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“競う”ことと“楽しむ”ことは共存できるのか。強い組織には勝てる文化がある。

皆さん、こんにちは。今回は「競争文化」について書かせていただきます。

私の世代では、小学校高学年から高校にかけて、学校でのテストの順位が廊下に貼り出され、下位はさらされないにせよ、上位は毎回公表されていました。校内のマラソン大会でも、毎回ご丁寧に一位から最下位まで成績を賞状に明記されていたように記憶しています。

ところが今は、学校での教育指針として、「順位を競う」「順位をつける」ことは好ましくないとされているようです。

小学生の子どもと話していても、

・学校では順位はつけられない(皆の前で公表しない)
・テストの平均点は伝えられる
・テストにしろ、運動にしろ1位は発表する

と聞きます。

社会人はどうかと言うと、他社の人事の方と話していると、若手社員から

・競争を煽るマネジメントは自分には合わない
・営業成績や目標達成率などは人と比べられない仕組みにしてほしい
・順位を競うよりも楽しく仕事がしたい

という声が出ていると聞きます。

こういった時代背景の中、企業においてはどのような文化醸成が求められるのでしょうか。


■子どもたちに競争は必要か。

引用した記事には、

昨今は「ランニングを楽しむ」という教育指針に変わってきて、「順位を競う」のは中学生以降ということになっているそうです。
そんな背景から「○キロ走」ではなくて、どのようなペースで走っても同一に終了する「○分間走」という形式で行われている学校が多いのではないでしょうか。中には1分ごとにBGMを切り替えるなどの演出を施しているところもあるようです。

とあり、小学校のランニングの場合、「順位を競う」よりも「楽しむ」ことに軸足が置かれています。

最初から強い競争意識を持たせ、良い結果が出ないと「劣等感」や「無力感」を持たせてしまうため、まずは楽しみながら、「有能感」「成長実感」を持たせる工夫をしていく必要があるという点については大賛成です。

しかも幼少期においては特に、何か一つ自分ができることを見つけ、それが周囲から褒められたり認められたりすることで、さらに次の段階へと意欲的に進もうとしたり、その成功体験をもとに他の分野にも取り組もうと、積極性や挑戦意欲が高まったりします。

これは社会人でも同様のことが言えると思います。子どもにしても、若手社員にしても、その成長過程で教育者が意識した方が良いポイントは以下の通り共通項があります。

・自分で目標を決めてもらう(本人がワクワクできる目標がベスト)
・小さい成功体験をたくさん積ませる
・目標を達成したらどうなるか、次のステップを理解させる
・自分はやればできるという達成感や有能感を持たせる
・やり方を指示するだけでなく、成果の出し方を教える
・本人の努力やプロセスを褒める
・周囲が自分を見てくれているという実感を持たせる
・本人の強みが活きる「伸びしろ」を見つける

話を元に戻しますが、たしかに「勝った」「負けた」という事実を子どもに突きつけるのは、残酷な時もあります。
子どもに劣等感を抱かせるようなマイナス面が目立つ競争は良くないと思いますが、競争の全てが悪いとは思いません。

競争させることを一切しなければ、競争によって落ち込んだり傷ついたりする子どもが減る一方で、それと同時に、相対的に自分の得意なことを認識し、もっとその能力を伸ばしたいという子どもの興味関心や挑戦意欲を奪ってしまうことにもつながりかねません

子どもの劣等感につながるような“過度”な競争環境は良くないかもしれませんが、 “適度”な競争心を持たせることは大事だと思います。子どもがやる気になったり、自信を持てたりするような競争環境は必要です。

仮に勝ち負けで負けたとしても、挑戦したことそのものに価値を感じさせる教育こそが必要なのではないでしょうか。

■社会に出てからの競争は必要か。

学校では学校の中で競争があったように、社会に出て、会社に入れば社員同士で競争もあります。営利企業である以上、同じ業界内、または業界を越えて、さらには国を越えて競争をし続けています。

そんな中、学生時代に大きな挫折経験をしたことがない人は、簡単に言うと「乗り越え方」を知りません。就職活動の面接で「挫折経験は?」という質問が多いのは、挫折した時にどう乗り越えたか、苦しい時の乗り越え方を知っているか、競争社会にどの程度適応できるのかを見極めるためです。

