

目の前の仕事を工夫することが、複業につながることもある

 この「半径5メートル理論」について深く頷いてくださったのは、〝プレゼンの神〟として知られる日本マイクロソフト業務執行役員の澤円さんです。

 数々の大型案件を決め、現在はプレゼン指導の依頼が殺到する澤さん。

 その澤さんが、プレゼンの第一人者となる道のりも、実は極めて狭い範囲での一歩からだったそうです。

 前職の会社でシステムエンジニアとしてキャリアをスタートさせた澤さんは、「文系出身でITのことが分からない自分のための自主的勉強をするしかなかった」と言います。

 そして、難解な用語を自分にとって分かりやすい言葉に変換しながら勉強してきた結果、社内で「あいつの説明は分かりやすい」と評判になったのです。

 1997年にマイクロソフトに転職してからは、説明に行った先のクライアントに「今の話が面白かったので、うちの上司にもう一度プレゼンしてください」という展開が頻発し、社内でのカンファレンスに登壇する機会も増えていったそうです。

 その場で評価される社内プレゼンスコアで上位の常連になっていたという澤さん。

 いわく、「僕自身が元素人だったので専門用語は使わず、どうやったら分かってもらえるかだけを考えていたんだよね。何を話すかよりどう話すかを大事にしていたから、『分かりやすい』と思ってもらえる人が多かったのだと思う」。

 ここまでは社内での活動に収まっていた澤さんですが、同じカンファレンスに登壇していた同僚の女性から、「私の夫が立ち上げた教育系の団体でプレゼンのセミナーをやってくれない?」と頼まれたのがきっかけで外部提供デビュー。

 そこから書籍出版やメディア出演など、活躍の場がメキメキと広がっていった――。

 そんな話を僕にしてくださいました。

 〝プレゼンの神〟のはじめの一歩が、半径5メートルどころか「自分のため」の勉強だったというのは、とても勇気づけられるエピソードです。

 以上、複業の実際のプロセスをたどると、意外なほどに身近な印象を受けるのではないでしょうか。

 そう、誰にとってもチャンスはある。そのチャンスが隠れている場所は〝遠くのどこか〟ではなく、あなたの〝すぐそば〟なのだと覚えていてください。

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