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通信オフロード先としての放送波の可能性は?

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、外出自粛が要請され、これに伴って在宅勤務・リモートワークがにわかに導入されるなど、人々のコミュニケーションが、移動して対面で行う(交通に依存する)ものから、通信を利用するものに大きくシフトしている。

例えば、会社のミーティングも、全員が同じ会議室に集まって行うものから、オンラインに大きく移行している。自分の実感としても、会議室などでの対面のミーティングのほとんどがオンラインに置き換わっただけでなく、「zoom呑み」と言われるようなカジュアルなコミュニケーションもオンラインで行われ始め、従来であれば通勤など移動にあてられていた時間を、オンラインでのコミュニケーション時間にあてることも増えた。

また、家庭で過ごす時間が長くなることによって、たとえば Netflix では契約者が大幅に増加し最高益になるなど、オンラインでの動画の視聴も伸びている。

こうした状況で課題になってきているのが、通信のトラフィック(トラヒック)をいかにしてコントロールし、必要な通信品質を確保していくか、ということだ。

例えば、この春から多くの大学が授業のオンライン化に取り組んでいるが、繋がらなかったりあるいはとても遅いといった問題が生じているようだ。

これはサーバー側の問題もあるが、通信のトラフィックが多くなっているために通信スピードが遅くなっているという問題もあるだろう。特に、オンライン授業は、開始時間が決まっていることで、同時アクセスの問題が発生しやすい。

オンライン授業に限らず、筆者がよくアクセスするサイトでも、画像の表示が以前よりも遅くなるなど、通信速度が遅くなっているな、と感じることが最近増えている印象だ。

思い起こせば、2010年代の前半、スマートフォンが普及し始めた3Gから4Gへの移行期には、通信の増大によってデータオフロードが話題となり、携帯電話の通信を wi-fi に負荷分散する施策が積極的に行われていた。これは、いわば通信会社だけで解決しうる問題であった、ということが出来るだろう。

今回、新型コロナウイルスという新たな課題に直面し、「交通」の担っていたコミュニケーションニーズの大部分が「通信」に移動するという、10年前とはまったく異なる社会状況が生まれている。これは通信会社の通信設備等だけで解決するには荷が重く、対症療法にしかならないのではないだろうか。

アメリカでもこの問題が起きているようだ。

解決の方策の一つとして、放送波の活用が出来ないものかと思う。放送波はいわゆる「下り」専用ではあるけれども、多数の人が同時接続しても輻輳(ふくそう)と呼ばれるアクセスの集中による遅延が発生しない。たとえば授業や講演などの動画を、多数の人が同時に見る場合には、この放送波のメリットが活かしうる。

例えば、テレビであればデータ放送であったり、ラジオでも(帯域としては限られるだろうが)見えるラジオなど、放送波の中でも活用しうる帯域が存在しているのではないだろうか。

もちろん放送波が現在活用されている部分を侵すわけにはいかない。また通信機器の対応等も必要になるし、電波関連法規や放送行政等の問題もあるため、簡単なことではないとは承知している。

一方、放送をめぐっては、インターネット時代のテレビ放送の役割やあり方について、十分な議論がされないままに、インターネット以前のスキームが温存されていることもまた事実だろう。また、災害国である日本において、手軽に正確な情報がとれるラジオ放送をどう位置付け活用していくか、ということも、地味だが重要な課題であるように思う。筆者も、日々の新型コロナウイルスに関する情報収集はラジオがメインであり、リモートでの仕事中に、耳をラジオに貸しながら、手はパソコンのキーボードを打っている、ということが多い。

今回の新型コロナウイルス問題が終息したとしても、将来別な伝染病が発生しない保障はないし、それは別としても、AIが搭載されたIoTや広義のロボットが有効活用される前提としても、通信の確保と最適な活用は重要だ。

限りある電波であるだけに、空き帯域を最大限有効活用し、増大を続けている通信需要に対して有効な活用を図っていくこと。5G、あるいは6Gにむけてとなるかもしれないが、放送波を含めた電波活用全体の議論を始め、必要な法制度の整備や行政の方針の再検討が必要な時期ではないだろうか。時間を掛けてでも取り組むべき課題であると思う。

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