スノーピーク山井梨沙社長が辞任せず、産休をとれる社会にしたい
スノーピーク山井梨沙社長辞任の記事に、大きな衝撃を受けた。とくにその理由が、「これがほんとうに社長を辞任する理由になるのか?」と感じるものだったからだ。
私自身、スノーピークと仕事上の接点も少しあり、オフィスやガレージを柔軟で創造的なキャンピングスタイルにするなど、未来を共創する活動をしてきた。山井梨沙社長と直接面識はないが、これから長期政権を敷いて、ユーザー視点でますます面白い仕掛けをしていくと期待していただけに、今回の決定は残念でしかたない。次の記事を読み返してみても、こんな面白いことを地域で次々生み出す会社が日本にあることを誇りに感じる。
女性に対する文化的圧力
あえて問いたい。山井梨沙社長が男性だったら、同じ理由で辞任に追い込まれていただろうか。
山井梨沙さんご自身は未婚で、好きな人ができて、付き合い、妊娠をした。それが女性だったために、自分自身が妊娠しているので、その事実は隠しようがない。相手は誰だということになり、その人は実は既婚者だったということが判明する。もしこれが男性社長だったら、週刊誌がスクープでもしないかぎり、そもそもこの事実が公表されることもないだろう。
日本では、結婚や家族というものに対する「古い考え」が根強い。極端な「古典的家族主義」は、離婚や不倫、シングルペアレントに対する風当たりとなって、このルールに沿わなかった人をつるしあげる。これだけ少子高齢化が国家の危機であるにもかかわらず、次の記事では、「姓を変えたくないという理由で婚姻の届け出をしない人がいると思う」と回答した人が81.7%に達することを無視し続ける政治への疑問が深まる。
山井梨沙社長の復帰と産休取得を願う
もちろん辞職の決定は山井梨沙社長ご本人がされたとは思うが、この決定をくつがえすことができれば、日本の多様性包摂の推進に大きな力となるだろう。
これまでの日本社会は、ルールにあっているかどうかで判断し、その問題を分析し、批判し、どうせよと命令してきた。これは、NVC(Non-violent Communication:非暴力コミュニケーション)の視点からすると、まさに「判断-分析-批判-命令」という暴力的コミュニケーションの象徴的プロセスと一致する。
日本を多様性包摂の社会にしていくためには、NVCが推奨する、何が起きたかを観察し、そこに生じた感情と、その感情を生み出した心の奥底のニーズ(価値観)を理解しようとする、「観察-感情-ニーズ-リクエスト」という非暴力的コミュニケーションの姿勢が必要だ。
山井梨沙社長が復帰し、その気持ちをNVCのプロセスに沿って語り、私たちも傾聴し、そこから人間をもっと深く理解しようとする姿勢、さらにはその理解に基づき「真に人にやさしい社会」を構築するきっかけになってほしい。それを思ってやまない。