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『ミスター味っ子』に学ぶアート思考

先週末から体調を崩しており、臥せっていたのだが、その際、久しぶりに時間ができたので、『ミスター味っ子』を一気通貫して読んでみた。そこで、気づかされたことがある。独創性やアート思考は、天から降ってくるものでもないし、何か特別な才能を必要とするものでもない。「観察力」と「経験」によるものであるということだ。

味っ子の才能は、観察眼にある

味っ子こと味吉陽一の才能は、素晴らしい。『ミスター味っ子』のストーリーは基本的にワンパターンである。強敵が現れ、料理対決になる。そして、味っ子が、必ず勝つというストーリーだ。このどんな敵でも味っ子が勝つというのが、味吉陽一の才能の素晴らしさである。もう少し、ストーリーを詳細にみると、

1.強敵が現れ、料理対決になる

2.味っ子が相手の料理を観察、構成要素に分解し、分析する

3.味っ子が相手の料理を真似ることができるようになる

4.でも、このままでは勝てない。何か工夫が必要だ!

5.秘密の工夫を発見した!さあ勝負だ!

6.秘密の工夫でみんなを感動させた!味っ子の勝利!さすが味っ子!

という感じのストーリーになる。ここで、1-3までのプロセスは現状分析であり、相手の取り組みを構成要素に分解し、分析するという、正にロジカルシンキングによる現状分析を行っていることになる。そして、相手の料理に一工夫を重ねることで勝利を手中にしているに過ぎない。

したがって、味っ子の才能は、何か突飛なことを思いつく天才的な思考にあるのではなく、極めて地道なロジカルシンキングにあるのである。

工夫は過去の経験値から得られる

4-5のプロセスは、現状に+αを加えるプロセスだ。しかし、このプロセスも何か特別な才能が必要なのではなく、味っ子が過去に創作した料理からヒントを得、一工夫を加えるだけである。ということは、ここでも何か特別な創造性やイノベーティブな発想力が必要なのではなく、むしろ過去の経験値の蓄積と、それをうまく引き出す能力が必要であるということになる。

このように考えていくと、見事にイノベーティブな作品(料理)を作り続ける味っ子が特別な発想力を持っているわけではないことが分かる。一見、イノベーティブに見える発想力の根源には、ロジカルシンキングと経験値の蓄積がある。

アート思考やデザインシンキングは、それ自体特別なものではない。ロジカルシンキングと相反するものではなく、むしろロジカルシンキングの基礎がなければ、アート思考もデザインシンキングも機能しないということができる。


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牧田 幸裕 名古屋商科大学ビジネススクール 教授

名古屋商科大学ビジネススクール 教授。専門は、経営戦略、マーケティング、デジタルマーケティング、ラーメン。日経COMEMOキーオピニオンリーダー

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日経が推す各業界キーオピニオンリーダーたちの知見をシェアします。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 はじめての方へ→ https://bit.ly/2DZV0XM 【...
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