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「五輪中止なら円安」のアナロジー

新型コロナウイルスの感染拡大で、2020年東京五輪が中止・延期になるのではないか?と聞かれれば、少し前までは「中止や延期に追い込まれないよう、政府が政策総動員で感染拡大を阻止する」といった旨を回答していました。最近は正直、自信が無くなりつつあります。

質問も更に踏み込んで、東京五輪が中止になったら日本経済はどうなるのか?と聞かれるケースが増えてきました。それは良くないに決まっていますし、様々なシミュレーションが可能ではありますが、問題は金融市場の反応です。

国内での感染拡大が続々と報じられているにもかかわらず、日本の株価は高値圏で推移しており、為替レートは円安方向に動いています。過去の一般的な金融市場の反応は、景気の先行き不透明感が強まると、円高・株安が進行するというパターンでしたが、今回は様相が異なります。

円安と株安の同時進行で思い出される局面は、1990年代後半の日本の金融危機です。日本の大手金融機関の経営破たんが相次ぎ、日本の金融機関に対する信用不安からドルなどの外貨調達コストが高まった結果、円安が進行しました。

現在、日本の金融機関が深刻な信用リスクを抱えているわけではありません。しかしながら、金融市場の参加者は、過去の経験を現在に当てはめるアナロジー(類推)に頼りがちです。私自身もそうですが、アナロジーに頼りすぎて因果関係を軽視するケースも少なくありません。金融危機だから円安になった、だったはずが、円安は金融危機を織り込んでいる、という論理に転換されるというわけです。

もちろん、後者の可能性を完全に否定できるわけではありません。信用不安のきっかけが、電車の中の女子高生の会話だったケースもあります。いずれにせよ市場の関心は、今後、日本銀行を含めた金融当局の対応に向かう可能性があります。


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宮嵜 浩(元エコノミスト)

お読みいただき有難うございました。 小難しい経済ニュースをより身近に感じて頂けるよう、これからも投稿してまいります。 毎月2本、随時投稿しています。

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Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Research Advisor & Economics Fellow