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昼寝サロンはなぜ成功しないのか?睡眠不足解消ビジネスの参入点

 日本でも睡眠不足を解消する目的で、仕事の休憩時間に気軽に利用出来る「昼寝サロン」という新業態の店舗が数年前から注目されている。オフィス街や繁華街の空き店舗に入居して、30分~1時間につき 500~1000円程度で、仮眠ができるスペースを提供するサービスである。

オープン時の設備投資は、飲食店などよりも安く済むことから、遊休不動産の活用策としても注目されているが、この新業態には大きく2つの問題点がある。

一つは、法規制の問題で、旅館業法の中では「料金を受けて人を宿泊させる営業」については、宿泊に適した施設・設備の基準をクリアーした上で、都道府県の営業許可を受ける必要がある。法律の中で「宿泊」とは、ベッド、布団、枕、毛布などの寝具を利用して施設を利用すること、と定義されているため、日中の昼寝でも、ベッドや布団を提供すると、規制の対象になる可能性が高い。

もう一つは、ネットカフェやビジネスホテルと競合する問題だ。昼寝サロンとネットカフェの客単価は、ほとんど同水準(約1千円/時)とみることができ、2時間の利用ならば2千円。それよりも高くすると、安価なビジネスホテルと競合するようになり、昼寝サロンの魅力が薄れてしまう。そのため、昼寝サロンが独自の営業をしていくには、これまでの施設には無い、特徴や収益構造を打ち立てていくことが重要だ。

米ニューヨークでは、昼寝サロンが2007年頃から開業して人気となっていた。昼寝のスペースを貸すだけではなく、マッサージやスキンケアなど、各種のリラクゼーションサービスをセットにしているのが特徴。しかし、ブームが過ぎた後は利用客が減少して、閉店する店が相次いだ。

【昼寝サロンから従業員向け仮眠スペースへ】

2003年の創業で、「EnergyPod(エナジーポッド)」という仮眠ブースを開発するメトロナップ社でも、当初は、フランチャイズ方式により、昼寝サロンを各地に出店させていくビジネスモデルを計画していた。

米国では、仮眠用のスペース(個室)を有料で提供するに、ホテル業の認可を取得する必要があるが、エナジーポッドは“個室”ではなく、半カプセル型のソファーでプライバシーが確保された空間であるため、許認可無しで、有料の仮眠スペースとして設置できるのもウリである。

ところが、テストマーケティングを続ける中で、数十分程度の昼寝をしたい人は、わざわざ移動時間を費やしてまで、昼寝のスペースを求めるのではなく、もっと身近な場所(勤務中ならばオフィス内)で仮眠したいと考えている。そこで、昼寝サロンの出店ではなく、企業のオフィスにエナジーポッドをレンタルするビジネスモデルへと路線変更している。

ただし、空港や駅のように、旅行者の多い公共スペースでは、昼寝サロンの経営が成立している。旅行者向け仮眠スペースを専門に提供するMinute Suite社(ミニッツ・スイート)では、米国内にある国際空港に、ベッドとして使えるソファー、毛布、テレビ、インターネットが完備されたユニット型の個室ブースを設置して、1時間42ドル、15分延長あたり10.50ドルの設定でレンタルしている。ブースの利用は、旅行前にスマホアプリから予約することが可能。

この仮眠ブースは、旅行者の他にも、航空会社のパイロットや従業員からも利用されている(社員割引きで利用可能)。勤務時間が不規則な職場では、従業員の睡眠不足が重大事故を起こす原因となることから、仮眠ができるスペースの整備は、安全対策としても重要な課題になっている。

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