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VRは現実を越えるのか?〜Dentsu VR Plusが考える1つの解〜

コンピューターの歴史において長らく変わっていないもの、それは入出力デバイスである。入力装置としてのキーボード(後にマウスが追加)、出力装置としてのディスプレイ、そして計算機としての本体というセットは、誕生以来それほど大きな変化がなく存在している。

スマートデバイス全盛の近年においても多少の形は変われども、構成要素としてはその様式を保ち続けている。

数年前より「AR(拡張現実)」や「VR(仮想現実)」や「MR(複合現実)」という新しい世界観が出現している。「Oculus Rift」や「HTC Vive」「PlayStation VR」といった製品名を聞いたことのある方も多くいらっしゃるであろう。「Pokémon GO」も現実の地図を拡張したという点ではARである。MRでは「HoloLens」が代表格だろう。いずれの製品もこれまでのコンピューティングの常識、先に挙げた入出力デバイスの様式を大きく革新しようとしている。

そのような中で電通のプロジェクトである「Dentsu VR Plus」が、新たな世界観を提案するプロトタイプ「COMOLU」の発表を行った。

© phreaky

「comolu」とはなにか? VR特有の没入感を利用して、人間のクリエイティビティを解放するためのツールであるらしい。

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これまでのコンピューターには限界があった。つまり、ディスプレイの大きさと解像度により、一度に表示できる情報の限界が決まるということだ。もちろん仮想ディスプレイ等のソフトウエアで解決する手法も存在するが、筆者には使いやすいものとは思えない。これを、ごく自然なユーザーインターフェースで解決しようとしている。

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「COMOLU」の世界に入ると、森のような景色が目の前に広がる。その空間に、画像や動画といった情報が文字通り「浮かんで」いる。コントローラーをレーザーポインターのようにして操作すると、自在に拡大縮小や再配置が行える。ニュースフィードの機能もあり、最新のニューストピックが遠くからベルトコンベアに乗って(!)流れてくる。気になるものがあればポインタでピックアップすれば、任意の空間に配置することができる。さながら、新聞の切り抜きのような感覚か。

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(「COMOLU」の世界にこもっている筆者。ディスプレイに表示されているのがVR内で表示されているイメージである)

可能性を感じたのが、画像検索。プレゼンテーションをつくる際にネタを探すために画像検索を利用している方も多いだろう。「COMOLU」では仮想キーボードで検索ワードを指定して、Bingの画像検索を呼び出すことができる。すると、部屋の全壁面に画像のタイルで埋めつくされた空間にワープする。これが非常に面白い。

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仮想キーボードで好きなワードを指定してみよう。ここでは「ボブ 髪型」と検索した。

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すると、こうなる。大変に楽しい。

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もちろん気になる画像は、自分のワークスペースに貼り付けることができる。

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もちろんVRなので、上下左右後ろどこを見ても検索結果が見える。

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また、「COMOLU」ではさらに集中できるよう、専用のウェアの試作品も開発中とのことである。フードで包まれることにより、さらなる没入感を得られるようだ。

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今回のプロトタイプの開発チームは以下の通り。neurowearと言えば脳波で動く猫耳型コミュニケーションツール「necomimi」で一世を風靡したチームであり、今回の企画はneurowear立ち上げ後、電通 Future Business Tech Team クリエイティブテクノロジストの「なかのかな」さんが担当している。

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このようなプロトタイプはこれまでもハッカソン等でよく見られる類のものであるが、一貫したクリエイティブと世界観を提示して完成度を高めた手腕はさすがである。

今後確実に盛り上がるであろう、AR/VR/MRの世界。遊園地のようなエンターテインメントよりのアプローチではなく、仕事の生産性をあげる方向のプロダクトはまだまだ未開拓の分野である。新しい技術が社会に浸透していく過程において、重要な方向性の1つであると感じた。今後の進化に期待したい。

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