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ドイツの連立協議がほぼまとまった。SPD党首のショルツ氏が次期首相となるが、それ以外の重要ポストが次々決まる。FDPのリンドナー党首が財務大臣、緑の党のベアボック共同党首が外務大臣、ハ―ベック共同党首が経済エネルギー大臣に落ち着く見込みである。

そもそもドイツは現在コロナ感染者数が急増しており、感謝祭からクリスマスまでのホリデーシーズンに先駆けて不穏である。新政権の船出に合わせてロックダウンの発表では、ちょっとタイミングが悪すぎる。

しかしそれより気になるのは、財政弛緩の可能性である。もともとEUとりわけドイツは財政面での優等生であり、GDP対比で見た財政赤字3%以内、同政府債務残高60%以内をこれまで比較的厳格に順守してきた。ところが、コロナ禍になり、財政出動が機敏にできるよう配慮をし、2020年3月に均衡財政を原則とした財政ルールの一時的な逸脱を認めた。2022年度もこれが継続する方向にある中、コロナ禍の状況から2023年までの延長論さえ、否定できなくなりつつある。

リンドナー氏はもともと財政再建派である。これまでドイツが死守してきた財政ルールへの回帰が期待できたが、緑の党の経済エネルギー大臣が、エネルギーおよび気候変動への対応を推し進めて、財政再建への動きを相殺してしまうであろう。世界的な流れにも乗って、やはり財政拡張が緩やかにでも続く可能性は大きいということになる。

コロナの新規感染が急拡大しているドイツの現状を踏まえると、12月のサービスPMI指数が悪化することが想定される。製造業も部品・部材の供給不足などからのボトルネックが継続しており、製造業依存が高いドイツは第4四半期にゼロ成長に陥るリスクさえ高まっている。財政政策でサポートをせよ、というのが政治的にも求められるであろうことは容易に予想がつく。しかし、それでドイツが財政規律を揺るがせてしまえば、いつかは欧州全体の信用力の安定が失われかねない。


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