「アベノミクス」の振り返り
安倍政治とは何だったのか 日銀不信が生んだ異次元緩和: 日本経済新聞 (nikkei.com)
銃撃を受けて死去した安倍元首相は7年8カ月に及ぶ第2次政権下で、金融緩和と財政出動、成長戦略の「3本の矢」による経済政策「アベノミクス」を展開しました。
「アベノミクス」のうち最も効果を発揮したのは第一の矢でしょう。大胆な金融緩和の効果としては、それまでの極端な円高・株安の是正が進んだことで株価は3倍になり、円安・株高に連動する形で輸出や設備投資も増えました。特に、設備投資は将来の収益期待が高まると増加するため、「アベノミクス」は外需だけでなく内需に大きな効果がありました。そして、経済政策の最大の目標である雇用の増加にも効果が出ました。
一方、第二の矢の成果としては、それまでの公共事業の減少に歯止めをかけたことでしょう。ただ、悔やまれるのが「アベノミクス」で個人消費も増え、家計の金融資産も増え、就労も増え始めてきた2014年4月に拙速な消費増税を行ってしまったことです。2019年10月の消費増税も結果的に景気後退のタイミングで実施したことも悔やまれます。
他方、第三の矢を評価するには、国内のビジネス環境がどのように変わったかが重要でしょう。それまで「超円高」「高い法人税率」「経済連携協定の遅れ」「高い電力料金」「厳しい労働規制」「厳しい環境規制」と言われた「産業の六重苦」のうち、「超円高」は金融政策のレジームチェンジで是正されました。「高い法人税率」もドイツ並みの水準まで下げました。「経済連携協定の遅れ」についても、FTAカバー率が「発行・署名済み」で米国並みとなり、「交渉中」まで含めれば韓国並みまで進めました。そして、「環境規制」は鳩山イニシアチブという厳しい環境規制の緩和という成果を上げました。
ただ、課題として残ったのが「高い電気料金」と「労働市場改革」でしょう。特に、労働市場改革では働き方改革で働き方の自由度が増した一方で、残業代の減少等により家計収入減の副作用もありました。
こうした中、「アベノミクス」は期待されたほど効果が出なかったという向きもあります。しかし、表面上の結果だけを見てアベノミクスをネガティブに評価することは誤りでしょう。背景には、それ以前の長すぎるデフレ放置で過度にマインドが萎縮してしまっていたことがあります。
こうしたことからすれば、金融緩和は継続が必要であり、ロシアのウクライナ侵攻で苦しむ今こそ第二・第三の矢の出番といえるでしょう。この点について早急に手を打つことが岸田政権には求められます。