労働時間の25%を占める「移動時間」をハックせよ。

働き方改革関連法が施行され、残業時間の削減に躍起になっている企業が多い中、日経新聞でこんな連載がスタートしました。味の素さんの残業時間削減のストーリーが奮闘記として綴られているのですが非常に面白いです。

味の素の西井さん自身も元々朝4時まで働くモーレツサラリーマンだった中、ブラジルの現地法人の社長を務めた際に、駐在中にライフ重視の働き方でもきちんと成果を上げる姿を目の当たりにして、日本のモーレツな働き方に疑問を持ったそうです。

現地社員は終業時刻にさっさと帰る。夕食は平日でも家族と一緒にとる。1カ月の有休制度もある。日本と比べれば年間労働時間ははるかに短いが、メリハリを利かせ、成果はきっちり上げる。生産性が高いとはこういうことか。日本の就労スタイルに疑問を持った。

それから味の素の社長に就任した2015年、政府に先駆けて残業時間の削減に取り組んだそう。

「モーレツ」に働いて成果を出したという成功体験があるにもかかわらず、健全に自己を否定して、新しい価値観を取り入れられる人は、強いです。

労働時間の25%が移動時間…だと?!

営業部門にもメスを入れた。だが「顧客第一。労働時間は減らせない」「売り上げが落ちる」と社員が抵抗。それならと、約600人の全営業社員を調査した。業務を一つ一つ洗い出し、総労働時間の25%を占めていた移動時間に狙いを定めた。

20億円のIT(情報技術)投資で、営業報告書は出先からスマートフォンで作成できるようにした。サテライトオフィスを全国に設置し、商談後にオフィスに戻る必要をなくした。出先から参加できるネットワーク会議システムを導入した。

営業部門特有の働き方として、とにかく外回りのアポイントが多く、移動時間にかなりの時間が割かれているケースをよく目にします。

特にもったいないのが、「外回りのアポイントは終わっているのに、日報を書くためだけに会社に戻る」時間です。

そこに目をつけてメスを入れた西井社長は素晴らしい慧眼の持ち主ですね。参考にできる企業は多そうです。

労働時間の削減は目的ではなく手段。

今の働き方改革の流れからすると、もはや労働時間の削減自体を目的化せざるを得ない企業もありますが、本来的には労働時間の削減は目的ではなく手段です。

労働時間短縮の目標は想定より早く実現した。ただ西井には気がかりがある。改革で社員には短く働く意識付けができたが、労働時間短縮が目的化していないか。

利益を生む大切な仕事はできているか。会議で結論を急いでいないか。西井は「労働時間の量の改善は進んだ。今後はそれを土台に労働の質の改善に取り組む」とする。

「ムダな移動時間」のように、労働時間の中のムダを減らすと同時に、生まれた時間を何に投資して、いかに顧客への提供価値を最大化するか、についてきちんと目を向けないといけないフェーズに入ってきているのかもしれません、

#COMEMO #NIKKEI

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