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映像作品から学ぶ、ポップミュージックと社会

音楽フェスと歴史、アーティストと政治、音楽業界とメンタルヘルスなど、音楽と社会のつなぎ目が最近大きく浮き彫りになっている。このような音楽業界の裏事情や歴史について触れているおすすめの映画やシリーズをここでは紹介したい。

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー 

大失敗に終わった「超豪華な音楽フェス」の計画と実行、そして後始末を追ったドキュメンタリー。「SNS映え」を求めた若者たちを詐欺に陥れた主催者側の暴走や地元住民たちや参加者の苦悩なども描かれており、昨今のフェスやオリンピックの話題とも結びつきやすい。HULU版では、ミレニアル世代特有のライフスタイルに焦点をあて、フェスの注目度が高かった理由などを探っている。

AMY エイミー

エイミー・ワインハウスの死後に公開され、彼女の薬物依存やアルコール乱用、自傷行為、摂食障害、恋愛関係や家族関係の問題などを取り上げることで、今後エイミーのように命を落とすアーティストを一人でも減らすために音楽業界やメディア、ファンがどう向き合っていったらいいのか、問題提起を強く突きつけてくる。

HOMECOMING ビヨンセ・ライブ作品


2018年のコーチェラ音楽祭で行われた、ビヨンセの歴史的なパフォーマンスを記録したNetflix作品。巨大なステージに200人以上のマーチングバンド、ダンサー、シンガーを動員し、2時間のパフォーマンスを展開した。今までの「フェスの常識」をひっくり返し、「ビヨンセにしかできない」奇跡を成し遂げるまでの軌跡をたどる。

世界は少しぼやけている

「有名になること」に対する葛藤や、複雑でリアルで常に変化しているティーンの姿が生き生きと映し出されている。ビリー・アイリッシュが自分自身のストーリーを自分の言葉で取り戻すために、あえて多くのことをオープンにしているとも受け取れる。まさに2021年的な、自由で人間的なポップスターの姿が映し出されている。

ミス・アメリカーナ

テイラー・スウィフトが自分の言葉で政治や社会問題に言及するに至るまで、出来事と考えの軌跡を追ったドキュメンタリー。音楽業界の問題点やスタートしての社会的責任について、彼女がどれほど考え続けているかを時にユーモラスに、時に真剣に語る姿に、さらにリスペクトが湧く。

サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)

「サマー・オブ・ソウル」、昨今のフェスの騒動と並行して観るべき。
参加者は「音楽を楽しむためだけじゃない」と発言し、連帯や政治参加、エンパワメントを目的とした歴史的な出来事。音楽やファッション、アートや文化がいかにしてたくさんの人の心を動かし、社会や政治に影響を与えていけるか。1969年にコンサートが開催された際の社会問題が現在でも同じように続いているように、フィルムに映る人々の「自由を求める」悲痛な叫びは、現代にも強く響き渡るだろう。

This is Pop

フェスの歴史に関しては、Netflixの”This is Pop”がとても良かった。なぜ人間は集まって音楽を聴きたいのか、どのようにして各国のフェス文化が形成されたのか、現代に至るまでの成功(グラストンベリー)や失敗(ウッドストック99)などを網羅するエピソード。

Song Exploder

ヒット曲が誕生するまでの家庭をアーティスト自身が語るシリーズ。歌詞の本当の意味や曲を作った経緯、レコーディングの作業など、裏方の仕事も垣間見ることができる。

メイキング・オブ・モータウン

ブラックミュージックとポップミュージックの繋がり、そして現代的なプロデューサー・アーティスト・マネジメント・レーベルといったチームづくりの基礎を築いたモータウンの歴史について詳しく知ることができる、今年最も感銘を受けたドキュメンタリー。より多くのマジョリティに受け入れられるために恋愛の曲だけを歌うスタンスから、当事者として語らなければならない人種差別や政治問題などについて歌うまで、アメリカ社会と世界の音楽史に大きな影響を与えたアーティストたちの歴史を学べる。

Woodstock 99

サマー・オブ・ソウルと同じ年に開催されたウッドストック69のリバイバルという名の下で開催された「資本主義の祭典」。いかにして不純な動機で開催されたフェスティバルが社会的に悪影響をもたらすか、そして主催者の「意図」がいかにして参加者に伝わり、マナーや態度に反映されるか、恐ろしいほどリアルに、如実に現れた悪夢のようなイベントについて。愛と平和をもとにして主宰されている音楽フェスティバルの理念や参加者たちの健康と参加する意味について、何度も考えさせられる。

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