COP26のオチを予測する ー"コペンハーゲンのトラウマ”と、”パリのミラクル”の間で悩む英国
見出し画像

COP26のオチを予測する ー"コペンハーゲンのトラウマ”と、”パリのミラクル”の間で悩む英国

COP26が盛り上がっています。

この「盛り上がり」も区別して考える必要があり、
首脳級会合が行われた1週目の盛り上がりは、言わば政治的パフォーマンスとしての盛り上がりですが、これからは、モノが決まっていく、成果文書が出せるか、出せるとして意義のある内容になるか、という「内容の盛り上がり」です。
COPの会期は毎回2週間でして、成果文書採択に向けて交渉が本格化するのはだいたい会議最後の最後の2,3日なのです。(イシューによっては早めに決まっちゃうものもありますが)
ちなみに、会場の外の環境活動家の方たちの盛り上がりは、会場内とは全く別の動きとして、2週間ずっと続く感です。

で、ここから内容の盛り上がりが期待されるわけですが、聞こえてくる状況ははかばかしくありません。もちろん、最初はすべての国の主張を受け入れた、とっ散らかった文書を作成し、そこから徐々に小さな合意を得ながら束ねてというのは毎度のことですが、既にこれまで、先進国から途上国への資金支援も相当無理をしてしまっているなか、コロナでどの国も経済が痛んだ状況でさらに途上国の譲歩を引き出すようなカードはもう切れない。
(ちなみに、インドが2070年のカーボンニュートラルを打ち出したのは、資金支援を引き出したいという思惑もあってのことだろうと思っていたのですが、インドの資金支援の要求がネックになってきているという報道もありました)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-11-10/india-holds-back-on-climate-pledge-until-rich-nations-pay-1-trillion?mc_cid=a92af64ea7&mc_eid=0d8acefc7a


パリ協定で、既に2℃目標、できれば1.5℃目標という非常に高い目標が共有されていますし、資金支援など「アメ」なしに途上国の譲歩を引き出すことはできない、各国の胸倉をつかんで目標の引き上げを迫るというのはパリ協定への挑戦になってしまう。かなり難しい状況だと言えるでしょう。

ただ、COPは失敗できないんです。
ホスト国の威信がかかっています。
特に、欧州には「コペンハーゲンのトラウマ」と「パリのミラクル」が染みわたっています。
(すみません、両方私が勝手に命名したものですが、この歴史的経緯の把握は大事)

まずコペンハーゲンのトラウマとは、COP15の失敗です。
京都議定書の第一約束期間以降の「新たな枠組み」を作る最後のチャンスとされたCOP15(2009年)は、デンマーク政府のホストとしての能力の低さ(ロジもできていなかったので、世界中からキレられた)を露呈し、内容としても不十分なコペンハーゲン合意を「take note(留意する)」するということしかできませんでした。

大英帝国の皆さんにはデンマークと比較されることすらプライドが許さないかもしれませんが、COP26でデンマークのようにになるわけにはいかないという強いプレッシャーがあります。

このトラウマだけであればまだしも、パリのミラクルもあります。これは皆さんご承知の通り、フランス政府が、合意不可能だと思われたパリ協定をまとめ上げたこと。
パリ協定というのは、要は、米中両国が飲める仕組みをどう作るかだったわけですが、それを目標の達成は法的義務にしない、自主的枠組みにするということによって可能にしました。もちろんフランス政府だけの功績ではありませんが、フランスの外交巧者ぶりがあったことは間違いないでしょう。
ちなみにロジ的にも参加者からの評価が高く、会場にPAULのパン焼き窯が持ち込まれ、いつでも美味しい食事が提供されたことなど、「つまらん」と思われるかもしれませんが、交渉官たちの気持ちがくさくささせない工夫がありました。こういう点も意外と大事なことで・・。

”コペンハーゲンのトラウマ”と”パリのミラクル”に挟まれて、威信にかけて絶対成果を出したい英国。なので、やたらとアライアンスや共同声明などを出しまくり、「こうした「外側」も含めて、COPの成果だ!」という演出が行われることになります。まぁそれも間違っていないと言いますか、パリ協定が各国の自主的な目標設定と取組みを前提とした枠組みである以上、交渉の場の意義というのは薄れているわけで、周辺部分含めてどう盛り上げるかがCOPの成果ということになって言っているのかもしれません。

とはいえ、なんとかCOPとしての成果についても最大化したい英国政府としては、これからシャカリキで頑張るでしょう。COPの会期は毎年の通り、週末まで延長されるんでしょうね。この後にクリスマス休暇が控えていると、「土曜日の夕方には何とかしようよ」という暗黙の了解が成立するのですが、今年は開催時期が早かっただけにどうなるか・・・。
関係者の皆さま、お疲れ様です。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ありがとうございます。フォローしていただけたらもっと嬉しいです。
竹内 純子(国際環境経済研究所理事/U3イノベーションズ合同会社共同代表/東北大学特任教授)
温暖化・エネルギー政策研究と、ビジネスの両面から、現実的な移行とサステナブルへの移行を目指しています。