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在宅勤務における「余白」づくりのススメ~第3の時間をデザインしてパフォーマンスを向上しよう!~

 Potage代表 コミュニティ・アクセラレーター河原あずです。大企業勤務歴は17年。2020年4月に起業してからは、さまざまな大きな会社さんをクライアントにしながら、一緒にコミュニティ開発や人材育成のプロジェクトを進めています。

 さて、仕事を通じて大企業のみなさんと話をすると「在宅勤務になって以前より忙しくなった」とおっしゃる方が多いです。特に、いわゆる「仕事のできる人」ほどそうなっている傾向を感じます。曰く「パズルのようにミーティングが入ってきている」「仕事とプライベートの境目がなくなっている」「ひっきりなしに連絡がきて息つく間がない」「土日にミーティングを設定するようになった」などなど。管理職の方々からは、このようなタイプの部下の管理に頭を悩ませているという声も聞きます。

 もちろん自己管理ができていて、家庭でもバランスがとれているなら問題ないのですが、気になる点が一つあります。それは、在宅勤務が急速に進むことで、優秀なビジネスパーソンたちから、かつては存在していた、「余白の時間」が失われつつあるのではないかということです。

 生活の時間とも仕事の時間とも異なる、いわば第3の時間である「余白の時間」には、自分自身を整理することで気持ちを落ち着かせたり、情報を整理したり、周囲との関係性を円滑にしたりして、その結果新しい発想を生み出しやすくなる効能があります。これが失われると、仕事を頑張っても頑張っても、なぜか成果に結びつかないという状態にも陥りかねません。

 なぜ「余白」が大事で、仕事のパフォーマンスにどう影響を与えるか。そしてどうやって「余白」をつくればいいのかを以下解説します。ご参考になれば幸いです。

仕事に必要な「内省の余白」と「コミュニケーションの余白」

 仕事における「余白」には2種類あります。1つは「内省の余白」もう1つは「コミュニケーションの余白」です。順番に説明します。

①内省の余白

 特別な目的を持たずに、自分ひとりで過ごす、自分で選んだ行動をとる時間です。「内省の余白」は、考え事をまとめたり、気持ちを落ち着かせたり、ちらばっている情報を整理したり、新しい発想を生んだりするのに役立ちます。ぼーっとする、本を読む、うたた寝をする、自分の気持ちが落ち着くルーチン行動をとる(マンガを読んだり、動画を観たり、音楽を聴いたり)など、どんな行動をとるかはそれぞれで決めることができます。

 例えば「移動時間」は、生活時間でも仕事時間でもない、いわば「どこにも属さない時間」でした。電車で外出先へと移動する際、本を読んでいようが、昼寝をしていようが、考え事をしていようが、Netflixを観ていようが特に問題とされることはありません。時間管理が厳密な日本のビジネスパーソンにとって、実は移動時間は、会社公認で、1人でじっくりと自分を見つめる「余白」の時間をすごせる貴重な機会だったのです。

②コミュニケーションの余白

 他者と雑談をしたり、軽い相談事をしたりしながら、かかわるコミュニティにおいて、仲間との関係性を深める時間を指します。「コミュニケーションの余白」は、周囲の人たちとの人間関係を円滑にしたり、普段は関係がやや遠い人たちとの関係性をつくったり、軽い相談事をしながら仕事に活かせる発想を生み出すのに役立ちます。

 例えば、タバコ部屋でのコミュニケーションは、職場における「余白」の典型でしょう。分煙、嫌煙のトレンドの加速により、喫煙者は減少傾向にありますが、仕事を円滑に進めるための関係づくりに寄与するタバコ部屋での「雑談」は、コミュニケーションの質により重きを置いていたかつての日本企業においては、パフォーマンスを向上させる手段の一つとして機能していたのです。

在宅勤務により失われがちな「余白」

 しかし在宅勤務においては「内省の余白」「コミュニケーションの余白」が失われる傾向にあります。

 まず、通勤や外出の機会が減少することにより、デスクに向かわずに1人でいる時間が著しく減少します。デスクで内省の余白をつくれる人もいるかもしれませんが、目の前にパソコンがあればつい仕事をしてしまいますし、メールボックスが開いていればチェックしてしまうのが人間の性です。さらに、オンライン会議では会議室間の移動もなくなるため、ミーティング間の隙間もなく、みっちりとスケジュールを埋めるビジネスパーソンも周囲には多数います。

 「コミュニケーションの余白」も著しく減少します。ZoomやTeamsでの会議は、基本的には「目的」ベースで設定されるため、雑談が入る余地が少ないことがほとんどです。オフィスにいけば、タバコ部屋に限らず、ちょっと近くの同僚に声をかけて雑談や軽い相談をすることもあったでしょうが、在宅勤務だと「わざわざ会議のアポをとるのもな…」と躊躇してしまうのが常です。結果的に、関係性を高める雑談や、会議を設定するまでもない軽い相談事ができなくなります。

 ※2016年からオフィスを全廃し、フルリモートワークを導入しているソニックガーデン代表取締役の倉貫義人さんはこの「雑談+相談」を、ホウレンソウならぬ「ザッソウ」と定義し、従業員個々を尊重するリモートワーク時代の働き方にとってとても大事だと述べています。ちなみに上はなんと2017年の記事です!

