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結婚しようがしまいが誰もが一人に戻る【コラム01】

先月、国立社会保障・人口問題研究所による「日本の世帯数の将来推計」の最新版の発表があり、「2040年には全世帯の39.3%、約4割が単身世帯になる」というニュースが話題となりました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25620520S8A110C1EA4000/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25620520S8A110C1EA4000/

4割といわれると多いと思われるかもしれませんが、すでに2015年の時点で34.5%ですから、実はそれほど驚くことではありません。世帯といえば、かつては「夫婦と子」世帯が標準世帯と呼ばれていました。いわゆる核家族です。しかし、その「夫婦と子」世帯はすでに2010年時点で単身世帯の世帯別構成のトップの座を譲っており、ちっとも標準ではなくなっています。そういう意味では、単身世帯の一人暮らしこそが今や「日本のスタンダード」と言えるわけです。

ちなみに、現時点においても、日本は単身世帯数で言えば世界の3位という「ひとり暮らし国家」です。総人口ではメキシコに抜かれ、世界のベストテン国から陥落。世界11位の人口国になった日本ですが、単身世帯の数は人口1位約14億人の中国、人口3位約3億のアメリカに次ぐのです。単身世帯国家というと北欧のスウェーデンやノルウェーの方が多いイメージがありますが、人口の絶対数から言えば決して多いとは言えません。

申し遅れましたが、僕は、独身研究家という肩書きの通り、主に未婚・離婚に伴う独身生活者(ソロ生活者)を研究しています。2015年には「結婚しない男たち」、2017年には「超ソロ社会」という本を上梓した他、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・WEBメディアなどで「ソロ社会がやってくる」という論説を展開させていただいています。

少子化や人口減少の原因は未婚化・晩婚化であるとも言われ、ともすれば「国難である」という言葉も聞かれますが、日本のソロ社会化は不可避であり、確実にやってくると考えるべきです。結論から申し上げれば、政府が何をどう対策しようが、この流れを食い止めることはできないのです。

冒頭の単身世帯の話に戻りましょう。

このニュースでは、4割を占める単身世帯のうち65歳以上の高齢者の一人暮らしが4人に1人にも及ぶことを問題視して、特に「未婚の単身高齢者には生活を助ける家族がいないため、国や社会の支援をどうするかの議論が必要」と訴えています。

しかし、ちょっと待ってもらいたい。

なぜ「未婚の単身高齢者」だけが課題とされているのでしょうか。

確かに、日本は超高齢社会です。高齢者の一人暮らしはこれからどんどん増えるでしょう。とはいえ、高齢の一人暮らしになるのは、決して未婚者だけではないのです。むしろ、全体のボリュームとして多いのは元既婚者層です。つまり、有配偶者世帯のうち配偶者と死別したり、離別することによって生まれる単身高齢者層が全体としては多いのです。にも関わらず、単身世帯を生み出す元凶がさも「未婚化が原因である」とミスリードさせるような表現は不適切といえます。

未婚者に対して、「結婚しないと孤独死するぞ」という言い方をする既婚者がいまだに多くいます。しかし、「結婚したとしても孤独死する可能性はある」ということを正しく認識すべきです。たとえ子がいても、同居するとは限りません。結婚して子どもを産み育て、家族という共同体を作れば安心・安定だった時代は、残念ながら過ぎ去りました。結婚したところでソロに戻るリスクは全員にあるし、全員が「ソロで生きる」という覚悟を持つ必要があるのです。

そうした認識がもっとも欠落しているのが、従来の家族モデルに安心しきっている既婚の昭和なお父さんたちです。

ただでさえ、男性は定年退職などで長年勤め上げた職場を離れると「人とのつながり」を失いがちです。そんな中、妻だけに依存してきた夫が、その後、万が一妻と死別や離別してしまうと、虚無感に支配され、引きこもってしまうことも多いのです。それでなくとも結婚後20年以上の熟年離婚数は増加し続けており、今や離婚の2割を占めるほどになっています。決して他人事ではないのです。

現在50代以上のお父さんたち。想像してみてください。

あなたはソロになっても生きていけますか?

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。