競争社会に身を置いたことが少ない場合、ストレスやプレッシャー、または失敗することや負けることを避けるようになり、新しい経験をする際に消極的な態度が形成されてしまいがちです。逆に、競争社会で勝ち負けを多く経験してきた人は、成功体験によってさらに高い目標に向かって挑戦することに意欲的になり、また、失敗経験からも教訓を得てそれを次に活かそうと積極的な行動へとつなげることができます

社会人になってからの競争は、学生時代の競争よりも、さらにシビアで言い訳ができない状況になることが多いはずです。場合によっては、競争相手の足を引っ張ったり、相手を陥れたりするような人が出てくることがあるかもしれません。ですが、「勝ったら嬉しい」「負けたら悔しい」「絶対勝ちたい」という感情の矛先が、相手ではなく自分に向くことで、自分を奮い立たせる良いエネルギーへと変換できることもあります。

健全で適度な競争環境があることで、そのエネルギーを優れた結果や良いパフォーマンスにつなげることができるのであって、競争を避けていては自分自身も組織全体も高めることはできないのだと思います。

■“競争”の先の成功体験の積み重ねで、初めて仕事を“楽しめる”

マラソンの例えで言う、「順位を競う」マラソンと、楽しむことを優先して「〇分間走り通す」というマラソンとでは、当然個人の能力の発揮のされ方が異なってくるだけでなく、後者の場合、「〇位以内を目指そう」などの目標意識が低くなり、なんとかその時間を乗り切ろう、無難にやり過ごそうという人が出てくることで全体的な質も低下していきます。

記事には

「楽しむこと」が前面にあるというよりは、それぞれの価値観を見つけてそれに没頭して取り組んだ結果として、「楽しかった」という感覚が得られる。

とありましたが、まさにその通りだと思います。必ずしも「楽しむ」ことが先にないといけないのではなく、努力して成果が出たことで「楽しい」と感じるのです。

社会人になったばかりの若手社員に「仕事を楽しもう」と言っても、「とてもではないが、まだ楽しむ余裕なんてない」と思われることが多く、結果を出す前から仕事が楽しいと感じられる人の方が少ないはずです。目の前の仕事に対して努力し、自分の力を発揮しながら一つ一つクリアしていく過程で初めて「楽しい」と思えるのです。

仕事を楽しいと感じられる人が増えれば増えるだけ素晴らしいことですが、「成功」「失敗」「勝利」「敗北」などの経験を積みながら、「競争から逃げない」「時には厳しい結果に直面することから逃げない」人だけが、心の底から「仕事が楽しい」と初めて感じられるのではないでしょうか。


■キーワードは“競争”と“協調”

これまで述べてきた通り、適度な競争文化は会社や組織の中で必要だと思いますが、それは、一切チームの中で共通の目標に向かって「協調」し合わない、ということではありません。

「競争」と「協調」は、対照的な概念のため、組織文化醸成においては“融合”させることが困難なように思われますが、どちらかを選択するのではなく、両立させることが非常に大事だと思っています。

たとえば、個人ベースで考えてみた時に、競争思考が強い人が多いと、チームの中でも個々のスキルを磨き、お互いに切磋琢磨して競争することにモチベーションを感じます。一方、協調型の人が多いと、チームでお互いに協力し合って何かを達成することにやりがいを感じます。単純に人のタイプを二分化することはできませんが、このどちらのタイプも組織にいることが、競争優位性につながるのです。

競争思考が強い人が多い組織は、厳しい競争環境でもとにかく成果を出すことに集中できる一方で、チーム間でギスギスしたコミュニケーションが生まれやすくなるかもしれません。協調思考が強い人が多い組織は、個人の成果を追求するよりもチームで共通の目標に対して協力し合うことに意欲を感じる一方で、個人に焦点が当たらない分ローパフォーマーが生まれやすくなってしまうかもしれません。

どちらもメリットデメリットがあるため、組織戦略や会社のその時の状態に合わせて、どんな文化を作っていくべきかを慎重に模索していく必要がありますが、基本的には、競い合いながら切磋琢磨する「競争文化」と、助け合いを重視する「協調文化」は、セットで作っていくことが好ましいと思います。