余白を自分でデザインする方法

 このような現状で必要なのは「余白は自分自身でデザインする」という発想です。

 たとえば、私が個人的に導入している「内省の余白」デザイン施策の一つに「ノーZoomデー」があります。

 すでにオフィス通いが再開している方は「ノー会議デー」にしても「在宅勤務デー」にしてもいいのですが、要するに「外から言われた仕事ではなく自分自身に集中する余白の日」を間に挟むことで、水曜日へのモチベーションを上げ、1週間を乗り切るテンポ感を持とうというアイデアです。

 私は今個人事業主ですが、水曜日をノーZoomデーにすることで、時に家事をしたり、時に読書をしたり、時に出かけたり、時に新しい企画を考えたり……と、自分が今この瞬間やるべきことに集中するようにしてます。ちなみに「自分が積極的にやりたいと思える新しい案件のミーティング」はノーZoomデーでも入れてもいいことにしています。

 Zoomミーティングは神経使うし目は使うしで疲労が蓄積しやすく、週の間にリフレッシュを入れることでだいぶ解毒されます。普段から、できるだけミーティング間に15分以上の時間を空けるようにしているのですが、1日空けるとだいぶすっきりした気持ちになります。

 また、1日の仕事はじめBGMを決めて、朝イチに部屋のスピーカーから流すようにしています。それをスイッチにして、徐々に仕事をする気分に切り替えていくのです。サブスクで流しっぱではなく、あえてCDでアルバム単位で流すと時間配分にもなります。アルバムが切り替わったら(40分〜60分くらいのインターバル)お湯を沸かし、急須でお茶淹れて休憩を取ります。お茶を淹れて一服する時間を「内省の余白」にあてることで、自分自身の整理にあてているのです。

 「コミュニケーションの余白」についても意識的にデザインしています。個人事業主なので「同僚」という概念はほぼないのですが、その代わり、ビジネスパートナー毎にプロジェクトが立ち上げっており、そのメンバーとは頻繁にメッセンジャーでやりとりをします。よくよくログをたどると、仕事の話はだいたい2~3割で、残りは雑談で占められていることもしばしばです。しかし実は、これが「余白」として、いい効果を生み出しているのです。実は、さまざま開催している自身主催のオンラインイベント企画の多くは、この「雑談」から生まれているのです。

 また、自身の主催するオンラインイベントが終わった後に、出演者の方とつなぎっぱなしにして30分くらい雑談することもしばしばあります。ここから新しい発想を得たり、仕事の相談につながったり、貴重な情報を得たりすることがあるのです。

音楽や動画や本に触れながら「第3の時間」を持とう

 これらの時間は、自身が意図して確保していかないと、なかなか生まれません。どうしても周囲がアポをたくさん入れてきたり、数多くの締め切りに追われたりして、スケジュールを詰めてしまうビジネスパーソンは多いでしょう。そのようなタイプの方にとって、余白をつくるのは勇気のいることです。

 しかし、余白がないと、今目の前のことに追われてしまい「新しい情報」が入ってくる隙間もなくなります。また、情報が入ってきても整理できずに無駄にしてしまったり、締め切りをこなすだけの受け身の仕事に終始してしまい、結果的にパフォーマンスが停滞することもあるのです。

 周辺の環境が激しく変化するコロナ禍だからこそ、その変化に対応するための余白を持つことはより大事になります。「仕事の時間」でもない「家庭の時間」でもない、第3の時間を意識的に持ちましょう。そして、平日の朝でも夕方でも隙間を見つけて、Spotifyで好きな音楽を聴きながら、Netflixで好きな動画を観ながら、本を読みながら、自分自身についてぼーっと考える時間を持ちましょう。あるいは、同僚やビジネスパートナーとの雑談の機会をつくり、仕事以外の会話を意図的につくるようにしましょう。結果、自分自身が整理され、仕事のパフォーマンスにつながる新しい発想が生まれやすくなるはずです。

 さて毎週木曜日の15時からPeatixさんと「ティータイムイベントサロン」というコミュニティ運営者やコミュニティを活用したいビジネスパーソンを中心のターゲットにしたオンラインイベントを開催しています。サボりを推奨するわけでもないですが(笑)実は参加者の半分以上はカメラオフで職場からこっそり耳だけ参加しています。その方々はまさに、自身にとっての、仕事づくりの余白づくりをしているわけです。8/13はOSIROというオンラインコミュニティプラットフォームのデータサイエンティスト鈴木駿介さんをお迎えし、「データでわかる!?コミュニティの熱量」というテーマでお話します。もしご興味ありましたら、ぜひご参加ください!


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