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未来の仕事仲間が示すオフィスワーカーの姿と働き方格差

 日本でサラリーマンとしての働き方が普及したのは、産業の重化学工業化が進んだ1920年代以降のことで、歴史としては100年程度に過ぎない。産業構造の変化によって労働形態は変化しているため、未来のサラリーマン像も変化していくことになる。

働く環境が健康面に与える影響から「サラリーマンの未来」を研究しているのが1920年代から、その時代に適した事務機器の開発を行っている世界的なオフィス用品メーカーのFellowes社で、欧州のサラリーマンを対象に行った調査レポート「Future of WorkColleague Report」を2019年に発表している。

Future of WorkColleague Report(PDF)

同レポートによると、1990年以降のサラリーマンは9割が仕事環境の問題から健康面の不調を抱えている。長時間の通勤やPC画面と向かい合うデスクワークの増加によって、血圧の上昇、体重増加、背中や腰の痛み、頭痛、目の充血など、具体的な症状を自覚している人は5割以上になる。勤勉で長時間働く人ほど運動時間は少なくなり、1日に10時間以上働く人は、心臓発作や狭心症など心血管系の病気になるリスクが60%高くなることが報告されている。

それ以外でも、現代のサラリーマンは、仕事のプレッシャーによるストレス、不眠症などもあり、健康的な働き方をしているわけでない。それを継続していくとどのような姿になるのかを、2040年頃に訪れる未来の仕事仲間「Emma(エマ)」というオフィスワーカーのプロトタイプとして公開している。

さらにFellowes社では、コロナ禍で普及するリモートワークの健康リスクについても調査をしている。欧州で4ヶ月以上の在宅勤務を行っているリモートワーカー(約7000人)の中では、35%が精神的なストレスを抱え、37%が腰痛に苦しんでいる。

今後も長期的な在宅勤務を希望する者が8割を超す中でも、自宅の仕事環境は、会社のオフィスよりも悪いため、身体的な苦痛を取り除けるホームオフィス用品の支給を会社側の義務として法制化することも必要という見解が示されている。在宅勤務者が求める自宅オフィス用品として最も希望が多いのは、腰痛の防止効果があるチェアである。

またメンタル面でも、会社オフィスよりも自宅のほうが集中力を持続させることが難しく、仕事時間が長くなる傾向がある。そのため、社員のメンタルケアと仕事の生産性を高めるためにも、通勤と在宅勤務の日を柔軟に決められるハイリッドワークが、未来の働き方としては理想的という結論が示されている。

※出所:New Way of Working(Fellowes)

【働き方格差で変わる平均寿命】

 健康的な人生は、ワークスタイルだけでなく、働き方の選択によっても変わってくる。すべての人が当てはまるわけではないが、自分の裁量で仕事を選んだり、決断できる人は、そうでない人よりも平均寿命が長いことは、複数の調査から明らかになっている。その中でも、英国ロンドン大学での研究が有名だ。

ロンドン大学では、中央省庁が集まるロンドンホワイトホール地区で働く公務員の心疾患、がん、胃潰瘍などの有病率と死亡率を、1967年~2020年まで何期ものフェーズに分けた長期的な研究を行っている。その中では、同じ年齢層でも組織内の階級によって死亡率が異なり、階級が低い人は、階級が高い人よりも死亡率が高いこという事実が発見された。

研究当初は、高い階級のほうが仕事の責任は重いことから、ストレスを溜めやすく死亡率が高いのではないか、という予測がされていたが、結果は最下層にいる公務員のほうが死亡率は4倍以上高いという結果が出ている。

飲酒や喫煙などの生活習慣を考慮しても、「上級職よりも下級職のほうが死亡率が高い」という事実を覆すことはできなかった。しかし、下級職から上級職へと昇格すると、心疾患などの発症率が下がることがデータから判明して、仕事の裁量権が病気の因子として最も深く関係することが立証されている。

The Whitehall Study archive collection(ロンドン大学)

この研究結果からわかるのは、上司の指示に従うのだけで、自分で何も決めることができない仕事は、責任が重い仕事をよりもストレスを溜めやすく、健康リスクが高い。労働時間の短縮や在宅勤務などの「働き方改革」を実施しても、ストレスを無くす根本的な解決策にはならず、サラリーマン社会に居続ける間は、階級の上下による心痛を抱えながら仕事をしていくことになる。

一方、オーナー社長、自営業者、フリーランスの立場は、自分の裁量で仕事を進めることができるため、事業規模の大小には関係無く、満足度や幸福度が高いと言われている。コロナ禍でリモートワークが普及する中では、仕事の価値観が変化する人も多く、昇給や昇格を目的とするよりも、自分の好きな仕事を、自分の裁量で進められる働き方が優先されるようになっている。

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