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ドイツで「進撃の巨人」のクラシックコンサートが開催される件

大ヒットアニメ「進撃の巨人」のクラシックコンサートがドイツのライプツィヒで来年2020年3月13日に開催されます。ドイツの関係者が今月6月上旬に発表しました。今回は、アニメ業界のライツビジネスに関連するドイツにおける事例として取り上げてみます。(タイトル画像はオンラインで公開されたイベントのキービジュアル)

きっかけは筆者のツイートに予想以上の反響があったからです。

ドイツでの「進撃の巨人」のクラシックコンサートは公式イベント?

複数のドイツのマンガ系ニュースサイトが報じたこのニュースですが、日本の公式サイトからは発表が確認できていません(6月24日現在)。非公式のコンサートの可能性もあるかもしれないと、今回は版権を管理する講談社の担当部署に確認をとってみました。

結果、

イベントは正式に版権利用手続きを踏まえた公式イベント

である旨が確認できました。

なお、日本での告知等は「特に予定しておりません」とのこと。一方で、日本から音楽アーティストや声優、アニメ、マンガにかかわる制作スタッフの参加、出演はあるのかという質問に対しては、「未定です」との回答がありました。

今後のさらなる展開にも含みを持たせた回答には期待も膨らむところです。では、イベント内容をもう少し詳しく見てみましょう。

「進撃の巨人 Attack on Titan The Live Experience」とは?

会場として発表された多目的ホール、アリーナ・ライプツィヒ(Arena Leipzig)の関連ページ(ドイツ語)によると、演奏はベルリンの放送交響楽団 EUROPEAN FILMPHILHARMONIC INSTITUTEが担当する。合唱団、バンド、ソリストとともに「進撃の巨人」の有名曲を披露しますとのこと。また、超大型スクリーンを使用したアニメシーンの上映も行うそうです。

上記の発表に合わせてチケット販売もすでにスタートしています。チケット販売サイトによると、チケットは全部で4タイプで、55.90ユーロから86.90ユーロとなっています。

ライプツィヒ市のウェブページによると、アリーナ・ライプツィヒの収容人数はコンサート使用時で最大1万2000人らしいので、すべてのキャパシティを使用した場合はかなり大規模なコンサートになりそうです。

さらに気になるのは、2020年3月13日という開催日です。ライプツィヒではこのコンサートの前後に、マンガファン向けの大型イベント、マンガ・コミック・コンベンション(Manga-Comic-Convention、MCC)が12日から15日まで開催されます。書籍見本市ライプツィヒ・ブックフェアと共催されるMCCは来場者数10万人(のべ)という大規模なイベントで、多数のコスプレを楽しむ来場者や現地のイラストレーター/マンガ家によるブースで賑わいます。

今回の「進撃の巨人」のコンサートは、このMCCに参加するアニメ・マンガファンとの相乗効果も期待できそうです。

ドイツにおける「進撃の巨人」人気とは?

世界的にヒットしている「進撃の巨人」ですが、ドイツでもその人気は高いようです。

「進撃の巨人」シリーズの映像をドイツで販売する企業KAZÉは6月上旬、同シリーズのドイツ国内でのディスク販売数が10万枚を突破したと明かしています。このニュースを伝えるアニメ・マンガ系ニュースサイトによると、出版社カールゼンが販売するドイツ語版のマンガは、シリーズ全体ですでに100万冊を売り上げたという情報もあるようです。

ドイツでは、「進撃の巨人」ファンがコスプレ動画を作成し再生数が300万回を超えるなど高く評価されています。

また、ドイツ南部の町ネルトリンゲン(Nördlingen) は、その壁に囲まれた中世の町並みが「進撃の巨人」に似ているとされ、ドイツ国内のファンも訪れているようです。さらに、いわゆるアニメ聖地巡礼として日本から訪問する人も多いようです。

まとめ:国外の需要にもしっかり対応する

ドイツで開催される「進撃の巨人」のクラシックコンサートは、日本で告知されない点などを考えると、ドイツ側から提案されたドイツのファンのための企画だと思われます。こうした日本国外の動向にも注目し、場合によっては許諾を与えて公式イベントとして開催する。こういった正規の手続きの重要性は、アニメおよびアニメ関連事業が国際ビジネスとして展開するうえで極めて重要なプロセスとなります。日本と現地の企業による密なコミュニケーションがますます問われる時代、とも言えるかもしれません。

おまけ:ドイツ旅行のすすめ

日本国内でも様々な関連イベントが開催される「進撃の巨人」ですが、コンサートのためだけにドイツにまで足を運ぶというのはハードルが高いかもしれません。ただし実現すればかなり密度の高い経験を得られるのではないかと思います。

コンサート会場や同時期に近くで開催されるMCCは、ドイツのファンと交流する絶好の機会を与えてくれるでしょう。ドイツにはネルトリンゲンだけでなく木組みの家が立ち並ぶ町はたくさんあります。「進撃の巨人」の世界に触れるだけでなく、国の垣根を越えて作品についての「好き」を共有する、そういう国際交流の体験を筆者は素晴らしいものだと思っています。

この「進撃の巨人」のコンサート。ドイツ人だけで盛り上がらせておくには、もったいないと思いませんか?

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