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アフターコロナの働き方を考える 〜「離れる」「編集する」「交渉する」3つのスキルと3つの「それぞれ」

4/14にオンラインでこんなイベントがありました。

Business Insider統括編集長の浜田敬子さんを招いてのトークイベントだったのですが、204名もの方から申し込みがあり、大規模Zoomミーティングとなりました。

弊社uni'queが女性に特化したベンチャーなのもあり、「女性の働き方アップデート」というテーマで企画したのですが、当時はまさかここまでの事態になっているとは思いませんでした。緊急事態宣言まで出ている中でイベント中止も考えたのですが、外出自粛により強制的に大きな働き方の変化が生まれ、これまでごまかしながらきた問題点が浮き彫りになったり、価値観が大きく変わる転機でもあるので、今だからこそ「これから」を考えませんか、とオンライン開催に変更しました。

外出自粛の閉塞感の中、「誰かと語り合いたい」という欲求もあってか想像以上に多くの方に参加いただきました。

イベントタイトルは「女性の」働き方アップデート、でしたが、そこで出た意見には女性に留まらない「新しい働き方」のヒントが沢山あったので、僕なりの考察とともにまとめてみました。

コロナショックで加速するパラダイムシフト

イベント冒頭で少し僕が感じている働く価値観の変化についてお話しました。

以前COMEMOでも書いたことがあるのですが、20世紀の価値観は左のようなものでした。メタファーは「高層ビル」。高く大きいものがよりよいとされる男性社会の価値観です。「出世」が「昇進」とほぼ同義で使われるように、「上司」を目指し、上に行くほど狭くなる椅子取りゲームをします。この間ほとんど建物の外に出ることはないため、中しか知らない「単一依存」の傾向もあります。

これに対し、星々が浮かぶ宇宙空間のように上下なく、大きさ勝負ではなく、さまざまなあり方が併存し、短期ではなくより長期で、柔らかくオープンな組織や働き方が求められてくるでしょう。そして個人はひとつの企業の重力に縛られることなく、星を結びつける引力の網目のように、複数の依存先をもつようになります。

安宅和人さんの「開疎化」もそうですが、コロナウイルスによる外出自粛は、このようなパラダイムシフトを加速させることになりそうです。コロナ禍をきっかけに見えてきた「これからの働き方」。イベントでのディスカッションから3つのスキルと3つの「それぞれ」がポイントになってくるのではと感じました。

①「離れる」スキル 〜「それぞれの場所・時間」で働く 

イベントは浜田敬子さん、高本玲代さん、村岡弘子さんの鼎談。はじめに浜田さんの働き方の変化を伺いました。

「ものすごい会社人間だった」という浜田さんは朝日新聞に入社し、AERAの編集長を務めたあと、Business Insider(以下BI)に編集長として転職。ここでも会社で働き詰めだったそうです。

しかしBIの取材で若い世代の働き方に触れながら、「人生100年」時代のこれからの働き方を改めて考えた時、会社から「離れて」もっとちがう道をさぐってみたい、と思ったそうです。

「会社にいるからできることもあるけど、それで果たして自分の人生をコントロールできているのか」「実は会社員じゃなきゃできないことってあんまりないんじゃないか」。その実験のため、退職しフリーランスになる道を選び、BIには引き続き業務委託で統括編集長として携わっています。

「時間とか空間から解き放たれて」、会社から「離れる」働き方。これは文字通り「リモートワーク」なわけですが、「離れる」働き方には、身軽になって清々すると同時にある種の「寂しさ」もあるようです。

「寂しさ」の原因にはもちろん物理的な距離もありますが、自分ひとり会社から離れ「外」の人になってしまうことでの「分断」もあるようです。大勢がひとつの部屋に集まっている時に一人だけ別の場所からテレビ会議に参加したりすると「蚊帳の外」感を感じますが、そんな感じでしょうか。

浜田さんは会社員から外にステータスを変えてみてどこまで「中と外の差」がなくプロジェクトをできるのかにチャレンジしています。これは「会社と個人の関係の見直し」実験です。

僕自身は「中と外の差」はどんどんなくなってくると考えています。というのも、中/外、という区別は多数性の問題でもあるからです。弊社は「全員複業」というかたちで事業をしていますが、みんな複業だと「中」とか「外」とかいう区別自体がほぼありません。今後個人が複数企業と仕事をするのが当たり前になり、一箇所に「密集」することなくそれぞれの場所と時間で働くようになれば「離れる」働き方の寂しさは薄まるでしょう。

また、会社との距離の変化だけでなく「仕事」自体から離れる、という変化もおきそうです。コロナ禍で会社から離れ家にいると相対的に「生活」との距離が近くなります。浜田さんも「自分の人生でちゃんと家族と食卓を囲んだのは初めて」と言っていましたが、家族と過ごす時間が増えると仕事の感覚も変わってきて「夕飯食べちゃうと仕事はもういいかな」「成果が半分でも上等」という感覚になったといいます。

それまでまさに仕事人間で四六時中仕事をしてしまっていたのが、家族や食卓の時間が増え、仕事から「離れる」ようになった。その分、成果は少し遅れるかもしれないが、それでもいいんじゃないか、日本人はちゃんと食卓を囲むとかをあまりにおざなりにしてきたのではないか、そんな風に「仕事」ともうまく「距離」を取れるようになったといいます。

