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今、学生が論文のテーマに選ぶ「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」とは。

突然だが、あなたはロマンティック・ラブ・イデオロギーという言葉を知っているだろうか?

実は、検索窓に「ロマンティックラブイデオロギー」と入力すれば、学生たちの書いた多くの論文がヒットする。

なぜ今、学生たちはこのテーマを研究対象に選ぶのか?

今日はそんな話。

■恋愛トークの3点セット

ロマンティック・ラブ・イデオロギーとは何なのか?

詳しくは論文に書いてあるのだが、論文を読むには体力も時間も、基礎知識もいる。

そこで、本を読むのが苦手(論文はもっと苦手)な僕が、自分なりにざっくりパワポでまとめてみた。

まず、ロマンティック・ラブ・イデオロギーは、とある「当たり前」を疑ってみることからはじまる。それがこれだ。

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「え!これ疑うところある?」

と思った人こそ、ぜひ最後まで読んでいただきたい。(読了まで3分)

学術的に「恋愛と性愛と生殖が結婚を媒介とすることで一体化された概念」と説明されるロマンティック・ラブ・イデオロギーだが、簡単に表現するとこういうこと。

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恋愛すること、結婚すること、出産すること。

今の日本では、これらを3点セットで語るのが「当たり前」なので、付き合っている人がいると「結婚しないの?」と聞かれ、結婚していると「子どもはつくるの?」と聞かれる。

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この根底にあるのがロマンティック・ラブ・イデオロギーだ。

だって、好きな人と結婚して、その人の子供を産んで、2人で一緒に育てるのは「素敵なこと」「当たり前」だから。

しかし昨今はこれらの発言が「ハラスメント」と捉えられる風潮もある。

当たり前なのに、ハラスメント。

あれ?どういうことだろう?

そんな小さな疑問が学生たちに論文を書かせているきっかけかもしれない。

■1つの組織に3つの目的

落ち着いて考えてみよう。

恋愛と結婚と出産。

これらには異なる目的がある。例えばこんな感じ。

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この目的は会社経営で言えばビジョンのようなもの。

組織がどの方向に向かうのか、何を目指すために存在するのか。どんなにバラバラな組織でも、これさえ一致していれば大丈夫とも言われている。

逆に言えば、この目的が異なるなら同じ会社でいることは難しい

しかしロマンティック・ラブ・イデオロギーは、この3つの目的を1つの組織(カップル)で完遂させようとする。

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僕が経営コンサルタントだったら止める。

「絶対にどこかで無理がくるからやめた方がいい。それなら3社に分社化したほうがいい。」

そうアドバイスするだろう。

しかし現実はそうはいかない。

世の中には既に「ロマンティックラブ包囲網」が敷かれており、制度上も、ビジネス上も、カルチャーでさえもこのロマンティック・ラブ・イデオロギーを前提とした方が都合がいいので、3つの異なる目的を1つの組織に押し付けようとしている。

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あれ?これ無理ゲーじゃね?

と冷静に気づこうとしても、これらの包囲網が僕らから冷静な判断力を奪っていく

しかし学生たちはまだこの包囲網の中で暮らして20年足らず。
まだ冷静に戻れる余地を残しているから、人生初の論文のテーマにロマンティック・ラブ・イデオロギーを選ぶのかもしれない。

■2周目が許されないサイクル

実際にロマンティック・ラブ・イデオロギーを論文のテーマにした学生と話したことがある。

その学生がこのテーマに関心を持ったきっかけは昨今の不倫騒動だったと言う。

では、その視点で先ほどの図を見ていこう。

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先ほどはこの図を「3つの異なる目的を1つの組織に押し付けている」と説明した。

これに対して「フェーズ(時期)によって目的が移行しているだけ」という反論も考えられる。図にするとこんな感じだ。

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STEP1の恋愛期では一時的なドキドキや盛り上がりを楽しみ、その期間が終わったらSTEP2の社会的な安定や認定を求める結婚期に移行する。さらに安定を獲得したことでSTEP3の遺伝子の継承を目的とした出産期に移る、というこの説明はある程度納得できる。

ただ、欠陥があるとしたらSTEP4が存在しないことだ。

この説明だと、STEP3で2人の関係は終わりを迎えたことになる。役割を果たして、また別の人とSTEP1をはじめられる世の中ならそれでいいだろう。

しかし今の世の中はそれを許してくれない。結婚して、子供もいる人が「また恋愛したい」など言おうものなら壮大なバッシングに合うだろう。

昨今の不倫騒動はそれを物語っている。

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このサイクル論を主張するのであれば、子供ができた時点で2人の関係性は一旦、発展的解消を迎えるのが自然、それこそ当たり前だろう。

人生100年時代に、その半数以上を目的もない相手との関係を続けるのが前提になっている。これがロマンティック・ラブ・イデオロギーの最大の問題点だ。

こうなってくると「早めに規定演技を終わらせて離婚すればいい」という意識か「そのサイクルに入るのをなるべく遅らせたい」という意識が芽生え、後者が初婚年齢を遅らせる要因となる。

■自分の思考を疑うのが学問の醍醐味

ロマンティック・ラブ・イデオロギーに関する論文には、必ずと言っていいほど「恋愛・結婚・出産の3つがセットになったのは最近のこと」との記載がある。事実、この考え方は19世紀に生まれた。

学生たちは、まずこの事実にぶつかり「じゃあなぜ私たちはこれを当たり前と受け入れていたのだろうか?」と考えはじめる。

そこから政治の歴史、宗教の歴史、国の歴史、文化の歴史など、様々な角度から自分の思想に影響した要因を検証していく。

僕は決して勉強が得意ではなかったが、このテーマには自分の思考や世間の当たり前を疑ってみる学問の本質や醍醐味のようなものを感じる。

コロナウイルス騒動で自分と向き合う時間が増えた今は、自分の思考と向き合ってみるいい時間かもしれない。

以下のような世界がこれからの当たり前になる可能性だって、十分あるのだから。

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ロマンディック・ラブ・イデオロギーについて書いたnoteはこちらもどうぞ。


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