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「天気の子」はどこまで目指す?アニメ映画大ヒットの目安

7月19日に映画『天気の子』が全国公開されました。2016年に『君の名は。』が空前の大ヒットとなった新海誠監督の最新作です。
前作の成功が大きいだけに、今回もまた“大ヒット!”の期待がかかっているはずです。

なのですが、そもそも大ヒットとは一体どのくらいの規模で、何を基準にして確かめるのでしょうか?
劇場映画のヒットは興行収入、つまり入場チケットの総計を指標にすることが多いようです。例えば興収10億円を超えれば、あるいは20億円を超えればヒット作といった具合です。

しかし金額だけで全てが計れるわけではありません。海外のケースになりますが、日本のマンガ『銃夢』を原作としたハリウッド映画『アリータ:バトル・エンジェル』は、今年世界興収4億400万ドル(約440億円)を叩き出しました。2019年にこれまで世界公開された映画のなかで第10位につけています。
ところが本作は米国のメディアでは失敗作扱いです。それは製作費が1億7000万ドル(約185億円)もかかっており、赤字のためです。投資資金に対する回収は見逃せないポイントです。

過去の類似作品と比較する場合もあります。同じ監督、あるいは同じ主演俳優、同じ原作者のこれまでの作品と較べて興収が多いか、少ないかです。
一見は合理的に見えますが、それこそ国内史上歴代2位250億円を叩き出した前作『君の名は。』と『天気の子』を並べるのはやや無理があるでしょう。社会現象的なブームは、意図して目指せるものでありません。逆に言えば国内であれば興収100億円を超えれば、どんな映画でも大儲けのはずです。

“期待値”という指標も考えられます。世間には公表されることはありませんが、どんな作品も企画段階で採算ラインやこれまでの作品の結果も念頭に目標数字を定めているはずです。それを超えれば少なくとも製作者の中ではヒットです。
もちろん目標値は公開されないので、外からは知りようはありません。それに期待値の立てかたも製作者ごとに様々で曖昧な基準です。
こうしてみると嘘をつかない、客観的と思える数字、興行収入も扱う人次第で、ヒットの目安になりにくいようです。

さらに「興行収入ごときに振り回されるな!」 
「作品が面白ければ、いくらお客さんが入ろうが関係ない!」
との声も当然あるでしょう。

もちろん映画の評価は数字でなく、作品そのものが第一です。そして『天気の子』の評判は私の周りを見る限りではかなり高いようです。前作『君の名は。』が少し合わなかったとする人でも絶賛する人が多いです。
ただ映画の評価は曖昧で、抽象的で判り難くいところがあります。
業界の人だけでなく、ファンですら興収を気にするのは、数字がストレートだからです。そして実際は数字より大切なのは、自分が気に入った作品を他の人にも観てもらいたい、知ってもらいたいと応援する気持ちのような気がします。興収の数字はその確認です。

7月29日の発表によれば、『天気の子』の興行収入は公開11日間で40億円を突破しました。かなりのハイピッチになります。最終興行収入100億円超は十分視野に入るでしょう。
2010年以降、邦画で100億円を超えたのは『君の名は。』と宮崎駿監督の『風立ちぬ』だけです。もしそうなれば十分大ヒットです。しかし数字はそれ自体より、ファンの気持ちの盛り上がりをより高めることに意味がありそうです。

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数土 直志(すど・ただし)

ジャーナリスト。アニメーションを中心にエンタテイメント産業について、見て、聴いて、そして伝えています!

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