当社の場合は、これまで「競争文化」と「協調文化」をどちらも共存させてきています。

<サイバーエージェントの事例>
【競争文化】
→新規事業に積極的に参入している私たちは、子会社や新規事業がたくさんありますが、そのスタートアップ事業を「時価総額(※当社独自指標)」によってランキング化しています。停滞している事業や、競争優位性が見出せない場合は事業撤退という厳しい撤退ルールも敷いています。
若手からベテラン社員まで大きなチャレンジを自由度高くできる分、ある程度のリスクをとった厳しい環境に身を置き、結果には責任を持つということは自然なことであって、その分大きな成長機会を得ることができます。
また、年1回の全社表彰や、毎月行われている部署毎の表彰でも、成績優秀者を発表し表彰するといった文化は創業以来、定着しています。部署単位で、それぞれのグループやチームごとに毎月目標達成率などでランキング化したりするのも一種の“競争”です。

【協調文化】
→一方で、成果主義だけに陥らず、チームワークを大事に、自分の業務や所属部署を越えて会社全体に貢献するという意識も根付いています。コロナ禍で特に個人主義が強調されやすい社会情勢を受けて、チーム意識を今まで以上に高めるための評価制度にアップデートしたり、会社の競争力は「チーム・熱量・一体感」であるという経営の意思を社内に積極的に発信したり、自分の本業以外の業務(全社の採用や育成や活性化)に関わる機会を増やすことで、個人の会社に対する貢献意欲やロイヤリティ向上につなげたりしています。


「競争」と「協調」はどちらも必要で、どちらもあるからこそ企業成長や業績向上につながり、さらに社員の多様な価値観にもマッチしやすくなります。会社のフェーズや戦略に合わせて、意図的に狙ったカルチャー構築を行い、相反するものであっても緩急つけながらバランスをとっていくという工夫も必要だと思います。


■強い組織には、勝てる文化がある。

強い組織とそうでない組織の差は、「勝てる文化があるかどうか」です。
良い組織文化があると、企業の競争力を様々な形で高めていくことができ、組織文化が浸透している企業ほど、そこに属する社員の判断基準が明確になり、社員が自律的に動けるようになります。
良い組織文化こそが企業の競争優位性の源泉となるのです。

組織文化の醸成には時間も労力もかかるため、どんなに他社の良い取り組みをそのままマネして自社に持ち込んでも、文化が違えば同じような成果が出るとは限りません。他社が簡単に取り入れられない分、組織文化そのものを競争力に変えてしまう、という発想を持つことが大事です。

また、組織文化は直接的にコントロールすることが難しく、一度悪い方向に流れてしまうと、それを止めることも難しくなってしまいます。
だからこそ、今ある組織文化のどんな部分を伸ばし、どんな部分を変えるべきなのかをしっかり議論する必要があり、改善が必要な部分を早期発見し手を打っていくとともに、良い部分をより伸ばしていく努力を継続的にし続けなくてはならないのです。
その際に社員の声にも耳を傾け、組織のビジョンやミッション、バリューをもとに個々人にどんな行動が期待されているのかについて現場社員がどの程度理解しているのかを測ることもヒントになるのではないかと思います。


今回は「競争と協調」の話にフォーカスしましたが、組織文化を作る過程においては、「創造・イノベーション重視なのか、管理・オペレーション重視なのか」、「社員の挑戦環境の構築を重視するのか、働きやすく安心できる環境の構築を重視するのか」、「結果重視の文化にするのか、プロセス重視の文化にするのか」など、何を会社のカルチャーの軸足にしていくかには、様々な選択肢があります。

会社の経営戦略に基づき、今の会社にとって、そして未来の会社にとってどんな文化を作る必要があるのかを模索し、定義し、運用し続けることがカルチャーの土台を作る上で重要な一歩になると思います。

競争力になる組織文化を構築することは、中長期的に見て企業の持続的な発展や成長につながることは間違いありません。逆にここを疎かにすると、成長が鈍化するだけでなく、従業員との信頼関係の構築にも失敗してしまうでしょう。

変化が激しい時代こそ、組織文化が競争力にもなり、企業の大きな成長を支援してくれるものになり得るということを改めて理解し、すぐにでも第一歩を踏み出す必要があるのではないでしょうか。


#日経COMEMO #NIKKEI

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