シェアリングエコノミーの2つの側面 / 資本主義と持続可能主義型

昨年、私がシェアリングエコノミーの専門家として講演でお話させて頂く中で最も多く頂いた質問は「シェアリングエコノミーはGDPを減らすのではないか?」という質問でした。GDPというひとつの経済指標がシェアエコに限らず、現代の私たちの幸福度を示す指標として正しいのかどうかは、政府の統計改革会議や研究機関など様々なところで議論や研究がスタートしていますが、今回お伝えしたいのはシェアリングエコノミーが、企業主体の経済社会と個人主体(市民)の経済社会を進める2つの側面を持つのではないかと、世界各国の関係者との意見交換を通じて強く感じていることです。

中国・米国型 『企業主体の経済社会』を進める資本主義ドリブン

Airbnb、Uberを始め時価総額10兆円規模を超えるユニコーン企業がアメリカから登場し、世界中どこへ旅しても使えるようになりました。中国でもシェアエコ市場は去年時点で56兆円、2020年までにシェアリングエコノミーがGDPの10%を占めると今年発表されました。先日ニューヨーク大学教授・シェアリングエコノミー著者(日経BP)のアルン氏とコーヒーを飲んでいる時に、中国では政府が企業に介入する形で海外展開も含め政治政策的なバックアップまであるという事実も伺いました。ITドリブンなイノベーション力で、多額の資金調達に成功し、大きな資本を持ち、日本でもフリマCtoCから始まったメルカリがバイクシェア、スキルシェア、など圧倒的なユーザー数(先日1億DL突破)を武器に様々なシェアサービスを展開し始めました。良いか、悪いか、どちらの側面もあると思いますが、マッチングプラットフォームの性質上、ユーザー数、トランズアクションが圧倒的なプラットフォームに人が流れていく動きがあると思います。

欧州・韓国型 『個人主体(市民)の経済社会』を進める持続可能主義ドリブン

一方、フランスや韓国の視察を通じて、また欧州のシェアエコ界隈の人たちを通じて、別の側面に強く可能性を感じる一年でした。オランダ・フランスなどの欧州やお隣の韓国(ソウル)ではまた違ったシェアエコの発展があります。経済の低迷、環境問題などの社会アジェンダに着目し「持続可能な社会」を市民的なアプローチで目指したシェアサービスが生まれています。ビジネスモデルも通常のマッチング課金モデルではなく、NPOが運営をし、ユーザーは無料で使えて、スポンサードや補助金で運営コストをランニングしているご近所同士のモノの貸借りのシェアサービスや、その地域の人しか使えないシェアサービスなどが多くあります。11月に来日したアムステルダム市行政官Nanetteが「アムステルダムはスタートアップが沢山生まれているけれども、多くのミレニアル起業家はIPO(上場)を目指していない。」という話も印象的でした。アムステルダムでは、高齢者や低所得者の人が地域のミールシェア(ごはんのシェア)に参加できるようなITを使わないリアルなシェアイベントや、シェアサービスが割引で使えるようなクーポンを市が発行しています。

また、韓国で古民家を中心とした交流型民泊サービスKOZAZAのCEOのSankuさんも「この5年で、巨大なグローバル資本の企業に飲まれて、韓国のローカルな民泊サービスは何個も死んだ。」と嘆いていました。去年視察に行ったソウルでもNPOが運営する「Open Closet」という、寄贈されたスーツを借りることができるシェアサービスも街のお金のない就活生や若者に愛されています。寄贈する人が、次に使う人に「就活、頑張ってね」のようなメッセージを書くことができる人肌感あるシェアサービスです。実際に去年ご挨拶させていただいたソウル市長も2012年にシェアリングシティソウル計画の指針スローガンに「少ない資源の中で皆が幸せになれるシステムを。環境問題への配慮、コミュニティ再生による共助社会への復興を。」ということを上げています。

今年2月に行ったブラジルでも「COLABOR AMERICA」というシェアサミットがあり資本主義社会から抜け出して、市民・行政・社会起業家たちが共に助けあい、アイデアを出しながら社会課題を解決する手段を生み出し持続可能な社会を作っていこうというムーブメントがミレニアル世代を中心に起こっていました。

上記、2つの側面、どちらがいいか?という話ではなく、どちらも必要であると個人的には思うのですが、ただ、まだ日本では「どう儲かるか?」という視点での議論が多い印象です。このような、市民主義的アプローチから生まれているシェアシステムや、共助の仕組みを推進する国があり、そのムーブメントは世界では広がりを見せていることに自分自身強い影響を受けた一年でした。

日本はその両側面をもつ特殊な国

日本は、その両面を持つ国であると思います。前者の側面では、日本はまだまだ経済大国であり、その資本力や技術力を活かしたイノベーション、ユニコーン企業が生み出せる土壌があること。先日1億人DLを超えたメルカリのような世界で戦っている日本発のサービスや、上場するシェアサービスが登場してくることで、既存産業が衰退していく中の新たな産業として期待されています。

一方で、後者の側面では、今、日本が「持続可能型な社会システム」への構造転換が余儀なくされるターニングポイントに日本が直面していること。人口減少による地方の過疎化、増え続ける若者の社会負担、公助や自助が働かなくなっている中に、シェアという「個人と個人が助け合いながら支えあって生きていく」共助の仕組みが、いま必要です。

例えば北海道の過疎地域では、免許がないお婆ちゃんが病院に行くまでに2時間かかる。過疎化により、公共交通バスや電車の数も年々減少、タクシー会社はお客さんが少なくて参入すらしないような地域があります。天塩町では自治体と相乗りシェアサービスNottecoが提携をして、地域に暮らす人が自家用車で、免許のないお婆ちゃんを送り迎えできる取り組みも今年から始まりました。 

双方の側面を進めることで得られる日本の未来

日本では、世界でも未だ見ぬ課題先進国であるからこそ、これまでの資本の力で解決していく経済ドリブンな解決手段と、それだけでは行き届かない課題に対して、個人と個人がつながりの中で持続可能な共助の仕組みを作っていく、両方の側面でシェアリングエコノミーが日本に広がる2018年にしていけたらという思いです。

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シェアの概念を背負っています。ロビイスト。 シェアリングエコノミー活動家。ミレニアル世代のシンクタンクPublicMeetsInnovation代表。 NewsPicks番組 #WEEKLYOCHIAI レギュラー MC / #シェアライフ #拡張家族

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