フィリップス曲線の「いつか来た道」
昨日はECBから定例の経済報告書(Economic Bulletin)が公表されています。市場では材料視されることは多くりませんが、経済報告書の分析は政策理事会における意思決定のベースになるため、ECBの「次の一手」を検討する上では重要な手掛かりとなります。このニュースにあるように政策理事会は、市場がECBを見る目とは裏腹に、かなり物価に対して慎重なスタンスを崩していません。特に、賃金が伸びないことに関しては問題意識がありそうです。
賃金に関する記述をより具体的に見ていくと、今年1~3月期の1人当たり雇用者報酬の前年同期比は+1.2%と2016年10~12月期の+1.4%から減速しており、これは1999年以降の長期平均である+2.1%を依然下回っていると指摘されています。この背景としては、①依然として労働市場にスラックが残っていること、②生産性の伸びが弱いこと、③危機の最中で導入された労働市場改革の影響が出ていること、④長らく続く低インフレ環境に賃金がインデックス化されてしまっていることなどが挙げられています。
試しにユーロ圏に関するインフレと失業率の関係についてフィリップス曲線を作ってみると、金融危機&債務危機でフラット化した後、過去3年(14年1月以降)ではフラット化したまま下方シフトしている様子が鮮明です。これは日本のフィリップス曲線が経験した変化でもあり、日本人からすれば「いつか来た道」です。過去1か月間でにわかに強まっているECBへの正常化期待はこのような実体経済の中で膨らんでいるという危うさを孕んでいることを忘れてはならないと思います。個人的にはECBがテーパリング以上のこと(≒利上げ)を出来るとは思えず、とすれば自ずとユーロ買いの限界も見えてくるかと思います。
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-inflation-idJPKBN1AJ17G
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-inflation-idJPKBN1AJ17G
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