ただ一方で、「強制されないと無理だったかもしれない」とも。仕事で日々が「密」になっていると、仕事をしていないと不安になる状態に陥ります。「workaholic」というように、それはほとんど「中毒」なのです。依存を断ち切るために隔「離」が必要なように、仕事からうまく「離れる」のがこれからは大事なスキルになるでしょう。

②「編集する」スキル 〜「それぞれの仕事」を組み合わせて働く

もう一つ、フリーランスになったり「仕事」から「離れる」時、心配なことはやっぱり「お金」です。参加者からの質問も多かったのですが、お金の心配があると会社や仕事から「離れる」のはやっぱり不安です。これに対する登壇者からの回答は「うまくポートフォリオを組むこと」でした。

高本さんから「ライフワーク」と「ライスワーク」のバランスという話もありましたが、仕事によって時間とお金のバランスも変わります。村岡さんは「コンサルとか割とお金は沢山もらえるけれど、つまらない」とおっしゃっていました。一方、好きな仕事は意外と時間や手間がかかったり、未来のための仕込みだけでは食べていくのが大変だったりするので、それをうまく組み合わせることが重要です。

仕事の組み合わせという意味では、「ikigai」にも似ているかもしれません。「好きなこと」「得意なこと」「世界が必要としていること」「お金をもらえること」、仕事によって得られるものは様々です。

複業が当たり前になるこれからは、それぞれの仕事をうまく組み合わせて「編集する」ように働くスキルが求められて来ます。

これはプライベートと仕事の組み合わせのスキルという意味でもあります。在宅では時間の切り替えの工夫も必要です。

あるいはまた異なった仕事のスタイルを組み合わせる、というのもあるでしょうか。登壇者の皆さんは順番はそれぞれですが「大手」と「ベンチャー」を行き来していて、それも仕事に飽きないコツなのかもしれません。

そして、複数の収入源を組み合わせると、コロナ禍のようなことがあったときにも影響を受けづらくなります。熊谷晋一郎さんが言うように依存先を増やすと自立性があがるのです。とはいえ、村岡さん曰く「なんでもかんでも仕事を受ける」と疲弊するのでちゃんと「仕事を選ぶ」も大切。節操なくとにかく沢山記事が載っている雑誌というのもまたつまらないので、やはり「編集する」スキル、大事ですね。

③「交渉する」スキル 〜「それぞれのリクエスト」をきちんと伝える

そして最後に、特にこれからの女性はちゃんと「交渉する」のも大事、という話。たとえば産休や育休後にどういうポジションに戻れるのか、会社任せにせずちゃんと自分はこうしたい、と伝える

参加者からは「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」という言葉が出ました。企業ではいまも男性上司が「ママだからこんな仕事はお願いしないほうがいいだろう」と先回りをして仕事の機会を奪ってしまったり、また女性自身も「子供がいるから迷惑を掛けるかも」とか腰が引けてしまい、ちゃんとコミュニケーションせずに「不信の連鎖」が生まれていることも多いようです。

「女性だから」「ママだから無理」ではなく、リモートも含めて「自分はこういう風に働きたいし、働ける」というリクエストをちゃんと伝えていくこと。会社側もそうやって伝えてもらえるとやり方を工夫したり、信じてアサイン出来るようになります。

「これからの働き方」とは、「それぞれ」ちがう働き方ができるようになるということではないでしょうか。日本人はどうも「交渉する」のが苦手で、相手任せの受け身になってしまいがちですが、それぞれが自分の最大限の価値を出せる環境をつくるためにも、きちんと「交渉する」ことが大事なのです。

まとめ:働き方はカラフルになる。

企業ではまだまだ、「ダイバーシティ」=「女性の管理職比率をあげる」取り組みだと誤解しているところも多いと思います。しかし最初にみたように、時間や場所の制約もなく複数の仕事を組み合わせていく時代の「活躍」は「昇進」という上下の軸だけではありません。

活躍の仕方はみんなちがう。女性だからこうでしょ、じゃなく、「働き方」「活躍」はテーラーメイドのようにそれぞれちがうものになる、それこそが「ダイバーシティ」なはずです。

こちらは、イベント内で参加者に取ったアンケートです。

現状では会社員が最多ですが、「これから」を聞くと会社員はガクッと減り、複業が圧倒的多数、そして経営者も比率が増えています。

弊社では「複業起業」というかたちで新サービスと新会社を発表しました。

新サービスのオーナー高本玲代さんは滋賀在住で子育てしつつ、他のスタートアップにも関わりながら完全リモートで新規事業を立ち上げました。また新会社の代表となる村岡弘子さんはNTTドコモでConobieの責任者をしながら、複業起業家となり、さらなる事業展開をしていきます。

こんな風に女性の働き方でも、「会社に勤める」「クライアントワークをするフリーランス」の他に「事業をつくる」という選択肢ももっと増えてよいはずです。

コロナ禍がきっかけともなり、いま社会は新しい価値観、働き方へのターニングポイントにあります。この時間に改めてこれからの働き方を考えてみてはいかがでしょうか。

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