
「安いニッポン」は本当か? 実データで比較してみた
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
日経電子版で掲載されている「安いニッポン」特集が衝撃的です。
「日本って給料安いんじゃない?」。昨春からジャスダック上場のソフトウエア開発会社で働く香港出身の楊燕茹さん。日本行きを相談した時の両親の心配そうな顔が忘れられない。米国でシステムエンジニアとして働く弟の給料は楊さんの4倍だ。
「物価が安いし、何よりウェブデザイナーとして学ぶことは多い」。楊さんは気に留めないが、米系人事コンサル大手、マーサー日本法人の白井正人執行役員は言い切る。「失われた30年を経て、日本は給料が低い国になってしまった」
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長らく続くデフレの影響でつづく物価安。消費者としては安く買えることは良いことのように思えます。しかし、企業の利益から給与が支払われているので、全体として回るお金を増やさないと経済は縮小していってしまいます。
一方で、企業の内部留保は7年連続で上昇し、449兆円にものぼります。政府はこのお金を成長投資に振り分けるよう、制度改革を進めています。
政府・与党は収益が伸びているのに設備投資に消極的な企業に対し、税優遇の適用を厳しくする方針を固めた。研究開発の取り組みなどに応じた優遇制度で、設備投資額が減価償却費の1割以下なら対象外としていたのを3割以下に改める。すでに創設が固まったスタートアップ企業への出資に対する税優遇と合わせ、企業内部にたまったお金を成長投資に振り向けてもらうことを狙う。
冒頭の記事の話にもどりますと、どうやら日本は「給与の安い国」になっているようです。本当にそうなのか、記事にあるソフトウエアエンジニアで比較してみました。
世界で200カ国以上、6億6000万人のメンバーを擁するビジネス特化型SNS「LinkedIn」では、職種や場所による給与データを検索できるサービスを提供しています(日本国内向けには未公開)。そこで、シリコンバレー(アメリカ、サンフランシスコ ベイエリア)と東京とで検索をしてみました。このデータはLinkedInメンバーからの協力を得て、アンケート方式で集めたものです。
まず、シリコンバレーのソフトウエアエンジニアです。
本日のレートで約13,580,000 円です。確かに高いですね!
次に、東京のデータを見てみましょう。
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基本給の年俸ベースでいうと、約3倍の開きがあることがわかります。シリコンバレーは特に高いことで有名ですが、ニューヨークでも約11,400,000円です。他の業種は調べていないのでIT業界特有の現象かもしれませんが、確かに日本は安い国ではありそうです。
背景としては、マクロの経済事情も大きく影響していると思います。それ以外にも、終身雇用の制度である年次で給与が決まる慣習なども強い影響があると思います。IT産業は比較的新しい業界であり、そこで働く人の平均年齢も若めだからです。転職の際も「前職給与」が大きくものをいう世界であることも関連があるでしょう。
いま、この制度自体も変化しようとしています。
経団連は9日の会長・副会長会議で、年功賃金など日本型雇用の見直しが必要だとの認識で一致した。同日記者会見した中西宏明会長は「おのおのの(雇用形態の)長所をどう組み合わせ、働く人が力を蓄え安定した仕事をできるようにしていくか」が重要だと指摘。あらかじめ職務を明確にするジョブ型雇用との複線的な制度を拡充すべきだとの認識を示した。
ジョブに対して給与を連動させることになれば、その基準を満たすスキルをつけた人は(究極的には)年次に関係なく報酬が支払われます。欧米を中心とした他国では標準的な制度ですが、日本ではまだ馴染みがないのも事実。実際の企業の採用担当者は不安をかかえているようです。
まさに移行期、過渡期である日本の雇用制度。企業と従業員、双方がより良い関係が築けるように改革を進めていければいいですね!
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タイトル画像提供:CORA / PIXTA(ピクスタ)