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二拠点居住は、地方・個人・経済へ「三方良し」を叶える

2000年代前半、ニューヨーク市に住んでいたころ、30代の友人や同僚がわりと気軽に「別荘」を購入することに驚いた。結婚や出産と同じように、大人になるステップの一つと捉えられている印象を受けた。

日本の感覚では、中流階級にとって、リゾートクラブ会員権がいいところ。別荘を持つ、すなわち代々軽井沢・・・、すわ超富裕層・・・という連想をするのだが、ごく普通に会社勤めをするアメリカ人カップルが、市内から車2-3時間で着くアップステートと呼ばれるニューヨーク州の北部に、もう一軒、週末の家を持つことは決して珍しくなかった。中には、税金の高い市内から、別荘に居住地登録を移して節税対策するつわものもいた。

さて、コロナ危機をきっかけに、日本で二拠点居住の機運が盛り上がることは、喜ばしい。まず、供給サイドは、パンデミック以前から整っていた。地方の人口減は切実で、関係人口の増加は地方自治体にとってグッドニュースだ。いまや空き家の急増は社会問題になっている。

一方で、需要サイドには、パンデミックを発端として大きな変化が起こる。ホワイトカラーにとってリモートワークが当たり前になり、教育や医療といったサービスにもリモートの可能性が広がることで、日常を縛る「場所」の制限が急に小さくなったのだ。

場所の自由度が急に広がるとき、素朴な疑問が起こる;なぜ狭い都心の住居に、ずっと縛られているのだろう?

実は、二拠点居住は、経済にとってもプラスの作用を及ぼす。日本の人口は2008年より減少をはじめた。人口を追う形で、世帯数は2023年にピークを迎えると予想されている。個人消費にとっては、恒久的なマイナス要因だ。

しかし、二拠点居住は、世帯数減少にあらがう力がある。すなわち、家電など耐久消費財は世帯数に影響されるが、ふたつの家を持つことで、例えば、冷蔵庫は世帯にとって二つ必要となるからだ。単身世帯にとっても、需要は同じである。

個人にとって、二拠点居住のメリットは大きい。例えば、都会で生まれ育ち、都内の病院で勤める勤務医の友達は、ひょっとしたきっかけで訪れた長野県白馬村の自然にほれ込み、数年後には別荘を買い、週末や休みを過ごしている。

コンクリートに囲まれた生活を離れ、土いじり、山菜取り、気軽に山のスポーツができる環境を大いに気に入っているようだ。二拠点生活が彼女の生活の質を上げたことは明らかだ。都内の病院勤務をリタイアした後は、白馬で、マイペースで運営できる個人クリニックを開業したいという夢を持っている。

私がニューヨークで見知った二拠点居住の例は、平日は都会、週末は別荘というリズムがほとんどだった。しかし、これからはその逆のパターン―平日は田舎でリモートワーク、週末はコンサートやレストランを十分楽しむために都会―もありだろう。

二拠点居住は、より自由な生き方をさぐる有効策のひとつだ。個人にとって、同調圧力のもと、自分の生き方に枠をはめて、無難に「みなと同じ」を目指す、日本の根本的な息苦しさの突破口になると期待する。

You Only Live Once(YOLO)が、ポスト・パンデミックの合言葉だ。一度きりの人生ならば、自由に設計しようー二拠点居住はその選択肢を広げてくれる。

#日経COMEMO #2拠点居住の理想スタイル

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