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AI・デジタル化は、新しい仕事を生み出すと安心して良いの?〜ある経済学者の指摘〜

 先日、ある工学博士とお話をする機会がありました。その研究者の方は、5Gなど情報通信インフラをベースにしたネットワーク型自動運転技術や、そこで入手したデータを軸にサービス最適化などについて実証研究を行なっている方です。その先生の、ある発言が気になりました。

「デジタル化やAIサービスは効率化を生み出す物ものであって、雇用創出には新ビジネスを生み出す土壌がないとな‥」

*最近のAI・デジタルへの論調

 2017年頃は、AIが人間の仕事を完全奪うなど極端に論調が目立つようになりました。その反動なのか、最近はAIやデジタル化は、過去の産業革命のように新しい産業を生み出すきっかけになるし大丈夫!と、極端な楽観と悲観が行ったり来たりしているような印象があります。上記の先生の言葉は、極端な楽観や悲観に陥るのではなく、AIやデジタル化を人間が進んで導入しているのは経費削減や人件費削減という効率化もベースにあることを認識しつつ、その経費効率以上に雇用創出をするビジネス創出がないと、私たちの働く口の未来が見えにくいことを示しているのかもしれません。

*経済学の視点でAIと雇用の関係を考える

 上述の話は、私の抽象的なイメージの世界の話にしか過ぎません。この考えを、学術研究などで数理モデルや社会に汎用性のある形で昇華をしないと、今後の未来予想には活かせません。そこで、AIと雇用の関係に関する研究で世界的にも有名な、MIT大学のDaron Acemoglu教授の論文を覗いてみました。この方は、マクロ経済学分野で非常に有名な方で、AIやデジタル化を巡る経済への影響についても多数の論文を書かれています。次期、ノーベル経済学賞候補の1人とも言われています。そして、私の課題意識とぴったりの論文を見つけました。

The Wrong Kind of AI? Artificial Intelligence and the Future of Labor Demand, Daron Acemoglu, Pascual Restrepo, NBER Working Paper No. 25682
Issued in March 2019

この論文のAbstractを、論文内の言葉を一部加えながら訳すと、とてもロジカルな表現で今のAI・デジタル化の課題が記載されています。つまり、雇用創出に繋がるビジネスチャンスもあるはずなのに、効率化ばかり進化しつつあると‥。この先生の別論文では、AI・デジタル化の生産性速度より、賃金低下圧力の方が高いなんて指摘も。

人工知能は、私たちの生活のあらゆる側面に影響を与えるように設計されている。技術プラットフォーム(画像処理・翻訳・マッチングなどを提供する)としてのAIは、これまで労働者が行っていた作業を自動化したり、人間を生産的に雇用できる新しい作業や活動を生み出したりすることができる。しかし、最近の技術変化は自動化に偏っており、労働者を生産的に雇用できるような新しいタスクの創出に焦点を合わせていない。この選択の結果、労働需要が停滞し、国民所得における労働分配率が低下し、格差が拡大し、生産性の伸びが低下している。現在、AIはさらなる自動化の方向に向かっているが、これはより良い経済的・社会的成果をもたらす「良い」タイプのAIの可能性が見過ごされていることを意味する。

さて、社会はどう変化していくの‥AI・デジタル化の波の中でも社会に恩返しができるよう、私も精進!

 ちなみに、この翻訳はAI翻訳でお馴染みのみらい翻訳をベースに、私が修正を加えたものです。いやー、AIデジタル化って便利だし、ツール以上の付加価値を出すよう精進しないとと、私も更に精進したくなります。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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崔真淑(さいますみ)

*イラストは、崔真淑著『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』(大和書房)より。おかげさまで1万2千部突破。イラストの無断転用はご遠慮くださいね♪


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