ファシリテーションスキルはこれからの時代で活躍する武器になる
Potage代表取締役 コミュニティ・アクセラレーター河原あずさです。コミュニティ型組織開発を掲げ、組織や個人の成長を助けるお手伝いをしています。
今日取り上げたいのは「リスキリング」の話です。読者さんの層を考えると「リスキリング」意味をご存知の方が多いとは思いますが、あまり聞き慣れていない方向けに簡単に説明するとRe+Skillの組み合わせによる単語で「学びなおし」のことです。
色々なイノベーションが起きたり、ビジネスモデルが変化したり、世の中が変化することによって、従来大事にされていたスキルだけでは対応しきれないという状況が増えてきています。そのときに新しい知識やスキルを学ぶことを「リスキリング」と呼んでいます。
新型コロナウイルス流行の前後から「働き方」は急激に変化しています。大企業においても「年功序列型」の図式が崩れていたり、自律的な人材育成を企業がどんどん促していたりしています。中間管理職や、シニアの方に対して会社が「それまでの経験ばかりで仕事が完結すると思わないで、新しいスキルを身につけてくださいね」というアナウンスしていくケースも増えています。研修も、人事部主導で「決められたものを受けてもらう」スタイルから、手挙げ式で「受けたいものを選んで受けてもらう」スタイルに変化しつつあります。
(この変化の裏には「ちゃんと会社の変化に適応するためにちゃんと学びましょうね。そうしないと居場所がどんどんなくなっていきますよ」という、自己責任論を軸とした暗黙のメッセージもこめられているわけですが、その詳細についてはここでは割愛します。)
「学びなおしの意義は分かった。けど、何を学んでいいのか分からない」という方も決して少なくないかもしれません。実際、変化の激しい時代において、どのスキルが役立つかなんて分かりませんし、すぐに価値を失うスキルを身に着けたとしても結局意味がないですよね。
そのように悩んでいるみなさまに、お薦めのスキルがあります。ズバリ「ファシリテーションスキル」です。このスキルを身に着けたら、組織も個人もみんなハッピーになるのではないかと個人的には考えています。
ただ、まず前提としてお伝えしたいのは、ぼく自身のコアスキルが「ファシリテーション」で、それを教えるスクールをやっているので、じゃっかんのポジショントークの要素はありますよ、ということです。ただ、考えれば考えるほど、ぼく自身の利害に関係なく、今の組織や世の中が「ファシリテーションができる人材」を求めているように思てくるのです。
多様性の時代に重要さを増している「ファシリテーションスキル」
昨今は「多様性の時代」と呼ばれていて、これからの組織やビジネスパーソンは、それぞれの個性を尊重していかないとだめですよ、という世の中の風潮になっています。これは日本だけではなくグローバルの流れがそうなっていて、世界中で、特に大きい会社が「働き方の多様性を尊重する」「それぞれの価値観の多様さを尊重する」ということを表明しています。つまり「多様であればあるほど、組織はいい組織である」という価値観に急速にシフトしているのです。その流れを象徴する言葉が「Diversity & Inclusion」であり、SDGsのような概念なのです。
しかし、人が多様になればなるほどそこの合意形成は難しくなります。「多様性のある世の中」と言葉をとらえると聞こえはいいのですが、「みんな違ってみんないい」ということは「みんなの考えていることはみんな正解」ということなので、同質性の高い組織のように「正解はこうだからこう動きなさい」伝えたらみんなが従うというシンプルな事象が起こらず、「いや、僕はこう思う、私はこう思う」という反応があちこちで起きて、組織のメンバーがマネジメントの思惑通りに動いてくれないわけです。
となると、組織の中で合意形成を起こしていくには、そのためのスキルが必要になってきます。
合意形成の核になるのが一対一の対話、つまり「1on1」です。1人1人のメンバーと丁寧にコミュニケーションをとりながら、組織の目指す方向性と、個人が向かいたい方向性の重なりを見出して、お互いに利益になるような関係性を、コツコツと気づいていく必要があるのです。
これははっきり言うと「めんどくさい」プロセスです。「Diversity & Inclusion」と多くの組織が簡単に言うものの、それを実現するのは、とても大変なことなのです。特に、その合意形成の責を負うマネージャーの方々の気苦労は、年々増してきているように見受けられます。
そのような混沌とした状況において、ファシリテーションスキルを持った人材は、組織の中に多様性を産み出すために、ひとつの方向性を与えることができます。混沌した状況を解決する人材として、とても重宝されるだろうと思うのです。
マネジメントにこそ必要なファシリテーションスキル
特に、マネジメントの方々には、この「ファシリテーションスキル」が求められていると感じています。これからの世の中において、マネージャーの最も大事な役割は、組織の多様性を担保して、育みながら、一つの方向性を見出してリードしていくことです。ファシリテーションスキルは、この新時代のリーダーシップの礎となります。
「組織はこう言っている。だからこうしなさい」と頭ごなしにみんなを引っ張っていくリーダーシップではなくて「あなたはどう思いますか?なぜそう考えますか?」と問いかけをしながら、組織とメンバーお互いにとっての最適解を探っていって、みんなで議論をした結果としてチームの方向性に関する意思決定ができる。そういうマネジメントこそが、今の時代には求められているです。
読者の方には「本当にそんなスキルが必要なのか?」と思っている方もいるかもしれません。ぼくがかかわった事例から、今何が起きているのかを説明します。
先述した通り、ぼくは「コミュニティ型組織開発」という組織変革プロセスを提供しています。あるクライアントさんでは、その過程で、12名のマネジメントの方に、コーチングや心理的安全性ある組織づくりといった内容も含むファシリテーショントレーニングを実施しました。
その会社は上場している企業で、12人の方はその会社の執行役員クラスでした。何万人という社員がいるグローバル企業で、みなさんかなりのステータスが社会的にある方々です。売上責任を持っているプレイングマネージャーがほとんどなので、普通に考えると、なかなかトレーニングプログラムを受けてもらうことすら難しいのですが「このメンバーを選抜して組織のファシリテーションについてインプットしていく」と会社(人事部門)が決めて、実現できたのです。
ぼくはその12名の1on1の録画をみながら、改善のためのフィードバックをしたり、スキル向上につながるインプットをしたり、お互いの価値観をぶつけあうディスカッションを提供しながら、コミュニケーションスタイルの変革にチャレンジしています。正直、全員が全員、大きく変化するということはないのですが、1/3から半分の参加者の方において、コミュニケーションスタイルの変化の兆候が見られています。
なぜ変化しているかというと、それぞれの参加者の方々が、組織の変化を痛感していて、自身の「リスキリング」の必要性を強く感じているからだと考えています。このような方々は、今後の組織の主流となり、変化のためのエンジン役になってくるだろうと感じています。組織からも数多くの挑戦の機会を与えられるでしょうし、結果的に更なる自己成長につなげられるのではないでしょうか。
ファシリテーションができる人材は、今後の組織の主流になってくるのではと個人的には感じています。これまで昇進・昇格をしていなかった人にもチャンスです。今までは営業成績がいい人が昇格する、という風潮がありましたが、これからの時代により求められるのは、コミュニケーションスキルや人間性の部分です。マネジメントに求められるスキル要件も大きく変化する中で、ファシリテーションスキルを持って、今後の組織の変化に備えておくことは、キャリアにおいてとてもプラスに働くのではと考えています。
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※編集協力 横田真弓(THE MODERATORS & FACILITATORS受講生)