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つながりの三角形とその威力

 組織も社会も、人と人とのつながりでできています。このつながりについては、この20年に定量的に科学的な研究が大きく進歩しました。
 我々は特に、人と人との面会を記録できるウエアラブルセンサを2006年に世界に先駆けて開発し、それまで不可能だった「つながりの見える化」を可能にしました。このセンサは名札型をしており、これにより、人と人とのつながりに関する1000万日を越える大量のデータを計測してきました。加えて、幸せや不幸せを定量化する質問紙による調査を行い、幸せな人たちや不幸せな人たちには、つながりにどんな特徴があるのかをデータから解析してきたのです。
 
 人と人とのつながりは、線を描き、線と線がつながり、複雑な網目状の模様を創ります。実は、この模様には、幸せを生み出す大事な特徴があったのです。それが「三角形」です。

 組織図をこの網目模様として見てみましょう。組織図では、上司の下に、メンバー(部下)が繋がっている構造です。これは、上司という一点から放射状に拡がる模様になります。仮に、メンバーがさらに自分の部下がいると、この放射状の模様の端に、さらに放射状の模様が拡がります。本部長、部長、課長、主任、担当というような階層組織では、この放射状の模様が、何重にも拡がった模様を描きます。そして、沢山の人たちが、この放射状の模様によってつながり合っています。
 この模様には、沢山の線が人と人とをつながりあっています。それなのに、この放射状の模様には、決して見られないものがあります。それが実は「三角形」です。
 三角形とは、自分とつながりを持つ二人が、つながっていることを示します。例えば、あなたがAさんとBさんとつながっていたとして、AさんとBさんも直接つながっているのです。
 この三角形の威力については、拙著『データの見えざる手』にも、IT関連の組織の生産性と関係していることを紹介しました。三角形が運をもたらすことを明らかにしました。その後、我々のデータ分析を続けることで、三角形が、実は幸せと直結することが明らかになったのです。
 
 あなたの周りに三角形が多いと、あなたは幸せになりやすく、三角形が不足していると幸せになりにくくなるのです。
 当然、あなたは三角形の不足を避けるべきです。しかし、三角形が不足と言われても、どういう状態を指すかが、わからないかもしれません。
 ここで組織図の放射状の模様を思い出してください。ここには三角形が一つもありません。即ち、この組織のレポートラインに対応する人のつながりの構造こそが、三角形が不足した状態の典型です。
 だから、あなたが幸せになるためには、組織図状の放射状のつながりを越えた、つながりが必要、ということなのです。
 具体的には、例えば、直接の上司と部下という関係だけでなく、斜め上や隣の部署とのつながりです。そのようなつながりは、近くにいる面倒見のいい先輩にちょっと聞いてみることかもしれません。隣の課の話しやすい課長との立ち話かもしれません。
 このような斜め上や横とのつながりによって、三角形ができるのです。そして、三角形は、あなたの幸せや生産性と直結することが、データによって明らかになったのです。しかも、この三角形の威力は業種や業務に関わりない普遍的なことであることがデータから明らかになったのです。
 
 ここで重要なことがあります。このコロナ禍とリモートワークによって、失われたものです。それこそ、このようなレポートライン上にない人とのつながりです。三角形です。
 だから、このコロナ禍で、不幸せになり、生産性が低下している人が多いのです。それは同時に、うつ病のリスクをも高めているのです。
 
 我々は意識して、この三角形を復活させる必要があります。三角形があると、組織のネットワークの中に近道(バイパス)ができます。これにより、一気に、情報の拡散力や支援しあう力が高まります。組織の風通しが一気によくなるのです。

 ある人から別の人につながりをたどって、何ステップでたどり着けるかを到達度(Reach)と呼びます。組織の中でランダムに抽出した、二人が平均何ステップで到達できるかが、組織の到達度になります。上記の三角形が形成されると、この到達度(リーチ)が一気に短くなります。大量の実データを使うことで、三角形の密度と到達度の間には明確な相関があります。
 このリモートワークの中で、我々は、意識して、三角形をつくる必要があるのです。それは幸せと生産性に直結します。
 そして、そのような挑戦によって、このコロナは、変化のための好機となるのです。


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AIと人間社会行動や幸せについて研究しています。これがAIと合わさって大きなな変化をもたらすと考えています。著書『データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』http://amzn.to/1mgfZHF http://bit.ly/Unmhs6