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日本の観光産業の未来: 脱炭素ツーリズムという矜持

(Photo by Suyash Agrawal on Unsplash
なんと、日本が「旅行・観光競争力ランキング」で世界一に! コロナ後のインバウンド回復の期待感が増すなか、どんな「新しい観光産業」を日本はコロナ後に生み出すことができるのだろうか。

日本が「旅行・観光競争力ランキング」で世界一に

次の記事は、世界経済フォーラム(WEF)の2021年の旅行・観光競争力ランキングで、日本が初めて首位となったと報じている。ホテルなど観光客向けインフラ、観光資源の豊富さなどで、他国より競争力が高いと評価されたという。

そして一方では、ANAホールディングス(HD)などが富裕層の訪日客をもてなす「トラベルデザイナー」の育成に乗り出したという記事もある。日本の自然や文化を体験できる旅行を企画する力を養うというが、とりわけ富裕層向けに「金に糸目はつけずに素晴らしい体験をデザインする」力をもった人を育成するらしい。この記事によると、「海外の富裕層は信頼する人材に旅行プランを一任するケースが多いが、日本ではそうした人材が少ない。富裕層の旅行での消費額は約200万円と一般客よりも高額だ」とのことだ。

つまり、日本の旅行観光は世界から注目され、そして日本の観光業も稼ぐ力をつけていこうとしている。観光の経済面からは、順風満帆に見える。

世界が求める「新しい観光」

その一方で、日本人のサステナビリティに対する意識は世界最先端とは言い難い。次のブッキングドットコムの調査では、「今年はサステナブルな宿泊施設に滞在したい」と答えたのは、世界平均81%に対して、日本の旅行者は36%にすぎなかった。さらに日本の旅行者の45% が「サステナブルな旅行の選択肢が十分でない」と感じていることが報告されている。

つまり、残念ながらというか、このままコロナ後のインバウンドが復活すると、次のような未来が想像できてしまう。

「観光世界一の日本にインバウンド客はたくさん押し寄せる。富裕層に対しては日本の最上級のおもてなしで迎える。一方で、観光産業のサステナビリティ化は進んでいないため、長期的には世界からの評価が下がっていき、サステナビリティが観光産業力の指標に入るころには、日本の順位はぐっと下がってしまう」

このような未来のシナリオに向かわないようにするために、日本の観光産業はいまから何をすべきだろうか。

観光産業が持つべき「脱炭素ツーリズム」という矜持

そこで提案したいのは、「脱炭素ツーリズム運動」だ。「グリーンツーリズム」のような自然体験を提案するのではなく、「今までと同じ旅行先」に行くとしたときに、「できるだけ炭素排出を減らす移動手段、宿泊先、アクティビティを選べるようにする」ことである。

「脱炭素ツーリズム運動」には、多様なプレイヤーの参加が必要だ。行政、観光協会/DMO、MICE団体、ホテル、民泊、公共交通、タクシー、シェアサイクル、カフェ、店舗、商店街、百貨店、公共施設、神社仏閣、そして住民。こういったまちのプレイヤーたちが、「観光客の脱炭素をよってたかって応援する」運動である。

そのためには、次の3つのポイントが不可欠である。
ポイント1:地域プレイヤーたちが「自分たちの地域の炭素排出を減らす活動」に自覚的に取り組んでいること。
ポイント2:旅行者が「自分の旅を通しての炭素排出を減らそう」と考えていること。
ポイント3:上記の地域プレイヤーと旅行者をマッチングする人、または仕組みがあること。

どのポイントをとっても、「自分が得をするからやる」という人はいないだろう。地域を愛し、だからこそ地域のサステナビリティを願い、そういう人同士だからこそ、助け合い、分かち合う。そんな志高きつながりをつくることができるかどうかが、「スローイノベーションの挑戦」である。

京都の観光に関わる方々、そして京都に旅行で来る方々、その双方が「京都の脱炭素ツーリズム」という矜持をもって、ともに「新しい観光」をつくっていけたらと思うと、ワクワクする。

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