ファスト&スロー:ペットボトルやファッションは循環してる?
エコバッグやコーヒータンブラーを持ち歩いたり、できるだけ地産地消の食事をする。このような活動を私たちは「エコだな」とは思うけれど、私たちの一つひとつの行動が、ほんとうに社会全体を循環経済(サーキュレーションエコノミー)に後押ししているかどうかについて、消費の場面だけで判断するのは難しい。今日は、そのことを考えてみたい。
ペットボトルは循環してるか?
たとえば、ペットボトルに入ったドリンクを飲むのは、いかがか。エコな行動としては、ペットボトルではなくタンブラーを持ち歩くべきだ。でも、ペットボトルってリサイクルできるんじゃなかったっけ?という疑問も浮上する。環境の専門家によると、ペットボトルはメーカー横断で材料が標準化された「リサイクル優等生」なのだ。
だが、次の記事を読むと、やっぱりペットボトルくんを怪しまざるを得ない。ペットボトルは再生可能だが、経済的にメリットがなければ再生されないのだ。
ファストファッションは循環するか?
ファストファッションが大量廃棄を前提としたビジネスモデルであることは、多くの映画でも取り上げられ、いまでは周知の事実だ。その中で、米本社が2019年に経営破綻して日本から撤退したフォーエバー21が、「脱ファスト」を掲げて再上陸するという。商品数を以前の10分の1に絞り込み、商品の廃棄なども抑えるという。
しかし、これはファストファッションのバリューチェーン上の大量廃棄の問題に一歩踏み出したにすぎない。ファストファッションのもう一つの問題、消費者に大量に買わせる方の問題を解決しないかぎり、「脱ファスト」とはいえない。
京都市には脱炭素推進チームという委員会があって、私もメンバーになっているのだが、脱炭素推進テーマの一つとして、古着を市内あちこちで無料回収するプロジェクトが立ち上がっている。古着販売を得意とするヒューマンフォーラムが、あらゆる古着を回収することを決め、協力する京都信用金庫の全店舗に回収ボックスが置かれた。大量の古着を集め、分類し、保管することは容易なことではないだろう。しかし、「リデュース、リユース、リサイクルが生活に根差した普通の事となるような文化をめざす」というメッセージは、確実に市民に伝わっているだろう。
できるだけ古着を誰かの手に渡していったり、リメイクしたりしていったとしても、それでも捨てるしかない洋服は残るだろう。そういう心配事に答えてくれそうな記事があった。ケミカルで作った衣料品なら、ケミカル材料として再活用しようというアイデアだ。もともと大量にCO2の出るアンモニア精製を廃衣料を使うプロセスに代替することで、CO2排出を大幅削減できるという。
ファスト&スロー
ほんとうにリサイクルされているかどうかは、廃棄の段階では分かりにくい。企業が明示的に回収をしている場合は、そこは企業の責任でリサイクルさせるとは思うが、実際に目で見て確認するわけではない。
だからこそ、私たちは企業(つまり供給側)が循環経済をつくっていくことを期待するばかりではなく、自分のライフスタイルを変えていくことから始めていきたい。
どんどんつくって、どんどん捨てるのが「ファスト社会」(効率優先社会)の原則だった。だから、できるだけ安いものを大量につくってきた。
それに対して、作り手とつながり、みんなでシェアしてつながり、品質のよいものを長く使い、使わなくなったら資源として再生する。それが「スロー社会」(つながり社会)の原則になるだろう。
バリューチェーンで企業が循環させていようがいまいと、私たちはスロー社会の原則で生きていく。そう決めるなら、今日から新しい世界で生き始めることができる。
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